5 別れの数だけチートは強くなれる
「おーい葵、戻ったぞー····ってなんだそいつら」
倉庫みたいな所から戻ってきたら、葵がなんか騎士っぽいのに絡まれてた。ナンパでも無いみたいだし、なんだろう。
騎士の一人がこっちに気付いて、なぜか敬礼してきた。
「はっ!葵様のパーティメンバー様でございますか!葵様を私に頂けませんか!」
「断る」
なんでこいつは親への決まり文句を言ってきやがるんだ。アホか。
「あ、違います、結婚という意味では無くてですね!彼女に宮廷魔術師として我々に着いてきて貰いたいのです!」
「ほう、なんでまた」
「葵様は優秀な回復魔導師と聞きました。宮廷では現在回復魔法が使える者がとても少ないのです」
「どっから聞いたよ?」
「葵様本人でございます」
あぁ~、困ってる人がいたら助ける的な勢いで話したのか?
「あっそ。んで、葵はどうなんだ?」
「え、ど、どうって?」
「やりたいかどうか、だよ。やりたいなら行けばいい。嫌なら断ってやれ。」
俺は自分の細胞やらなんやら動かして自己回復できるからどっちでもいいしな。自分しか出来ないのがあれだが。
「うーん······そうだね、ついていくことにするよ。」
「だってよ、騎士サマ。」
騎士がうおおおおっと歓声を上げる。だが一人なので大して盛り上がらない。
つーかこの手のイベントって大概後々大変な事になるよな。
(葵、何かあったらすぐ連絡しろよ。念話で)
(うん、わかった)
あらかじめ念話で注意をしておく。
「それでは空間魔法で移動しますがよろしいでしょうか」
「はい。祐君またね」
葵は最初からそこに居なかったかのように消えてしまった。空間魔法、便利だな。習得しようか。となると勉強だな。グリモアもいいが、たまには本を読みたい。
「ローラさん、この近くに図書館または本屋は無いか?」
「ギルドの2つ隣が本屋です。」
「ん、どうも」
そういえば識字率低いんだから本なんて結構高級なんじゃなかろうか。金貨100枚くらい取られたらどうしよう。
◆◆◆
うん、流石に金貨100枚は無かったよ。1冊銀貨50枚だったよ。それでも十分高いんだけどね。2冊しか魔法の本が無かった。『ロマン溢れる神級魔法』と『初~上級魔法図鑑』だ。両方買った。
良し、欲しい物は買ったし宿を取ろう。宿は·····あれか。文字が読めるってステキ。さっさと入りましょ。
受付には犬耳が生えた女の子がいた。中学生くらいだろうか。可愛い。
「どのくらい泊まりますか?」
「とりあえず一週間で。」
「一週間ですね!部屋は206号室です!鍵をどうぞ!」
「お、おう。名前とかはいいのか?」
「はい!部屋番号と顔を覚えれば良い訳ですし!あ、食事の時間などは部屋に置いてあるパンフレットを読んでください!」
相当記憶力が良いのだろうか。それとも、ちょっとアホの子なのだろうか。まあいい。とりあえず今は本を読もう。魔法が欲しい。
部屋は意外と大きかった。と言っても、ベッド以外に何も置いてないので、少し寂しい感じだ。俺はベッドに腰かけて本を読み始めた。
記憶などの処理を全てグリモアに任せて流し読みしていく。凄いな、どんどん頭に入ってくる。なんと、辞書くらいの厚さの本を2時間で読み終わってしまった。もう片方にも手をつける。こっちは少し薄かったので1時間半くらいで終わった。全て頭に入っている。
《スキル〈速読〉を取得しました》
おお、スキルだ。
俺は魔法の練習をするために町の外に出た。まずはロマンの神級魔法から。神級魔法はどうやら全てがユニーク魔法になるようだ。つまり、その人しか使えない魔法。そしてどうやら、人によっては複数使える、らしい。
習得の方法は簡単。MP、魔力の両方が10000を越えている状態で魔力を暴発させる。魔力暴発というのは、魔法を発動途中で止めるとまれに発生する小爆発で、暴発させた本人はダメージを受けない事からわざと暴発させ攻撃する、なんて人もいる。
よーし、やるぞー。まず、簡単な魔法をわざわざ魔方陣を使ってゆっくり詠唱、そして発動直前に魔方陣を割る! パリィィィン、と音が鳴り、魔方陣が割れる。でも爆発は起きなかった。まあ、まれにだし、気長に行こう。
~30分後~
パリィィィン、ボンッ
やっと暴発した、もう疲れたよパトラ○シュ。魔方陣割り過ぎて〈陣破壊〉なんてスキルも取得しちゃったよ!相手の魔方陣を破壊出来るっていうガチ性能だったから良いが。
《条件の達成を確認、これより神級魔法の取得を開始します。》
やっとこれで······なんか頭からキュルキュル音がするんだが、大丈夫か?大丈夫だな、痛みも無いし。
《脳内解析、完了。神級魔法、および対応スキルのインストール、開始。·······完了。神級魔法、取得しました。ステータスに情報を書き込みます。》
おい、インストールとか俺の頭はパソコンじゃねぇんだから。物騒だな、バグでも起きたらどうする。いやまあ、どうでもいいんだけどさ。
《魔法〈大罪魔法〉、スキル〈憤怒〉〈嫉妬〉〈強欲〉〈色欲〉〈怠惰〉〈暴食〉〈傲慢〉〈断罪〉取得しました》
うわ、なんか相当罪深そうなモン手に入れちゃったよ。とりあえず全部説明を見よう。
〈大罪魔法〉
神級魔法。取得するだけで対応したスキルが手に入る。
対応した悪魔、堕天使および神獣に変身することができる。
憤怒・サタン、ユニコーン
嫉妬・レヴィアタン、マーメイド
強欲・マモン、ゴブリン
色欲・アスモデウス、サキュバス
怠惰・ベルフェゴール、フェニックス
暴食・ベルゼブブ、ケルベロス
傲慢・ルシファー、グリフォン
これらの名がついた魔物にダメージ補正が入る。
〈憤怒〉
怒りによりステータスに補正が掛かる。怒れば怒るほど効果は上がる。
状態異常〈狂化〉にかからなくなる。
〈嫉妬〉
戦闘中に敵のスキルを一部使える様になる。
状態異常〈沈黙〉にかからなくなる。
〈強欲〉
敵のアイテムドロップ量を1.5~2倍にする。
状態異常〈盲目〉にかからなくなる。
〈色欲〉
異性に好まれやすくなる。ON、OFF変更可能。
状態異常〈魅了〉にかからなくなる。
〈怠惰〉
戦闘中、敵のステータスにマイナス補正。
状態異常〈混乱〉にかからなくなる。
〈暴食〉
あらゆる物が喰えるようになる。喰った物に擬態、変身できる。腹を壊さなくなる。
状態異常〈衰弱〉にかからなくなる。
〈傲慢〉
先制攻撃をしなかった場合、戦闘中ステータスに1.5倍補正。
状態異常〈麻痺〉にかからなくなる。
〈断罪〉
一度でも罪を犯した者に対し、2.5倍のダメージ補正。
人助けをするとステータスが上昇する。
なんだこれ。すっごいチートやないかい。特に大罪魔法と暴食がやばいな。魔物になれるのか。いや、それより俺は色欲が気になる。異性に好まれやすくなる?魅了とは違うのか?どうなの、グリモア。
【はい、魅了とは違い、あくまで気持ちが傾きやすくなるだけなので、嫌われる時は嫌われますし、好かれる時は好かれます。強制力はありません。】
へぇ、魅了みたいに強制的にだったらOFFにしようと思ってたが、これならONでいいかな。別にデメリットも無いし。モ、モテたいなんて思ってないんだから!
現在のスキル、魔法一覧
《スキル》
〈取得経験値上昇〉〈アイテムドロップ率上昇〉〈成長速度上昇〉〈Lv補正〉〈強奪〉〈偽装〉〈剣術Lv3〉〈槍術Lv1〉〈魔力操作〉〈無詠唱〉〈火炎放射〉〈熱探知〉〈鑑定〉〈解体〉〈魔法効率強化〉〈速読〉〈陣破壊〉〈憤怒〉〈嫉妬〉〈強欲〉〈色欲〉〈怠惰〉〈暴食〉〈傲慢〉〈断罪〉
《魔法》
〈全初級魔法〉〈操作術〉〈大罪魔法〉