* 4 *
(あ、サナさん……)
竜国史の先生と共に母屋の書庫で資料を集め、離れに戻る途中の廊下で、モネは、サナの姿を見つけた。
サナは、庭園への出入口手前で、ムタと何やら話している最中だった。
サナもモネに気付き、微笑んでくれた。
モネは、その微笑を、しっかり受け止めて胸に仕舞い、自分も少々照れつつ、そして少し切なくなりながら会釈で返して、サナとムタの前を通り、出入口から庭園へ出て、離れへ。
(本当は、ちょっとくらい話をしたいんだけど……)
モネは、サナと、城の中で、よく会う。だが、会うだけ。お互い、誰か他の人と一緒にいたり、何かしている最中だったりして、話をするどころか、2人ともが足を止めて向かい合うことすら無い。
(…でも、今日は笑顔を見れたしっ……! )
その笑顔を励みに、離れに戻ってから、本日最後の授業である竜国史の残り時間に取り組んだ。
竜国でのモネの毎日は、朝、起床し、着替え、朝食を食べ、午前中は平均3つの授業を受け、昼食を挟んで、午後は平均2つの授業。その後、夕食を食べてから風呂を済ませ、疲れきって眠る、の繰り返し。
自由に過ごす時間が全く無いがための錯覚であると、モネ自身気付いているが、そのほうが楽なため、気付いていないことにして、竜国での生活に、すっかり慣れた気分で、モネは、日々を過ごしている。