男の威厳
目の前には人が流れて歩いて居る光景が広がる、ただここはおかしな事に建物の外観がファンタジー世界のものだ。
「なんだ? 夢かこりゃ」
その声は街の喧騒によって消える。
喋った男の身なりはスーツ姿だこの街では凄く目立った服装に見える。
「おい邪魔ださっさと歩かねえか」
後ろから女性の声が聞こえた。
「すいません」
反射的に謝る、まさに日本人の特徴が出たという感じだ。
謝った相手は男物の服を着た女性だった。
その女性は謝る姿を見て、慌てて周りを見渡しばつが悪そうに片手を振りながら言う。
「いや、謝んなくていいってそんな事より早く行きな」
女性にそう言われ頭を下げながら歩きだす。
女性の姿はすぐに人混みに飲まれていく。
しばらく流れにそって男は歩きながら考える。
どうやら夢じゃなく現実の世界らしい、俺はどうなってんだ?
死んだのかと思い手足を見てみるそこには地球の時と何ら変わらないスーツ姿の服が見える。
それを見て息を吐き安堵する。
男の名は近藤 優木、今年会社に入った新社会人だ。
彼がこの世界に迷い込んだのは会社の帰りの電車で居眠りをしてしまった時だそのため夢と思ったのだろう。
そんなユウキの肩に手がのびてきて肩に手が回される。
肩に手を回してきた人は女性で何も言わずにユウキの肩に手を回したままユウキを人気のない小道へと誘導する。
ユウキは訳が分からず声が出なかったがどうゆう状況か確認してその女性に声をかけてみる。
「あの、僕に何か用ですか」
その質問は小道に入って人目が付かない場所に入ってからの事だった。
「ん? ようね〜」
そう女性が笑いながら言った瞬間に後ろから他の何者かに口に猿ぐつわを無理やりさせられる。
「んぐぐ……」
ユウキはすぐに振りほどこうとするが体を道に抑えつけられてしまう。
先程の女性が首に手を当てて一言呟く。
「スリープ」
その一言でユウキの意識は沈んでゆく。
次に目覚めた場所は薄暗い部屋の中で埃っぽい匂いがする。
「痛っ」
動こうとして手足に痛みが走った。
ユウキはパンツとシャツだけという哀れも無い姿で椅子に手首と足を縛られている。
ユウキがなんとか脱出できないかと指を動かそうとした時に女性の声が掛かった。
「ようやく起きた、それじゃあ早速始めよう」
声がした方を見るとがらの悪そうな女、五人がニヤニヤしながらユウキに近づいて来る。
とても拘束を外してくれる雰囲気では無い。
「あの、着ていたものは差し上げるんでこれ解いてくれませんかね」
ユウキはこのままでは殺されると思い交渉をしようとする。
しかし女が言った言葉はユウキを戦慄させるものだった。
「あ? なんでこんな久しぶりの上玉を楽しまねーままでそんな事しないといけないんだよ」
女はそんな事を言いながら笑う。
ユウキは正気かと女を見る。
女は笑いながらユウキのパンツに触れようとした瞬間に部屋の扉が吹っ飛んだ。
「なんだ!?」
女達は扉があった場所を見ながら腰に下げていた剣を抜く。
そこにはアニメなどで出てくるヒロインのような姿をした金髪の女性がレイピアを構えていた。
レイピアを持った金髪の女性は椅子に縛られた哀れも無いユウキを見てから女性達を睨み付けてから口を開く。
「済まない、もう少し私が来るのが早ければ」
そんなことを言うレイピアを持つ女性を見て女性達は剣を構えながら一人の女性が言う。
「おいおい、他人の心配してないで自分の心配をしたら」
レイピアの女性は腰を低くしてレイピアを構えながら言う。
「貴様らが犯した罪、万死に値する」
そう言った瞬間に彼女が消えたと錯覚する程に早い、ユウキの目では追うことができない。
五人の女性達は何が起きたのかさえ分からなかっただろう彼女が消えたと思ったのと全員同時に女性達が崩れ落ちたのだから。
彼女がユウキを見て上に来ていたマントをユウキに掛ける。
「済まない君が連中に絡まれているのを見て人混みをかき分けて来たんだが見失ってしまって助けるのが遅くなってしまった」
ユウキは彼女の顔にみとれていた。
そんなユウキの姿を見て彼女は首を傾げる。
「私の名前はヘレナ、君のお名前をお聞きしても?」
ヘレナはユウキの拘束を解きながら名前を聞いてくる。
ユウキはヘレナに見とれてしまっていたがヘレナに名前を聞かれて慌てて答える。
「僕はユウキと言います。
助けてくださってありがとうございます」
ヘレナは礼を言うユウキを見て微笑む。
「いえいえ、私は当然の事をしただけの事ですので。
そんなことよりも早くここから出ましょう。
取り敢えず私の今住んでいる宿へ行きます、そんな服装では嫌でしょうし」
ヘレナはそう言うとユウキの手を取り先導して屋外へとでる。
もう外は夕方らしく空を見上げると建物と建物の狭い隙間から赤みがかった空が見える。
残念ながらユウキが着ていたスーツなどは売られてしまったらしく手元には金貨が五枚と大銀貨が九枚があるこの世界の価値はよく分からないがヘレナに聞いたところ金貨一枚で一ヶ月裕福な生活を遅れるらしい。
聞いたときヘレナに変な顔をされたのは言われるまでも無い事だ。
ユウキはヘレナのマントを纏った状態だヘレナは空をみあげてから頷きユウキを見る。
「少し失礼します」
ヘレナはそう言うとユウキに近づきお姫様抱っこをする。
「ちょっと、ヘレナさん?」
ユウキは降りようとするが降りられず仕方なくヘレナの顔を見る。
「すみませんが少し我慢してください。
あとしっかりと私を掴んでおいてください、落ちると危険ですので」
そう言ったヘレナはユウキを見て微笑む。
ユウキは落ちると危険という言葉について質問しようと口を開く。
「ちょっと待って下さああああ」
ユウキが言い終わる前にヘレナが建物の壁を蹴りながら上へと跳んだ。
「口を閉じていて下さいじゃないと下を噛みますよ」
ヘレナはユウキを持ったまま遂に屋根の上に出てそのままお姫様抱っこのままで走り出す。
「ぎゃああああああ」
ユウキの声が夕方の街に響き渡った。
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ユウキは今ヘレナが今泊まっている宿にいる。
「少し汚いかもしれないがそこは勘弁してくれ。
あとトイレはそこ風呂はそこだ。
まずは風呂に入ると良い。
服は女物だが私ので我慢してくれ」
そう言われてユウキは服を投げ渡されその服を見る、その服は明らかに男物の服で自分の中の何かをくすぐる感じがある。
まさに男物の戦士のコスプレだ。
それを持って言われた通り風呂に入る事にする。
この宿はレベルが高く貴族御用達レベルの宿らしいその為、部屋の広さは地球の一流ホテルと比べても引けを取らない程だ。
そんな中をユウキは風呂へと向かう
お風呂場に入る前の着替える場所の広さも凄く洗面台には大きな鏡が備え付けてある。
ユウキは一通り見渡したあとヘレナのマントや着ているものを脱ぎ浴室へと向かった。
ユウキは石鹸の香りがする中ヘレナから借りたコスプレの様なものを持っていた。
この服はこの世界では当たり前なのだろうがユウキが来た場所は日本だその為若干の抵抗がある。
この服は黒をメインにしていてゲームのキャラクターを彷彿させる。
ユウキは悩んだすえ着替えようとし時に扉を開ける音がした。
扉を開けたのはヘレナでその顔は固まっていた。
今のユウキの姿はヘレナのズボンを履いている為見られても特に問題はないはずだ。
しかしヘレナはいきなり土下座を決行した。
「すまない、事故とは言えか弱いおのこの肌を見てしまうとは」
ユウキは土下座の訳が分からずに狼狽える。
そんなユウキを一人置いて土下座は続く。
「どうか許して貰えないだろうか」
それを見てユウキは思い付くそう言う文化なのかなと。
そう思ってユウキはシャツと服を着てヘレナに頭を上げる様に言う。
「しかし、それでは」
ユウキは女性に土下座されている状況に戸惑いながらも提案をする。
「それほど仰るのでしたら今晩止めて頂けませんか。
なにぶん帰る家も無いものでして」
ユウキは頭を掻きながらそう提案する。
そうユウキが言い終わるとヘレナはようやく頭を上げてくれた。
「帰る家がない? 先程も金銭について聞いてきましたがそれについてお聞きしても?」
ユウキは地球などと言えるはずも無くドラマなどでよくある展開を使う。
「すみません、私がどこで暮らしていたかどうゆう事をしていたのか思い出せなくて」
その言葉にヘレナは絶句する。
「まさか、助けるのが遅れたせいで」
ヘレナは自分のせいだとユウキの嘘を真に受けてしまった。
「分かりました。
貴方が記憶を思い出すまでの間、私が付き添いましょう。
ちょうど、私の友達に凄腕の魔術師が居ますので」
ヘレナはそう言ってユウキを見る。
ユウキはそこまでされるのは悪いと思ったのかバツが悪そうだ。
「いえ、そんなそれではヘレナさんに悪いです」
ユウキはそう言うとヘレナはユウキの肩を掴んできた。
「記憶が無いのにあなたはどう生きて行こうと言うのです。
記憶が無い貴方をこのまま一人にできるわけ無いじゃないですか。
せめて職が見つかるまでは私を頼ってください」
ユウキはその勢いに押されて首を縦に振った。
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今、ユウキとヘレナは服を買うと言う事でヘレナに付いてきていた。
昨日の夜もおかしかったヘレナはベットをユウキに勧めてきてそれをユウキが断わっても絶対に譲ろうとしなかった、なんでも男性を床で寝さす訳には行かないらしい。
仕方なくベットでユウキは寝て朝になるとヘレナが服を買いにいこうと言い出し食事を済ませてから外に出た。
食事は宿が街一番と言う事もあり豪華な物が出たユウキはマナーに付いてあまり分からなかったのであたふたしながらも完食した。
それをヘレナはユウキの姿を楽しそうに見ながら食事を勧めていた。
ユウキはヘレナと歩いていた。
ユウキが店をキョロキョロ見ているとそこの店のおばさんに呼び止められた。
「そこの兄ちゃんりんごに興味があんのかい?
あんたは可愛いからただでやるよ」
そう言われて有無を言う前にりんごを二つ渡された。
「えっいいんですか?」
ユウキは可愛いという言葉にへこみながらりんごをもらった。
ユウキはヘレナの所に走って戻ってヘレナにりんごを一つ渡した。
「良いのかい?」
ヘレナはユウキが頷いたのを見て嬉しそうにりんごをほうばった。
服屋までの道中は昨日は気付かなかったが異様な光景が広がっていた。
朝に買い物をしているのは冒険者だそれが不思議なことに男女比が逆の状態だったのだ。
つまり女性が多く男性が少ない状態だ。
他にも男性が接客をして女性が料理を作っていたりり力仕事を女性がやっていたりと色々とおかしかった。
ヘレナに聞いてみると衝撃の事実が分かった。
なんでもこの世界には魔法が存在しておりその魔法は女性のほうが使えるらしくこの世界では女性のほうが男性よりも一般的に強いのだと言う。
そのせいで地球で言う女性差別が男性差別、まさに逆の状態になっているらしい。
世界の常識をユウキはヘレナから聞きながら歩いているとヘレナが言っていた服屋が見えて来た。
服屋に入るヘレナのあとにユウキは続く、すると店の中から女性の声が聞こえた。
「いらっしゃい、ってヘレナじゃんいつこの街に来たの?」
ヘレナとこの女性は知り合いらしく親しげに話す。
「久しぶりだなユリファこの街に来たのは一昨日くらいだな」
ヘレナはユウキを紹介しようとしたその時ユリファがユウキに気づいた。
ユウキは彼女の頭を見て驚く。
そこには猫耳があった。
ユリファはと言うとヘレナとユウキを交互に見てからヘレナに小声で話しかける。
「誰にゃ、あの超絶美人は。
まさかヘレナの彼氏かにゃ!?」
ヘレナはすぐに訂正する。
「かっ彼氏何かじゃないってば実は……」
ヘレナはこれまでの経緯を語った。
「なるほど、彼は彼氏ではないと」
ユリファはニヤリと笑ってユウキに振り向く。
「はっ初めまして私はユリファ。
えっと貴方がよろしければお付き合いしてもらえないでしょうか」
いきなりの告白にヘレナとユウキは驚きヘレナはスパンとユリファの頭を叩いた。
「いったいにゃ。
何するのにゃ、こんな可愛い子滅多にいないにゃ。
それに私だって彼氏が欲しいのにゃ」
ユリファはヘレナにぎゃあぎゃあと文句をぶつける。
ユウキはもうついていけないと喧嘩する二人を放って置いて店の服を見て回った。
この作品を見てくださってありがとうございます