ハルヤの弟子
錬金術室から出て、ミラナさんは空いている部屋を貸し切って、回復魔法の事を聞いて来る。
「何故、ハルヤ君は回復魔法が使えるんだ?」
「それは物心がついた時から簡単な回復魔法は使えました」
何故か、尋問されている気分になる。
「では、何故その事を言わなかったのですか?」
「別に言う必要が無かったから言って無かっただけだ」
「家主、やはり厄介な事になったのう」
正直、帰りたくなったがこの二人が逃してくれない。
「ハルヤ君は教会の者か? あの魔力量なら相当上の者だろ」
「教会なんて入りたくもないですし、自分は雑貨屋の店主が本業なのは変わらないです」
どうやったら納得してくれるんだ?
そのあとも色々聞かれたが、答える事が出来ないのではぐらかしていると
「ハルヤ様は何かありそうですが、教会の者では無さそうですね」
「そうだな。フリーで回復魔法が使えるのは、正直かなりの当たりだぞ」
なんか、目がいやらしく感じるのは気のせいか?
「ハルヤ君、回復魔法は一日何回使える」
「それは言えないですね。それで、利用されたくは無いですからね」
俺は静かに暮らしたいので、ここは言わないでおく。
「あの魔力だと相当な数を使えそうですね。それと、高ランクの回復魔法を使えるかもしれないです」
なんか、嫌な雰囲気になって来たぞ。
「とりあえず、お昼なので昼ご飯を食べに行きたいです。なのでこの話はここで終了です」
何とか話を無理矢理切って、学園の一般食堂に案内してもらう。〈学園には高級食堂と一般食堂の二つがある〉
そして、学園長とフィリスは何かブツブツ言っているがスルーして向かうと
「ハルヤ先生さっきぶりです」
さっきの茶髪の男子生徒とベージュの女子生徒に遭遇する。
「えっと、自分に何か用か?」
一応そう聞いてみると
「実はあの後、ナインと話していたのですが、正式にハルヤ先生の弟子にしてくれないですか?」
「わたしがナイン・ミラーです。横の茶髪男子がクロト・トレイナです。よろしくお願いします」
二人が頭を思いっきり下げて来たので
「悪いが、自分のメインは雑貨屋の店主だから無理だぞ」
と言って断るがミラナさんとフィリスが
「いいじゃ無いか、ハルヤ君の弟子ならかなり優秀になると思うぞ」
「それに、商売するのには人手もいるので、錬金術を教えるかわりに店員として雇うのもアリだと思いますよ」
なんか、上手い感じに乗せられているな。
二人は頭を上げて来て、目をウルウルさしてこちらを見て来るので
「ハァ、雑貨屋の店員として手伝ってくれるなら、俺は教えても大丈夫だぞ」
と答える。
すると、二人は
「「はい、ありがとうございます」」
と言って来た。
「家主、人手が増えるのはありがたいと思うが、負担が増えると思うのじゃ」
「確かに、俺も甘いとは考えているが、この状況なら仕方ないだろ」
そして、クロトとナインと俺達六人でご飯を食べる事になっのだが
「ユーナ先生からハルヤ先生は絶対に逃してはいけないと言われました。あと、弟子ならユーナ先生もなりたかったみたいですよ」
なんか、しれっとマズイ事を聞いたような気がする。
「それと、他にも色々言われましたが、わたし達がハルヤ先生の弟子になりたいと話したら『単位はあげるからしっかり学んで来なさい』と言われました」
あの先生、それでいいのか!?
「ユーナ先生も思い切った事をするな」
何でミラナさんは天ぷらを食いながら話すんだよ!
もう、突っ込み疲れた……。
俺はちびちび海老天蕎麦を食べていると
「家主はやはり何処に行っても巻き込まれるのじゃ」
フラウ、食べているカツカレーのカツ奪ってやろうか?
「それでは、お昼からは商業科に向かわれますよね。二人はついて来るのですか?」
「「もちろんです!」」
こうなるとは思ってもいなかった。
そして、みんな昼ご飯を食べ終わってのんびりしていると
「ハルヤ先生は何者なんですか?」
クロトがそう聞いて来たので
「何者と言われても答えづらいな。まぁ、その辺の一般人だな」
「まず、回復魔法が使えて錬金術も基本の事だけで、あれだけ性能が上がる一般人は聞いた事も無いですよ」
ナインからも言われてしまう。
「私達もハルヤ君とフラウちゃんの事はよくわかって無いんだ。もし、何かわかったらこちらに伝えてくれるか?」
「「分かりました!」」
二人がそう言って頷いていると
「えっ!? ハルヤさん、フラウちゃん」
俺は声をした方に振り向くと、前にグレーウルフから助けたエクスとグレイズに遭遇する。
「エクスとグレイズだよな」
「そうです。でも、学園長先生達と一緒にここにいるとは思っても無かったです」
エクスがそう言ってテンションが上がっているが
「ハルヤ様、わたくし達は戦闘科の十八組です。もし、何かあったら来て貰っても大丈夫ですよ」
グレイズは前よりも冷静に話して来る。
「まぁ、グレーウルフを弓で圧倒出来る戦闘力を持っているハルヤさんには、俺達が複数で戦っても勝てそうに無いけどな」
待て、エクスがなんか言ったような。
そう考えていると
「今、ハルヤ君一人でグレーウルフを圧倒したと聞こえたけど気のせいか?」
ミラナさんがそう言って、エクスとグレイズに内容を聞き始めた。