7・討伐戦
そんな平和な日々を過ごすこと1ヶ月、領主軍の調査隊が戻ってきた
しばらくして領主から住民に報告があった、ここの領主は元々この町の住民で前の氾濫の時に手柄を上げ、男爵となりそのままここの領主となった人物で、非常に住民思いのいい領主だ。
報告によると大森林の手前の森も魔獣で溢れており、大森林に近づくことが出来なかったらしい、これは20年前と状況が同じで近く氾濫が起こる事は間違いないようだ、そこで住民らに氾濫時は領主舘に立て篭もるようにと御触れをだした、領主軍と冒険者たちには門前で討伐任務や救護任務にあたるよう指示が出た。
「ラスク、一般人は領主舘に行かないといけないみたいだ、早めに冒険者登録をしておくか」
「おお!それが良いかもな」
早速冒険者ギルドに向かい、サクヤさんを訪ねる
「ユートさん、お久しぶりです今日は登録ですか」
「はい」
「え?本当に?」
「おう!氾濫が近いみたいだからな、俺たちも討伐協力するぜ」
ラスクが答えると、サクヤさんが笑みをうかべ
「ありがとうございます、バーサクベアを単独討伐出来る人物はとても貴重です、それでは商人登録証をお出しください」
あれはラスクが倒したのだけどなぁ
「商人登録証?」
「はい、そちらの登録証にはすでにユートさんの魔力紋が登録されておりますので、あとは冒険者ギルドの登録機に差し込むだけで登録完了となります」
「そうですか、これが登録証です」
登録証をサクヤさんに渡すと奥へと下がっていった。
そして1ヶ月ついにその日がやってきた。
群れが町の目前に迫ってきた事前に罠を設置した後ろに要請を受けた国軍、領主軍、冒険者たちが並び、弓使いや魔法師などは町の石壁の上に並んでいた。
私とラスクも壁の上で待機しているとおびただしい数の魔獣が押し寄せてきた、魔獣は餌となる人間がたくさんいる所をめがけ突進してくる、先頭の魔獣が罠にかかり始め戦闘開始だ、
罠や簡易柵を魔獣が次々抜けてきた、あらかじめ入り口を広く出口を狭くした柵から抜けた魔獣を軍や冒険者たちが次々狩っていく
「さあ!俺たちも参戦しようぜ」
「ああ、やろう」
戦場に二体の銀色のメタルゴ-レムが走りこんでいく私のゴーレムが1体仕留める間にラスクは3体狩っていた
「相変わらず、めちゃくちゃな速さだな」
「どんどん行くぜ!」
上から見ると戦況がよくわかる、私は魔獣に押されている人を見つけては参戦し1体づつ確実に仕留めていった、時折助けた人が手を振ってくれる。
「にしても多いな、切りが無い」
「うりゃうりゃうりゃぁ!」
相変わらずラスクはすごい魔力操作が抜群にうまいこれもエメリオの記憶か
前半組が下がり中盤組が前に出るその後は後半組の繰り返しだ、私とラスクも一旦下がりギルド併設の救護所へと向かった
沢山の負傷者が出ているようでこちらも戦場になっていた。
「あ!ユートさん」
サクヤさんが声をかけてきた。
「ユートさんポーションはお持ち無いですか?」
「普通ランクならいくらでも」
「じゃぁとりあえず千本お願いします、支払いは後日ギルドにてお願いします」
背負い袋から仮机の上にポーションを取り出す
「ありがとうございます、つぎの出撃まで休んで下さい」
「そうします、もう魔力切れ寸前です」
キャンピングカーに戻ってくるとソフィアがトテトテと駆け寄ってきた
「ソフィア領主館に居ないと駄目じゃないか」
「いや、一緒に居る」
「おう!俺たちは強いから心配するな、ソフィアも強いの知ってるだろ」
たまに朝錬をのぞきに来ていたから分かると思うが
「ん、」
「じゃぁ領主館に行こうか」
「ん、」
やはりここは危ないので、涙をいっぱい溜めたソフィアを領主館に届けた。
ゆっくり風呂に入って、もう魔力切れなので以前練習で作った食事ですませ眠りについた。
魔物の襲撃から3日ようやく魔物を殲滅できた、あれから何度か出撃していたラスクのゴーレムが赤い旋風などと呼ばれ始めた、なんでも魔物の返り血を浴びながら一瞬も止まることなく葬り続けている姿を誰かがそう呼び始めたらしい、ちなみに私のゴーレムにも名前が付いた、
救済さん、襲われている人を助けて廻っていたらいつしかそう呼ばれるようになっていた。
「ようやく終わったな」
「ああ!がんばったぜ」
その日は町を揚げての宴会が始まった。私たちも孤児院で子供たちに料理を振舞っていた
カイのパーティーも全員無事で孤児院に来ている
「凄かったぜ、ラスクの赤い旋風そこにいたと思ったらもう遙か彼方にいるんだぜびっくりだ」
「そうよ、わたしゴーレムのことはあまり知らないけど、あれは異常ね」
「異常」
ギルがから揚げを頬張りながら頷く、食べるか喋るかどっちかにしなさい。
ソフィアもラスクと一緒に笑っている、余ほど心配だったらしく、ラスクから離れようとしない。
次の日ギルドに顔を出すと
「よ、救済さん、ありがとな」「旋風、ごくろうさん」「ありがとう助かったよ」
など見知らぬ冒険者たちにお礼を言われアタフタしていたら、サクヤさんが声をかけてきた
「ユートさん、お疲れ様でした、この度は本当にありがとう御座いました」
「いえいえ、大したことはしていませんので」
「は?いや、ユートさんとラスクさんで柵を抜けた魔物の三分の一は仕留められましたので、お二人が居なかったらと思うとぞっとします。」
「そうだぜ、おれも救済さんにたすけられた」「おれも」「おれも、危ないところに赤いのが来てくれて」
もう救済さんと赤い旋風は決定事項みたいだみんな平然と呼んでる。
「そう言われると照れますね」
「おう!任せとけ」
なにやらラスクが勘違いな発言をしているような
「それで、お二人に頼みたい事がございまして、外の魔獣の処理をお願いしたいのです、魔獣素材を売って今回の褒賞金に当てるもので、もちろん、解体費用は別途支払いますので」
「いいですよ、じゃあ死体を何ヶ所かに集めてもらえますか?」
「はい、さっそく取り掛かります」
町の外に出ると集められた魔獣の死体が山積みにされている
「多いな、一度には無理だね、何回かに分けよう」
「そうだな!今日中に終わらそうぜ」
二人で永延と錬金解体をしていった
サクヤ視点
いつもの業務を終え、さあ交代しようかと思っていた所にその奇妙な子供は現れた
「報告があるんだけど」
「カイさん、どうしました?」
「今日いつもの町の近くの森で薬草採取しながら角ラビ狩りをしていたらバーサクベアに襲われた」
驚いたあの森にバーサクベア、そんな
「!バーサクベア!それは高ランクに依頼を出さないと!」
「ああそれは、この人が仕留めてくれた、ユート、バーサクベアの毛皮を出してくれ」
「そちらの男の子が?」
「はいこれが毛皮です、私はハーフエルフですのでこれでも30才です。」
なにかもう諦めたようにその子は答えた、だがハーフなんて聞いたことが無い本当だろうか
「そうですか、では、拝見しますね、大きいですねそれにこれはなめし終わっているようですが?」
「それは錬金術よ、ユート凄いんだから、こー手をかざすと死体が沈んでいって」
錬金術師!この町にはもう一人も居ない、ソフィアのお母さんのシルフィリアさんが亡くなってからは、始めて見た
「錬金術師ですか、それじゃ肩のねずみは」
「おう!ラスクだ、よろしくな!ねずみじゃなくてハムスターだ」
「はむすた、ですかしつれいしました、喋る使い魔さんはエメリオ様の使い魔以来ですね」
「ああ銀色の狼だろ、俺の大先輩だ1日しか一緒に居なかったけどな、最初にいろいろ教えてくれた」
そういえばシルフィリアさんの使い魔はリスだったけれど喋ることは出来なかった、喋る使い魔はエメリオ様の銀狼のウルスさんしか見たことが無い
「そうです、ウルスさんですエメリオ様の使い魔でした、エメリオ様はSランクの冒険者で時々魔獣の素材や薬などを売りに来られていたのですが、この1年ほど来ておられませんねぇ」
もう1年以上見ていない
「師匠は死んでしまいました、私は最後の弟子です」
「え!?それは残念です、とても惜しい人を亡くしました」
とても貴重な人を亡くした、国内でもSランク冒険者は9人しかいない
冒険者登録を勧めてみたけれど断られた
「そうですか、バーサクベアを狩れる実力者は貴重なんですけどね」
そー簡単に諦めませんよ。