2 魔法極めた(使用回数1)
さて、城から出たは良いが、この後どうしよう。地図も無いし、武器も無い。
というかこの城、城下町無ぇのかよ。すぐ平原だよ。
「ごめんね?勝手に着いてきて。迷惑だった?」
「いや、そんなこと無いよ。むしろありがたいかな。」
嘘は言っていない。旅に話せる仲間がいると少しは安定するだろう。
それに奥山は割と可愛い。
「えへへ、ありがと。それで、これからどうするの?」
「うーん、魔法とかスキルの使い方を知っておいた方がいいかも。」
「そうだね、練習してみよっか。」
魔法のテンプレを二つほど試してみよう。
まずひとつめ。使いたい魔法をイメージする。
手から火が出てるイメージ······出ろー、出ろー。
·····出ない。
二つ目。手に魔力を集める。
手に力を集めるイメージで····イメージばっかやな。まあええわ。
集めるー、集めるー。あ、手が少し光ってる。これで正解か
《スキル〈魔力操作〉を取得しました》
無機質な声が頭に響く。なるほど、まさにテンプレだな。
この状態で火を出すイメージをしてみる。
ボッ、という音をたてて火の玉が発生した。ゴルフボールくらいの大きさだが、俺は初めての魔法に感動していた。
《スキル〈無詠唱〉を取得しました》
なるほど、普通は詠唱が必要みたいだな。これは良いスキルをゲットできた。
「おおぉー!祐君凄い!私にも教えて!」
奥山が目をキラッキラに輝かせている。無詠唱もあれば便利だし、教えよう。
「えっとね、まず────」
奥山が無詠唱を取得するまでに30分かかった。
◆◆◆
「よし、奥山が俺を信頼してくれてる事はわかったから、ここで秘密を暴露しよう。」
「秘密を暴露するくらい信用してくれてるなら、名前で呼んでくれても良いんじゃない?」
「まあ考えとこう。それで、俺今までステータス偽装してたんだよ。スキルで。」
「え、なんで?そんだけ強いステータスなの?それとも逆?」
「前者だ。ほれ」
俺は奥山·····じゃない、葵に自分のステータスを見せる。ステータスは見せたくなければ自分以外に不可視にできるから便利だ。
「·····うわぁ······何で加護とか貰ってんの祐君······」
「まあ気にすんな。んで、強奪の効果もあるしパーティ組もう」
「強奪?なになに~?······エグいね、こりゃ。うん、組もう」
そう言うと、手の甲に魔方陣が浮かんできた。葵も出たみたいだから、どうやらこれがパーティの証みたいなものらしい。わかりやすいね。
「ところでさ、魔法にある〈操作術〉ってなに?」
〈操作術〉
あらゆる物体を操れる魔法。
魔力の上昇によって同時操作が可能な量も増える。現在は一つ。
操る前に何かモーションを起こせば威力が上昇する。
〈錬金術〉の上位互換。
「·····だそうだ。」
「なにそれ、超強いじゃん。あ、あそこにいるの敵じゃない?」
「あ、本当だ。ゴブリンっぽいし練習でもするか」
俺は魔法を使おうとするが、モーションというものに疑問を持った。
なんだ、厨二ちっくなポーズでもとらなきゃだめなのか?いや、そんな事は無いはず。
そう思って俺は、靴のズレを直すようにつま先で地面を二回トントンと叩いた。すると、地面が隆起し、ゴブリンっぽい奴に向かって伸びていく。凄い速度で。そして、先が尖ったかと思ったら、ゴブリンを一瞬で貫いた。
「·····強いな。これで移動とかしたら凄そうだ。地面動かして。」
「かなり強いね。MP消費はどうなの?」
「発動に一回。あとは好きに動かせる。」
そこまで説明した所で、頭にまたあの無機質な声が響いた。
《レベルが上がりました。恩恵〈全知書〉を取得しました》
「あ、レベル上がった。」
「え、早くない?まだゴブリン一匹だよ?」
「いや、俺スキルの影響で実質4倍の早さでレベル上がるから」
「えぇ~、ずるい~」
いざ考えてみるとぶっ壊れだな。ところでこのグリモアってなんだ?
〈全知書〉
疑問に思った事を全て即座に理解する事ができる。
会話する事もできる。
うっわぁやべぇな。まさかレベルアップ毎にこんなスキルゲットするんじゃなかろうな。
つーかスキルがこんなんなら、能力値はどうなってんだ?
ユウ・ヤマザキ
Lv2
HP 1270/1270
MP 1040/1040
攻撃力 1150
守備力 1300
敏捷性 1260
魔力 1530
技術 1460
「はぁ!?」
「えっ、何なに?どうしたの?」
「ステータスが頭イカれてる······」
「えっちょ!見せて!····うわぁ·····あれ?そういえば〈操作術〉って魔力が影響するとか書いてなかった?大変な事になってそうじゃない?」
〈操作術・極〉
操作術を極めた。同時にいくつでも物質を操れる。
魔力、Lv、モーションによって威力補正が付く。
「極めてる·····ちょっと奥山、じゃなかった葵?操作術極めてたんだけど俺。」
「·····もう驚き疲れたかな」