カワドリー商会
次の日、俺は仕入れに行く為に商業ギルドと、値段の交渉をしていると、他のギルド職員さんが
「大変だ! カワドリー商会が商品を買い占めている」
……。なんだと
「なぁ、ダンナ。商品を買い占められた少しマズく無いか?」
「そうだな。でも、ウチはまだ何とか方法はあるけど、他の雑貨屋は経営が厳しくなるな」
俺はそう思いつつ、話していると
「ハルヤさん、私も行くので、話はまた今度で大丈夫ですか?」
俺を担当していた、トマナさんが急いで、他な所に向かって行く。
「しかし、何で商品の買い占めを始めたんだ? 意味わからん行動をしているな」
「ルージュ、それはおそらく俺達みたいな個人経営の雑貨屋を潰そうと考えている筈だ。ただ、これも一つの可能性だけどな」
そう言って、俺は頭を回転させて色んな可能性を考える。
こちらを潰しても、向こうには何の得があるんだ?
何かが足りないなと思いつつ、ロビーのイスに座る。
そして、周りを見るとかなりの人がパニックになっていたので
「購入制限をしていないのか? 最近は買い占めとか無かったから、かなりすごい事になるぞ」
その予感は的中してしまう。
問題が起きて数時間後、素材やアイテムが殆ど無くなった商業ギルドには、商人が数名程しか残らなかった。
ロートスは辺境の辺境だから、こんな事は普通は起きないと思っていたが、違うみたいだな。
前にソーラント辺境伯領でも似たような事は起きたけど、その時はまだ何とかなっていたから、今回は商業ギルドマスターはどう行動に移すのだろうか。
そう考えて、俺はルージュと一緒に、商業ギルドの外に出る。
しかし、俺達も素材や商品が無いと、商売は出来ないな。他に何かやる事が有ればいいが。
俺は周りを見ているが、商人があちこち走り回っている以外、特に変化は無いので歩いていると
「そういえば、明日にカワドリー商会の雑貨屋がこの街に出来るそうよ」
「確か、商業ギルドの商品を殆ど買い占めた人達でしょう」
「よく、そんなにお金を持っているわね」
と主婦の皆様が話していたので
「カワドリー商会はそんなに大きな商会なんだな。でも、あの偉そうなオッサンが部長か、絶対に下で働きたく無いな」
「そうだな。それに、俺様なら顔面を思いっきり殴るな、絶対に!」
ルージュが拳を握りしめている所を見るとガチみたいだな。
しかし、そう言ってもどうしようも無いよな。
まぁ、とりあえず置いておいて、店の点検でもするか。
俺達は、昼ご飯を食べたあと、ゆっくりと歩いて自分の店に帰る。
そして、商品を倉庫に片付けて、掃除と点検を始める。
「ダンナ、ここが結構汚れているな。とりあえず、雑巾で拭いておくな」
「ルージュ、ありがとな。この店はかなり年季が入っているから、点検とかしておかないと危ないからな」
俺はそう話して、台に乗って棚の後ろを見ていると
「これは懐かしいな。七年前に無くしたと思っていた、王冠だな」
俺は、昔集めていた王冠を思い出して、思わず懐かしんでしまう。
すると
「ダンナ、結構ホコリがたまっているから、一回棚をどけて掃除した方が良く無いか?」
ルージュは棚を軽々持ち上げて、外に出す。
「本当にルージュがいると助かるな。それよりも、懐かしい物が出てくるかもしれないな」
俺は棚があった場所を箒で掃きながら、他に何か無いかなと見る。
でも、めぼしい物は無かったので、細かい所まで綺麗にして、棚を元に戻した後、周りを見ると
「ダンナ、ここまで綺麗になって良かったな。それに、俺様は楽しかったぞ」
ルージュがそう言って笑顔になるので、こちらも思わず笑顔になる。
「なら、今日は食べ放題店に行くか。とりあえず、今日はパーティだ!」
俺もキャラが変わってしまうくらい、テンションが上がる。
ただ、掃除をして片付けただけなのに、ここまで気持ちいいとは思わなかったぞ。
「しかし、もう十七時か。かなり時間が経ったな。アイツらを冒険者ギルドに迎えに行くか!」
「ダンナ、良い考えだな。もちろん俺様は護衛だから一緒に行くぜ」
ルージュもそう言ってくれたので、俺は扉に鍵をしっかりかけて、確認した後、三人を迎えに来て行く。
そして、冒険者ギルドに向かい、ちょうど三人がダンジョンから手に入った魔石などを換金していたので、少し待って合流する。
向こうも、俺達を見つけたみたいなので、手を振って来たので、こちらも振り返す。
「ハルヤ、今日は治療院(仮)を開くのかしら?」
「違うぞ。今日は食べ放題店で外食をしようと思って、冒険者ギルドに来たんだ」
「そうなのか、今日も私達は腹ぺこだからかなり食べるぞ」
レイナが嬉しそうにしているので
「そうだね。ボク達は今日も大量に食べるよ」
エルもかなり食べるみたいだ。
「なら、そろそろ行こうぜ。席が無くなる前に」
ルージュが待ちきれそうに無いので
「それじゃあ、行くか!」
俺達は食べ放題店に行って、閉店間際まで大量に食べて、店長と店員が半泣きになっていたが、不思議と出禁にはならなかった。