10・あいつ
「これが俺たちのパーティーだ」
翌朝冒険者ギルドで待ち合わせた。
「始めまして、優斗といいます錬金術師です、それと相棒のラスク、女の子はソフィア今錬金術を教えています」
「私はエルフのリュウレイラ、私の隣がトーマ、三人で[黒狼の盾]です」
「トーマっす、この間はありがとっす、救済さんが来てくれなかったらマジで死ぬとこだったっす」
やっぱり、エルフという人種は美人さんしかいないようだ、人族のトーマさんは斥候職の男の人で軽そうな鎧に短剣を身に着けている、リーダーは大きな盾に黒い毛皮の皮鎧と長剣だ。
あいさつを終えると私達は討伐の依頼を受けた。
「ソフィアは宿で留守番してくれるかい?」
「ん、行く、リベル強い」
いやいや無理だから
「私が一緒に居ます、私は魔法師で今回あまりお役に立てそうに無いので」
エルフのリュウレイラさんが一緒なら安心かな、ぐずるソフィアをなんとか宿に届け鉱山に向かった。
鉱山に登る為にラスクと私で二体の馬の岩ゴーレムを町の外で出すとザックさんが1匹売ってくれと言ってきたが、これは錬金術師にしか操作できないと言うと物凄く残念そうにしていた。
「意外と広いですね」
「ああここはまだ入り口に近いからなこの先でいろんな方向に分かれてる」
まだ、魔物は現れない、入り口近くは日の光が入るかららしい。
「こっちだ、はぐれるなよ、まあどのルートも最終的に大広間につながっているから安心だけどな」
しばらくして通路が分かれ始めた所で魔物が現れた、そいつは台所にいるあいつが子犬ぐらいに巨大化したやつだ
「う、こいつ」
「ローチだ結構素早いからな」
いやいやそれよりも私の予感がこんな形で当たるとは、みんな魔物と呼んでいたところで気がつくべきだった、魔獣じゃなくて魔物、魔物じゃなくて魔虫と言ってくれー。
「う、ぎぼぢばどぅび」
昔寝ている時に口に入ってきて飛び起きた、それ以来私の天敵だ
「おう!言うほどのスピードじゃないぜ、楽勝楽勝」
トーマさんが嬉そうにラスクの倒したそいつをアイテム袋に入れている
「え、持って帰るの」
「もちろんっす、こいつは良く燃えるっすから窯の燃料として高く売れるっす」
いえトーマさん、素手でさわってますよ、その手は二度と握りません。
意気揚々とローチを狩って行く三人、その後ろからなるべく邪魔にならないようにとぼとぼと付いてく私、ラスクのゴーレムがそいつらを蹂躙しているから、私は帰ってもいいような気が
「しかし、救済さんにも意外な弱点があったんだな」
「ええ、すみません、どうしてもそいつらだけは勘弁して下さい」
ザックさんに素直に謝る。
「全然問題ないっす、さすが赤い旋風っす」
「うりゃうりゃうりゃぁ!」
順調に進み大広間について発狂した。
そこには子牛大のあいつが大広間の床から天井までひしめきあっていた、冷静に判断した私は通路を錬金術で塞いでやった。
「ふぅー、危なかった」
「ふーじゃねえよ、開けないと討伐出来ないだろ」
「そうっす、おいらたちと旋風なら楽勝っす」
「いやいや見ましたか奥さん牛ぐらいの大きさでしたよ」
「誰が奥さんだよ、訳解んねえ事言ってないで、開けてくれ」
「そうっす、でかいだけでそんなに強くないっす」
「おう!心配するな一瞬で殲滅してやるぜ」
いやあの数を一瞬でなんて無理に決まっている何匹かはこっちに来るかもしれない、騙されないぞ。
そんなことを考えていたら、ラスクが裏切り通路を繋げていた。
「らーすーくー」
「叫んでないで来るぞ、準備しろ」
餌(人間)目がけてそいつらが押し寄せてきたやはり何匹かこっちにくる、私は救済さんを使いたくなかったので岩で作ったゴーレムで踏み潰してやった、素材にならないってフン知ったこっちゃ無い。
「それにしても、多いな、こりゃぁギルドに回収依頼を出さないとな」
「そうっすね、もうアイテム袋もいっぱいっす」
私の袋は無限だとは口が裂けても言わない
「ん!優斗のふ「じゃ引き上げましょう」んぐ」
あわててラスクの口をふさぎ足早に鉱山を後にした
ギルドで報酬をもらった私たちは宿で宴会をすることになった。
「良いんですか、報酬半分も貰っちゃって、私なにもしてないのに」
「ああ、チームで半分ずつだ、遠慮するな、それに最後何匹か殺ってただろ」
ああ思い出したくも無い
「でも、さすが旋風っす、おいらでは目で追えなかったっす」
「私も氾濫の時に城壁の上から見ていたが何体も居るように見えた」
「おう!目で見るな感じろだ」
ラスクがどこかで聞いたような台詞を喋っている
「むぅぅ、次は行く」
いやソフィアさん、行かなくて正解でしたよ
翌日はのんびりみんなで屋台めぐりをし、次の日の朝出発した。
「さあ、行こう、帰りにまた温泉に入ろう」
「ん、次は勝つ」
いやソフィアさん温泉に入るけど鉱山に入るとは言ってません。
トポックの温泉を出て順調に進むこと十日ついに王都が見えてきた途中一箇所村に寄ったが特筆することも無くあっけなく着いてしまった。まあ王都に通じる街道でそうそうイベントがあっては流通に支障をきたすからな。と誰に説明しているのだろう。
木の柵に囲まれた内側に小麦畑が永遠と広がり遠くに高い石垣が見えている、街道から続く門には開閉式の巨大な扉が付いていた、王都に入る長い列に並び、門番と例のやり取りをして門をくぐると、綺麗に計算された町並みが広がっていた、町の中央通が大広場をへてそのまま王城へと続いている。あそこにこれから呼ばれると思うと胃が痛くなる。
たしか叙勲とは爵位を貰えるらしいが、はっきり言って、まったく、これっぽっちも、い、ら、な、い、なんとか阻止せねば。まぁ今日は着いたばかりだし宿をさがそう。
少しでも嫌なことは先に延ばさないと。
「まずは宿だな」
「ギルドはいいのか!」
「ああ、今日着いたばかりだしもう遅いからな」
「ん、お腹すいた」
ソフィアと意見が一致したので宿を探すことにした。
宿で一泊し、宿で買った地図を見ながら冒険者ギルドを探した、ギルドは大通り沿いに有り簡単に見付かった。
「うーん、行きたくない」
「なにやてっんだ!さっさと行こうぜ」
「ん、諦めが肝心」
ソフィアそんな難しい言葉、何処で覚えた、とても五歳児の言葉とは思えないよ。
「すみません、冒険者移動の手続きをお願いします。」
「はい、では身分証をお願いします。」
身分証を渡すと横の木箱に差し込んだ
「はい、Dランクのユート様ですね、移動手続き完了しました。それでは城へと連絡を入れます、明日もう一度、朝にお越しください」
さすがは王都の受付嬢、何時もの質問をされなかった、なんだか少し淋しいような
「はいわかりました」
身分証を受け取ると横から柄の悪い熊みたいな男が
「ちょっと待て、そいつがDランクなんて冗談じゃない、そいつがDなら俺様はSランクだぜ」
なにやら絡まれているようだ、ガルムにはこんな柄の悪い冒険者は居なかったのにな、そう言えばガルムは腕のいい冒険者が集まっているってラスクが言っていたような。
「おう餓鬼、なんとかいったらどうだ」
「なんとか」
受付嬢を見ると笑顔で微笑んでいる、どうやらこっちの実力を知っているようだ
「な!こいつ馬鹿にしてるのか」
「はい」
なにやら顔が真っ赤になってきた、あんまり怒るとストレスで胃に悪いですよ
「こいつ舐めやがって、上等だちょっとこっちに来い」
「おいあいつ救済さんだ」「赤いやつか?」「おれ旋風にたすけられた」「あの熊死んだな」
大勢のギャラリーを引き連れてギルドの練習場に連れてこられた。
「今、謝ったら、腕の一本でかんべんしてやる」
「私が勝ったら、白金貨1枚でいいですよ」
さあ始めようかって、やるのはさっきからおとなしいラスクだけどね、ラスクを呼ぼうとしたら闘技場内にトテトテとソフィアが入っていった。
「ん、殺る」
ソフィアさん、ソフィアさん、字面がおかしいですよ
「おう!やってやれ」
いやいやラスク止めなさい
「なめやがって、もうゆるさねぇ」
止めようとしたらもう熊さんが大きなハンマーを振り上げ「は?」
突然、熊さんの前に三メートルの土ゴーレムが現れ腕を一振り、
熊さんが闘技場の壁にめり込んでいた。
「ん、ぶい」
ソフィアが振り向きVサインをした。ラスクなにを教えてるんだ。
熊さんに死なれると困るので普通ポーションを降り掛けておいた。
ざわざわとみんなが騒いでいるうちに、こそこそとギルドを抜け出した。
「まったく、ラスクは止めなきゃ駄目だろ」
「え!なんで、あんな奴ソフィアなら楽勝だぜ、俺の識別眼を信じろ」
「ん、問題ない」
こいつ等、まったく反省してないな、ソフィアもこの旅中は朝の模擬戦にリベルで参加しているがまだ実践は早すぎだ。
移動中、後ろのソファーでラスクに勉強と錬金術を見てもらっていたが、どうやらそれ以外も教えてるみたいだ、これからは私も偶に見ることにしよう、ソフィアの戦闘民俗化を止めなければ。
ラスク先生とソフィアちゃん
「いいかここに2体のゴーレムがある」
「ん」
「こっちの3体と合わせると何体になる?」
「ご」
「おお!正解だ、だから2+3=5になるんだ」
「ん」
「じゃあ3+5は?」
「はちゴーレム」
「お、おう!ゴーレムは単位じゃないけどな」
「今日は錬金でポーションを作って見ようぜ」
「おー」
「材料はこれとこれと・・・」
「じー」
「いいか!まずこの砂でビンを作る」
「すな?」
「おお!ガラスは砂で出来るぜ」
「ん」
「いいか!よく見とけよ砂でビンを作り薬草の成分を抽出して・・・完成だ」
「おおー、ぱちぱち」
「よし!やってみろ」
「ん、・・・・・・・・・・・・・出来た」
「机が、びちゃびちゃじゃねえか!優斗に怒られる前に拭いとけ」
「いいか!戦いとは、開始前にもう始まってるんだ」
「ん?」
「相手がかまえる前にはもう錬金初めておいて、ゴーレムを仕込んどくんだ!」
「ん」
「それで!勝ったら、指でこうするんだ[V]、ドヤ顔でするのがコツだぜ」
「ん、解った、ぶい」
「おお!完璧だぜ」