ハルヤの回復魔法?
好きな服を買った奴隷達は自分の常識とズレがあると思いながらハルヤ達について行く。
「おい、お前は主人の事をどう思う?」
「それは……私の目からすると世間知らずの坊ちゃんね」
「ぼくも同じくです」
「その意見にはアタシも同感だな。少なくとも普通の人には見えない」
奴隷達のヒソヒソ声が聞こえた本人は心の中で愚痴る。
(俺は魔力が高い事以外は雑貨屋の切り盛りしている普通の人だぞ)
ただ、その普通の人に貴族令嬢が主君と仰いだりドラゴンと契約するわけは無い。
その事に気づいてないハルヤも常識がズレていた。
「さてと、宿屋の部屋をもう一つ取るか」
「!? あの、私達も宿屋に入れるのですか?」
「は……何を当たり前の事を言っているんだ?」
さも当然のように答えたハルヤに驚いて言葉を発したリズナはアタフタしている。
「申し訳ありません!」
「いや、別に大丈夫じゃよ。それよりも何故そうおもったのかのう?」
「それは、奴隷は基本物置とかで寝かせるのが普通なので驚いただけです」
「なる程ね。さっきも言ったけど君達の常識は僕達には通用しないよ」
ルーミアがニコッと笑って奴隷達を見るが本人達は怯えていた。
「ルーミア、お前の笑顔は怖いな」
「いやだなハルヤは、僕は君にしか興味が無いから大丈夫だよ」
舌なめずりしながら言葉を発するルーミアにハルヤは身の危険を感じる。
「……家主達、さっさと宿屋にはいるのじゃ」
「だな、ここで話していても迷惑だからな」
フラウのアシストにハルヤは答えて7人は宿屋の中に入る。
宿屋の4人部屋をもう一つ取り、ハルヤ達は普通に部屋の中に入った。
「さてと、まずはアイリスの目を治すか」
「え、どゆこと?」
「簡単な話だ、回復魔法第四階」
ハルヤお得意の回復魔法でアイリスの傷が全て治る。
「嘘だろ……アタシの左目が見える」
「だから…って、うお!」
出来るだろ、と喋ろうとしたハルヤをルーミアがいきなり押し倒した。
「まさか、ここまで強力な魔法が使えるなんてね。これだから君の血が美味しんだね」
そう言って噛みつこうとしたルーミアがある人物に蹴り飛ばされる。
「油断も隙もないのじゃ」
蹴り飛ばしたのはフラウで壁に刺さったルーミアを睨んでいた。
「家主も淫乱バンパイアに気をつけるのじゃよ」
「あぁ、助かった」
何とか立ち上がったハルヤは他の奴隷達にも同じ回復魔法をかけて行く。
そして、回復魔法で傷が全て治った事を確認した奴隷達は膝をつき土下座をしていた。
「ご主人様、奴隷のオレ達に貴重な回復魔法をかけていただきありがとうございます!」
「「「ありがとうございます!!」」」
口の悪いアイリスでさえ、頭を下げているので驚きながらハルヤは口を開く。
「別に普通に回復魔法をかけただけだから気にしなくてもいいぞ」
「「「「いやいやいや!?!?」」」」
「ハルヤ、自分がやった事をわかってないのかい?」
「別に回復魔法が貴重なのは知っているよ。ただ、そんな頭を下げられても不思議思うだけだぞ」
「家主は普通の雑貨屋だったから感覚がわかっていないのじゃな」
フラウの呆れた声に、お前が雑貨屋の付喪神と忘れてないハルヤは心の中で突っ込みながら続きを口にする。
「ハァ、ここでも俺の回復魔法はおかしいのか……」
「その前に君の魔力量自体がおかしいんだよ!」
「確かに、こんな強力な回復魔法を使えるのはほとんどいないと思いますよ」
「後は、魔法が得意なエルフや魔族でもここまで魔力を持っている人は見た事がないですよ」
四面楚歌になっているハルヤはここでも頭を抱える羽目になるのだった。