学園からの帰り道
あれから職員寮に帰ろうとしたが
「やはり、人が多いから歩きにくいな」
普段はモノレールに乗っているが、今回は人が多くて乗れなかったので歩いていると
「家主、職員寮まで中々遠いのう」
「そうだな。でも、あの人の中に乗るのは難しいからな」
まぁ、面倒なのはどちらとも変わらないからな。
そう思っていると
「あのお兄さん、とてつもない魔力を持っているな。それに美味しそうだ」
へぇー、そんな凄い魔力を持っている奴がいるんだな。
ただ、後半の美味しそうはなんだ?
俺は普通にスルーしていると
「少しいいか? 灰色の髪色をしたイケメンのお兄さん」
灰色の髪色? 何か嫌な予感がしていると
「ハルヤ様、声をかけられていますが大丈夫ですか?」
「フィリス、このパターンは何かあるからスルーするぞ」
俺達は歩くスピードを早めて帰ろうとするが
「待ってくれ。なんでそんなに逃げるんだ?」
肩を掴まれたので
「面倒ごとになりそうなので離れるだけです」
「それに、家主はテスト終わりで疲れてあるから話すのじゃ!」
「貴女は何者ですか?」
俺達が振り向くと紫髪の女性がこちらをガン見していた。
「僕の名前はルーミア。この街に美味しそうな物がありそうだったから来ただけだよ」
何か引っかかる言い方だな。
「美味しそうな物ですか?」
フィリスが不思議がっているみたいだが、この感覚は普通では無い。
「一つ聞くが、恐らくお前は人族ではないな」
「!? 何故その事に気づいたのかな?」
「俺は人族以外の奴を見た事があるからな」
ドラゴンになれるルージュだな。
「なる程ね。少なくともただ者ではないわね。ただ、ここでは目立つから移動するわよ」
そう言って連れてこられた場所は個室があるレントランだ。
そこで、紫髪の女性が飲み物を全員分注文した後
「さて、君たちの自己紹介もして欲しいけどいいかな?」
「ハァ、お前が無理矢理連れて来ただけだろ! と、ツッコミたいが一応わかった」
「家主、顔が死んでおるが大丈夫かのう?」
また面倒ごとなのはわかっているから、表情がアレなだけだ。
そう思いながら、自己紹介をする。
「イケメンがハルヤ、幼女がフラウ、残念メイドがフィリスでいいんだね」
「あの、何故私は残念メイドなのですか?」
「残念な雰囲気が凄いからね」
フィリスはやはり弄られるのは何処でも変わらないんだな。
そう思っていると
「さて、いきなりだがハルヤ、血をくれないか?」
「はっ、なんでだ?」
なんかいきなりそう言われて驚いていると
「まさか貴女はバンパイアですか?」
フィリスが若干引きながらそう喋る。
「残念メイド、確かに僕はバンパイアだけどただのバンパイアではないよ。でも、ここで話すのはやめとくよ」
ルージュみたいな上位種の可能性が高いな。
そして、飲み物が運ばれて来て飲んでいると
「さて、血を吸っていいかい?」
「その前に、どうやって血を吸うのじゃ?」
フラウがルーミアに質問する。
「それは、この道具を使うんだよ」
ルーミアは注射器を取り出して来たので
「なる程、それなら大丈夫ですね」
よくねーよ。
なんで俺の血を飲みたいんだよ。
「さて、左手を出してくれるかい?」
「悪いが断る」
コイツに従う気は全くない。
「もし、君の血が貰えたら超高級レストランの最高級メニューを奢るからさ」
その言葉でフィリスが俺の左腕を掴んでルーミアに差し出す。
「お前!」
俺がフィリスに文句を言おうとした時に、注射器を刺されて血を抜かれる。
少しした後、注射器が抜かれたので
「回復魔法第一階〈ファースト・ヒール〉」
を使って傷を治す。
「それではいただきます」
ルーミアは注射器に入っている血を直で飲むと、目が輝く。
「これは! この血は最高級ワインよりも美味しい……」
待て待て、それはないだろ。
俺達は完璧に引いていると
「すまない変更だ。君の血、直に貰うよ!」
そう言って目に見えない速さで俺は抱きついて、いきなり首元をガブリとされる。
「ちょ! お前はいき……」
「ハルヤ様、ここは動かない方がいいですよ」
フィリスが俺達の状況を見て判断したみたいだ。
それから、コイツにかなりの血を吸われて貧血状態になっていると牙を離した。
「ふう、美味しかった。ごちそうさん」
そう言って満足しているルーミアがいた。