恋にきづいて
こんにちは。
「べた恋」のあいぽです。
「べたな恋愛小説」が大好きな皆様へ捧げる
1億2千万人への「ラブストーリー」
いよいよ始まりました。
第1回目の今回のテーマは【出逢い】です。
精一杯の心を込めて作りました。
懐かしくもべたに溢れるラブストーリーに、思いっきり胸キュンして頂けたら光栄です。
「僕は……今日というこの日に、ここに集まってくれたみんなの前で誓うよ。僕は……僕は、僚子をいつまでも幸せにする!」
新郎のその言葉で、レストランの中は、来場者たちの拍手喝采で一斉に包まれた。
我が親友の僚子は、新郎のその言葉と、いつまでも鳴りやもうとしない祝福の拍手に、やはり感無量になったのであろう。感激の涙を目にいっぱい浮かべて、幸せそうな笑顔を私たちに振り撒いていた。
――しかし私はというと……
そんな僚子を見つめながら、本日、これで十五回目のため息をついていた。
今日は、人生でたった一度だけ誰もが主役になれる日。
僚子、今日のあんたはホントにキレイだよ。うん、キラキラしてる。
おめでとう。
おめでとう。
おめでとう。
心から、ちゃんと祝福してるよ、私は。
だって、昔っからの数少ない友達だもん。
だけど……
だけど……
なんでこんなに、ため息がでちゃうんだろう。
私は、親友の幸せを妬んでしまうくらい、今、心はすさんじゃってるんだろうか……?
「……はぁ」
そんな事を考えながら、またもやため息をついてしまう私だった。
レストランの窓に、何気に目を向けると、そこには美しい夜景が広がっていた。
このレストランは、ホテルの最上階にあるらしく、窓越しに広がる夜景は絶景だった。いつか見たプラネタリウムの星空のように、街明かりがキラキラと美しく輝いていた。
「あたし、……このまま独身で終わっちゃうのかな」
なぜだろう?
こんなにキレイな夜景が目の前に広がってるっていうのに、なんだか私にとっては、その美しさが返って疎ましく思えてしまう。
親友の結婚式の二次会という事で、久し振り戻った故郷の富山で、私は行き場のない虚無感に包まれていた。
大学を卒業した後、私は東京に憧れ上京した。
東京でオシャレなオフィスで働き、仕事が終わった後は、みんなで素敵なバーとかクラブに出掛けたりして、まるでドラマのような恋をしようと思っていたんだ。
だけど、現実の世界は大違い。オフィスにいるのは、中年のおじさまばかり。そして、一般職の私は、来る日も来る日も、お茶汲みとコピーと雑用の日々。
あっ……、そうそう。一日中、総務の倉庫で書類整理させられた事もあったっけ。
それでは、恋はどうかと言うと、クラブに行っても、声を掛けてくる男はろくでもない男ばかり。大手の広告代理店の名刺を、まるで印蘢のようにちらつかせ、そこいら中の女性に配りまくるのだ。そんなんで、女が寄って来るとでも思ってるんだろうか?
……って、愚痴ってみても、私もそいつらに遊ばれたクチだけどね。 なんだかんだで、上京して、結局は三人くらいの男と付き合ったが、その中で私が得た答えはただひとつ。
あいつらが求めているのは、コンビニ感覚のお手軽な恋だけ。
東京って、何でも便利な分、きっと恋も便利で簡単なんだろうな。
結果……
私は、東京の男どもには幻滅して、ただ今五年の長期恋愛休暇中。そして、先月でついに三十路入り。
あぁ、何で私は東京になんか憧れて上京したんだろう。
もし、私も富山で就職してたら、今みたいに独りじゃなくて、みんなみたいに結婚して、幸せな生活をしてたかなぁ。
僚子の結婚祝いに駆けつけた、昔の同級生たちを横目に、私は窓辺にもたれて、一人でグラスを傾けていた。
同級生たちの話題は、子育てや自分の旦那の自慢話ばかり。
とうてい一人者の私が入ってゆける話題ではなかった。
もたれていた窓ガラスには、今日のために、とびっきりのオシャレをしてきた私が虚しく映っていた。
朝早く起きて、キレイに結い上げた髪。銀座のプランタンで、化粧品屋のお姉さんに教えてもらったパーティー用のメイク。そして、背中が大きくあいた真っ赤なドレス。グラスを持つ指先も、ドレスに合わせて、赤をベースに、華やかにネイルをしていた。
「……はぁ」
主婦になってしまった同級生たちと比べれば、明らかにここでは、私だけ浮いた存在だった。
一体、私は今日何を期待してたっていうんだろうか……?
だめだ、なんか自分が惨めすぎて涙が出てきちゃうよ。
そうそう、年を重ねる度に、涙腺が緩むとはよく言うが、五年も恋を休んでいる間に、私はそんなに年ばかり重ねてしまったのね。
あ〜、自分がなんか情けない。
私は気分転換に、タバコでも吸おうと、バックからヴィトンのシガレットケースを取り出した時だった。
「一人で飲んでつもまんないよ」
ふと、私に話かける声がしたので、目を向けてみると、そこにはタイトなスーツに身を包んだ、小綺麗な男が立っていた。
その男は、スーツのポケットからタバコを取り出すと、火をつけて、そっと私の手に渡してくれた。
「今、タバコ吸おうとしてたでしょ」
「……あ、はい。ありがとうございます」
その男から渡されたタバコを、私は思わず口にしたが、よくよく考えれば、先ほど火をつけるために、男はタバコをくわえたはずだから……
――えっ……。
コレって、間接キス……!?
五年間も恋を休んでいたら、こういう時に非常に困る。もう三十歳にもなった大人の女のくせに、カッコつけようとしても、気がつけば、思春期の女の子のように、顔中に血が上っていくのを身体中で感じてしまう。
「ナニ、真っ赤な顔してんだよ。桜井?」
ん!? おいおい、間接だけど……あなたは五年振りの私の唇を奪った上に、何で私の名前まで知ってんのよ。
「ナニ変な顔してんだよ、桜井。忘れたのかよ。オレだよ、五十嵐。小学校の時に一緒に飼育係やってたじゃん」
五十嵐……
五十嵐……!?
ええと……、飼育係の五十嵐?
ん、あの坊主頭だった五十嵐か!?
「やっと思い出したか! なぁ、集まってるヤツら、みんな結婚してるヤツばっかでさぁ、なんかオレだけ浮いてる感じなんだ。桜井も、その顔じゃ、どうせ独身組なんだろ。今から一緒に抜け出さない?」
なんなんだよ、五十嵐くん。あなたは急に。
その顔は独身組って、余計なお世話よ。
何十年振りかの再会のくせして、結構ずうずうしいわね。
小学校の頃、ちょっと一緒に飼育係やったからって、いきなり私の心の中に、そんなにズケズケと入ってこないでよ。
あなたなんて……
あなたなんて……
この何十年、私の記憶に出演した事すらない男なんだから。
――しかし……
気がつけば、私は五十嵐くんが差し出した右手を、ぎゅっと握っていた。
五年振りの男の人の手……。
なんだか大きくて、あったかかった。
☆★☆★彡
「桜井さぁ……。絶対オレと気が合うはずだぜ」
静かなジャズが流れるホテルのバーで、私は五十嵐くんとグラスを傾けていた。
「なによ、いきなり!」
「ん? なんか横顔の感じで分かるからさ」
バーのカウンターに二人で並び、私の横でそう言って笑う五十嵐くんの笑顔に、私は心臓の鼓動が、少し高鳴るのを感じた。
薄明かりに照らし出された、五十嵐くんの顎のラインは、とてもキレイだった。
「ナニそれ? 五十嵐くん、いつもそんな事言って女の子くどいてんの?」
「ははは、桜井、ちょっとドキッとした?」
「する訳ないじゃん! そんなキザっちいセリフに」
なんだろう……、この感覚。さっきまで沈んでいた私の心は、急に精気を取り戻してきたかのように弾んでいる。
久し振りに男の人と飲んでいるから?
それとも五十嵐くんだから?
ううん、どっちでもないかな。
たぶん、私寂しかったんだと思う。
東京でいつも一人ぼっちだったから……。
そして、富山に戻った今も……。
だから、誰かにこうやって構ってもらえるのを、いつも心の何処かで待っていたのかも。
うん。そうだよ、そう。私は、誰かに構って欲しかっただけなんだよ。
――たぶんきっと……
「なんだよ、桜井。さっきから一人でニヤニヤして。酔ってるのか?」
「そ〜かもね〜」
何だか少し楽しくなってきた私は、お酒の勢いもあり、ついつい五十嵐くんの肩に頭を寄せてしまう。
私が知ってる五十嵐くんは、一緒に飼育係をやってた時の五十嵐くん。
いつも丸坊主で、半ズボンだった五十嵐くん。
だけど、ここにいる五十嵐くんは、肩幅も広く、柑橘系の香りに包まれた、少しオシャレな五十嵐くん。
なんだか少しカッコいいゾ、五十嵐くん。
大学卒業して、横浜に行ってたらしけど、五十嵐くんも、一人ぼっちで生きてきたのかな。
それとも、沢山素敵な恋をして生きてきたのかな。
「……ねぇ、五十嵐くん。今、彼女いんの?」
えっ……!? おいおい、何勝手に喋ってんだよ、私の口。恋を忘れた私は、男性との飲み方までも、忘れてしまったのか。これじゃぁ、まるで私を口説いて下さい、って言ってんのと同じじゃん。
なんて、一度は自分を責めたりはしてみるが、気がつけば、五十嵐くんの肩にもたれる私は、その答えを神様に祈りながら、上目に彼を見つめていた。
五十嵐くん。これは、別にあなたに口説かれたい、とかじゃなくて確認だから。
うん、そうだよ、そう。確認。
ほらっ、もし五十嵐くんに彼女いたら、こうやって二人で飲んでいたら彼女に悪いじゃない。
ただ、それだけ。深い意味はないんだ。
たったそれだけ。
だけど……
だけど、お願い神様。もしも願いが叶うのなら、今日だけは五十嵐くんを、独り占めさせて下さい。
これでも頑張って生きてきたから……。
いつもたった一人で頑張って……。
なんだか、そのうち東京って街が恐くなってきたりして……。
ずっと、ずっと寂しかったから!!
「いないよ。桜井は?」
笑って答える五十嵐くんは、肩にもたれる私の顔を覗き込んだ。
五十嵐くんの笑顔って何だか可愛いね。そんな笑顔で見つめられたら、私、ますます心臓の鼓動が早くなっちゃうよ。
「私も、……いない」
「そう……」
静かに流れるジャスに包まれて、重なり合う二人の眼差し。
……なんかいい雰囲気じゃん、私たち。
神様、ありがとう。今夜は……、今夜だけは、五十嵐くんに甘えさせてもらうね。
私は、この時間が永遠でいて欲しいと思った。
「ねぇ、み〜ちゃんの事、覚えてる?」
「……ん? 誰それ? 五十嵐くんが、昔付き合ってた女の子の話だったら聞きたくない」
そうだよ、五十嵐くん。
せっかく、私は今いい気分なんだから、今夜だけは他の女の子の事なんか忘れてよ。
私は、頬をふくらませて、五十嵐くんに小さく呟いた。
「今は他の女の話なんか聞きたくないよ。聞きたくな……い……」
私が覚えているのは、そこまでだった。
五十嵐くんの横にいるのが何だか心地よくって、久し振りにワインを沢山飲んでしまったんだろう。
……私は
五十嵐くんの身体に倒れこんでしまった。
☆★☆★彡
その夜、私は夢を見たんだ。
おかっぱ頭の私は、なぜかずっと泣いていて、その横では丸坊主で半ズボンをはいた五十嵐くんが、ずっと私の頭を撫でてくれていたんだ。
泣きやまない私に困ってるのかな?
丸坊主の五十嵐くんも、大きな目にいっぱい涙をためて、肩を震わせ泣いていた。
ねぇ、五十嵐くんなんで泣いてるの?
私が困らせちゃってるから?
何だかよく分からないけど、二人でずっとずっと泣いていたんだ。
ねぇ、答えてよ……
五十嵐くん……
「五十嵐……く……ん……。イダぁっ!!」
あまりにも大きな激痛に身体を貫かれた私は、夢の世界から一気に目が覚め、現実の世界に戻ってきた。
「……つぅ……、イテテ」
身体も痛いが、頭も痛い。どうやら、昨夜飲みすぎて二日酔いになってるようだ。
ふらつく頭で、辺りを見渡すと、私はホテルの自分の部屋のベッドの下にいた。
寝返りをうった時に、どうやらベッドから転げ落ちたらしい。
「五十嵐くん……?」
窓から差し込む眩しい朝日に、目を細め、かろうじて昨夜の記憶を辿るが、どうしても記憶の糸がつながらない。
ふらつく足で、ソファーに身体を埋めると、テーブルに一枚の手紙と、ウコンドリンクが置かれていた。
「五十嵐くん!!」
手紙を手にした時、私の眠気は一気にふき飛び、こらえきれない感情が心の奥から湧き上がってきた。
――桜井、昨夜は楽しかったよ。
不器用で……
いつも何かに、いっぱいいっぱいみないな顔しやがってさ。
小学校ん時と、全然変わってねぇよな。
東京で仕事してるって言ってたけど
一人で色んな事抱えこんでねぇか?
ちゃんと近くにいるヤツに、何かあったら相談しろよ。
桜井は、昔っから、いつも一人で頑張るクセあったからなぁ。
たまには誰かに甘えてもいいてもいいんだぜ。
辛い事とか、悲しい事とかあったら、別に泣いてもいいじゃん。
泣きたい時は、我慢せず、誰かの前でも泣いちゃっえよ。
あん時みたいにな。
はら、一緒に育ててた、うさぎのみ〜ちゃん。
アイツが死んじゃった時、桜井、オレの前でずっと泣いてたじゃん。
一生懸命二人で育ててたから、ホントにあん時は辛かったよな。
覚えてるか?
桜井のせいで、あん時、オレの夏休みなくなっっちゃた事。
夏休み前に、み〜ちゃんが体壊しちゃっうからさぁ
夏休みだったって言うのに
毎朝、毎朝、桜井に無理やり叩き起こされて、二人で学校にいったもんな。
懐かしいな……。
人間ってさぁ、いくら頑張っても報われない時も、たまにはあるんだよ。
み〜ちゃんの時みたいにね。
だから、そんな時は泣けばいい。
誰かの前だろうが、泣いて泣いて、思いっきり泣きまくるんだ。
そして、すっきりしたらまた次に頑張ればいい。
あんまり、無理すんなよ。
とりあえず、ウコンドリンク置いておくから
これ飲んで、今日からまたガンバレ!!
じゃぁな、またいつかどこかで会おうぜ!!
五十嵐 淳一
五十嵐くん……
五十嵐くん……
あなたの記憶の中では、ちゃんと私という人間が生きていたんだね。
こんな私でも、ちゃんと誰かの記憶の中に生きていたんだね……。
五十嵐くん……
五十嵐くん……
私……、五十嵐の胸で泣きたいよ。
誰かじゃダメだよ。
五十嵐くんの胸の中で泣きたい。
テーブルの上に、何度も何度もこぼれ落ちる私の涙は、堪えようとしても、全く言う事を聞かず、いつまでも溢れ出して止まらなかった。
年とって、涙腺弱くなったんだから、泣かせないでよね、五十嵐くん。
もう五十嵐くんはいないと分かっていても、私は居ても立ってもいられなくなり、気がつけば、急いでホテルの部屋を後にしていた。
☆★☆★彡
富山駅前のロータリーは、バスを待つ人で溢れていた。
フロントで五十嵐くんのチェックアウトを確認にすると、ちょうど先ほどホテルを後にしたとの事だった。
おそらく、今から横浜へ戻るんだろう。
私は、富山空港行きのバス停へ急ぐと、ちょうどシャトルバスが到着しており、そこではもう乗車が始まっていた。
「五十嵐くん――!!」
乗車する乗客の中に、五十嵐くんを見つけた私は、思わず声をあげてしまう。
それに気づいたのか、五十嵐くんは、私に向かって拳を大きく振り上げ、バスに乗り込んだ。
一瞬、五十嵐くんの笑顔を見れたかと思うのもつかの間、シャトルバスは走り出し、私の前を通りすぎて行った。
『一人で飲んでもつまんないよ』
『横顔の感じで分かるから』
『泣いて泣いて、思いっきり泣きまくるんだ』
過ぎ行くバスを見送る私の頭には、五十嵐くんの声が何度も何度もこだました。
私……
私は……
今まで、恋を休んでたんじゃない。誰かを好きになって、傷ついて、一人で泣くのがイヤだったんだ。
――そう……
傷つくのが怖くて、誰かを失うのが怖くて、私はただ恋に臆病になっていただけだ。
そしていつしか、誰かが手を差し伸べてくれるのを待つだけの、臆病な女になってただけだったんだ!
でも、もう待つのはイヤだ。
五十嵐くんの胸に飛び込みたい。
こんな私でも、覚えてくれている人がいた。
気にかけてくれる人がいた。
五十嵐くんの胸に飛び込んで、辛い事、苦しい事、いっぱいいっぱいぶちまけて、思いっきり泣いて泣いて泣きまくりたい。
あの時の私は、ただ夢中になっていた。
気がつけば、走り出すバスを必死に追いかけていたのだ。
ドレスに合わせて買った真っ赤なミュールを、途中で脱ぎ捨て両手にぶらさげ、とにかく無我夢中で走り続けた。
ただ、五十嵐くんにもう一度逢いたい一心で。
「五十嵐くん――!! 私……」
私にもこんな大きな声がでるんだと驚くような大きな声を、五十嵐くんを乗せたバスに思いっきりぶつけた。
すると、バスの中までは聞こえるはずのない私の声が、五十嵐くんには届いたのか、バスの窓が開いたかと思うと、そこから五十嵐くんが身を乗り出してきた。
「私は――!! 私は――!!」
窓からこちらに手を差し伸べる五十嵐くんは、私がどれだけ力いっぱい走っても、どんどん遠くなるばかりだった。
だけど、これだけは絶対五十嵐くんに伝えたかった。
身体中の力を振り絞り、大きな大きな声で私は叫んだ。
「五十嵐くんが大好きやちゃよ――!!」
カッコつけるのもうよそう。
だって、恋する気持ちはいくつになっても同じだから。
新緑息吹く五月の季節。
私の心に芽生えた小さな恋は、五年の月日を通り抜け、ようやく今息吹始めた。
走り出すバスの窓
追いかけ叩いて
大声で叫んだ
僕のテレフォンナンバー
何故 僕ら 寂しさを
うちあけられずに
別れた?
「一人で飲んでもつまんいわ」と
グラス片手に僕に寄り添う
どうせ遊びの恋と
心閉ざしていたまま
朝焼けの停車場で
別れたよ
でも振り向いた
あの子は
悲しげで
何かいいたそうで
走り出すバスの窓
追いかけ叩いて
大声で叫んだ
僕のテレフォンナンバー
何故 僕ら 寂しさを
うちあけられずに
別れた?
『恋にきづいて』
歌詞 浜田省吾
☆★☆★彡
……ドン
疲れ果て、道端にしゃがみ込んで、ただ呆然とバスが消えていった向こう側を眺めていた私の目の前に、大きなボストンバックが飛び込んできた。
「何やってんやちゃ。桜井がだらな事するから、帰るに帰れんようになったやないか」
「五十嵐くん……!!」
夢を見ているみたいだった。
バスに乗って過ぎ去ったはずの五十嵐くんが、照れくさそうに私の前に立っていた。
「大好きやちゃ……」
私は、五十嵐くんの胸の中で、時間が経つのも忘れてずっと泣いていた。
まるであの頃の二人のように、五十嵐くんの大きなあったかい手は、私の頭を優しく優しく撫でてくれていた。
☆Fin……★彡
「恋にきづいて」
最後まで読んでくださってありがとうございます。
ご存知の方もいらっしゃるかとも思いますが、あいぽは、ある日、「小説家になろう」で一本の素敵な「ラブストーリー」に出逢いました。
その小説は、ごくごく王道的なラブストーリーで、キャラクターもストーリー展開も、超がいくらあってもつききれない程のべたべたなラブストーリーでした。
だけど、そのお話は、どこかあったかくて、優しくて、その頃ちょうど色んな事で悩んでいたあいぽの心を少しラクにして癒してくれました。
すごいですよね。
心のこもった作品って、読む人をとてもあったかい気持ちにさせてくれるんです。
だから、そんなあったかくもべたな「ラブストーリー」をもっとみんなに広めたいと、本当に思いつきで始めたこの「べたべた恋愛同好会」ですが、思った以上に沢山の作家の方々が集まってくださり、なんとか無事第1回目を迎える事が出来きました。
執筆にご協力頂いた皆様には、心より感謝を申し上げます。
小説というものに於いては、まだまだ勉強中の私たちではありますが、「心」だけは忘れず今後も執筆活動に励んでまいりますので、これからも「べたべた恋愛同好会」を何卒よろしくお願い申し上げます。
検索で「べた恋」と検索すれば、同好会の他の作家の皆様の小説も読むことができますので、ぜひご愛読下さいませ。
2008.5.4
あいぽ