クラナ・ブレイブ
あの後、錬金の準備をしてある物を作成したのは良かったのだが……。
「ハルヤ様、これ美味しいです!」
錬金釜で試作のジュースを作ったら、他のメンバーがガブ飲みする事態になった。
「家主、新商品として開発しておった物じゃろ。ここで出しても大丈夫なのかのう?」
「作り方や魔力の込め方を教えなかったら、作れないと思うから大丈夫だと思うぞ」
そう言いつつ、フラウも普通に飲んでいるので
「フラウ、そう言ってお前が一番飲んで無いか?」
「妾は二番目じゃ。一番飲んでいるのは駄メイドのフィリスなのじゃ!」
普通に大差無いと、思ったのは気のせいか?
それはさておき、ジュースが無くなって時間を見たら夜ご飯時になったので
「ハルヤ先生、そろそろ夜ご飯を食べに行きましょう!」
「あの、ワタシはガッツリしたお肉系が食べたいわ」
クロトとナインがお腹が空いたみたいなので、俺達は食堂に向かう事にした。
そして、一般食堂に到着すると
「結構並んでいるのじゃ」
確かに夜になってもそこそこの人がいるのには驚いたな。
そう思いながら、待っていると
「あっ……」
「お前は!」
前に並んでいたのは、まさかの戦闘科で会った勇者の血筋? のクラナ・ブレイブだ。
「なんでお前が、ここにいるんだよ。雑貨屋をしているんじゃ無かったのか!」
「大声でうるさいな。雑貨屋の方はまだ土地が見つかって無いから、仮店舗として学園内で販売する予定だ」
「オレもお金があったら買いに行っても大丈夫か?」
何故か普通に聞いて来たので
「別に迷惑をかけなかったら来ても大丈夫だぞ。後、お前は学園生徒の中では上位の戦闘力を持っているのは知っているから、お金は渡すから依頼してもいいか?」
ポーションの素材集めとかを手伝って欲しいからな。
「いいのか。オレは能力はあるが装備が貧弱なのと、性格がかなり悪いと言われて嫌われている奴だぞ」
「装備に関しては先払いで買ってやる。性格の方は直すのはかなり難しいから、俺達がそれに慣れたり叱ったりすればいいだけだろ」
正直、お前よりも性格が悪い奴なんて何回も観て来たぞ。
「そうか……。なら一つ頼みがある」
「なんだ? 俺がやれない事はやめてくれよ」
これで、金を全部寄越せとか言ったらシバく。
「夜ご飯を奢ってくれ」
……。はっ?
「聞こえなかったのか? 頼む、夜ご飯を奢ってくれ」
クラナはそう言って頭を下げて来た。
「いや、お前勇者の血筋だろ? お金は無いと言っていたのは知っているが、夜ご飯が食べれないくらい無いのか?」
「そういえば、クラナ・ブレイブさんの家はかなり厳しいとお聞きしましたね。僕が知っている限り、『最低限を除いて自分でお金を稼げ』との言われているみたいですよ」
「家主、流石に可愛そうだと思うのじゃ」
「フラウ様、哀れんでも意味が無いですよ。この学園は実力主義なので、〈財力、武力、権力〉が無いと生活すらままらなくなりますよ」
それは聞いたが、夜ご飯を奢る代わりに情報を聞くのもアリだな。
「わかった。そこまで高い奴を頼まないなら普通に奢ってやるぞ。ただ、こっちが聞きたい事があるから、出来る限り答えるのが条件だ」
「オレが答えられる事なら何でも聞いていいぞ。それよりも素うどん以外が食える日が来るなんて思ってもいなかったぜ」
「やはりハルヤ様はかなり甘いですよ」
「分かっている。ただ、俺達にいま足りないのは武力だ。装備さえ整ったら普通に強いと思うから、OKを出しただけだ」
甘いのは、昔からだから仕方ないんだよ。
そして、クラナはカツカレー大盛りセットを頼んで俺達も普通に頼む。
正直これぐらい、アイツらの食費に比べたらかなり軽いぞ。
そう思いながら、俺はカツ定食を食べながら質問を始める。
「まず、俺は他の国から来たからこの国ルールとかは知らないから、その事を覚えておいてくれ」
「分かったぜ。それで、オレに聞きたい事はなんだ?」
クラナがカレーをガツガツ食べながら話す。
「それは、お前の戦闘力だな。訓練用の装備でもあそこまで戦えるのは凄いと思うぞ」
「オレは特別だから強いんだよ。それよりも、お前の弓に訓練剣が撃ち抜かれた事にビックリしたぜ」
「えっ、ハルヤ先生が弓で剣を撃ち抜いたとは何ですか?」
「クロト、そこは一旦置いておいていいか?」
その話をすると面倒だから、内容を切り替える。
「それと、ハルヤ様はかなり強力な回復魔法が使えるのは何故ですか?」
「フィリス、その話は言わないと言ったよな」
なんか、俺が質問したいのにこっちが質問されているのだが……。
そう思いなら、カツ定食を食べ続ける。