泣かないで、マイダーリン(野獣さん!)。
野獣さん、泣かないで。
あたしの、こころは、美味しくなかった?
あれだけ、熱心に、むしゃぶりつき、
ひとかけら残さず食べきってしまい、
終いには、
骨までボリボリ噛み砕いてしまうもんだから、
あたし、なーんにも、残らないよ。
あたしの、こころって、もう、死んだ。
あたし、ぼーっとしてしまって、
あなたの愛情にちゃんと応えてあげられない。
あなたのじょうずな冗談にも、
けらけら笑ってさしあげられない。
あたし、
こころ、喰われちまって、
なーんにも、考えられなくなっちゃったのかな?
ずーっと、ぼーっと、してるんだ。
寝ても、覚めても、あなたのことばっか、
おもってるんだけど、
水中でマラソンしているみたいで、
感受性がゆらりゆらゆら、
あたしの想いに追いつかないのさ。
あなたに、食べられたせいかな?
こころ、なくしちゃった、みたいなんだよ。
こんなことになるんなら、
あなたにイヤって、いえばよかったかなぁ。
食べないでって。
でも、
そんなこといって、
なら、いいよ、じゃあな?
とか、関係が遠くなるのもイヤだったし、
いったい、あたしは、
なにをどうすれば、よかったのかしら?
いまとなっては、
どうしようもないんだけど、
野獣さんが、野獣さんだから、いけないんだから。
野獣さんが、うさぎさんとかなら、
よかったんだから。
でも、それなら、食べられなかっただろうけど、
あたし、べつに、うさぎさんなんて、
好きでもなんでも、ないものね?
だから、やっぱ、野獣さんがうさぎさんじゃあ、
ダメだしね。
野獣さんが、野獣さんだから、いけないけれど、
いいんだからね。
ややこしいね?
なら、どっちにしたってあたしのこころは
食べられるのが、運命なんだよね?
あなたのこと、好きになっちゃうと、
そういうことになるよね。
こころって、ちゃんと思い通りにならないもんだね。
あ、違った。
もう、あたしこころは、ないんだった。
そんなこと、えんえんとあなたに聴かせてきた、
だから、かな?
あなた、あたしの眼をみて、泣いてるじゃない?
えー?
なんで、あなたが泣くの?
泣きたいの、こっち。
でも、ま、こころがないから、泣かないけどさ。
ねぇ?あなた、
あたしのだいじな野獣さん?
まだ、食べ足りないって、いうつもりかな?
それとも、あたしのこころは、美味しくなかった?






