1 召喚されたら死んだ
新しいイメージが沸いたので書いてしまいました。
今、教室にいるのはたったの7人。女4に男2、それと男教師。インフルエンザでも流行っているのだろうか。だが、そんなことはどうでもいい。俺には友人が居ないから。
今日も一人で読書に浸る。授業中だろうが関係ない。俺は読書がしたいんだ。
─────教室の床が光っている。
なんだこれは?本読んでるうちに寝ちまったのか?頬をつねって······痛い。夢じゃない。
7人しかいない教室が騒然としている。うるさい。こんな時は本を読もう。うん。
だが次の瞬間には、自分の目を疑った。教室の人間が順番に消えていくのだ。
最後に残ったのは俺。俺も消されるのか? そう思った瞬間。
───俺の体は八つ裂きにされていた。
◆◆◆
······痛ってぇ。全身が痛ぇ。つか、ここどこだよ。知らんぞ、こんな天井。
小説とかでよくある神様の部屋、か?死に方がおかしいぞ。なんだよあれ。
「残念!君は死んでしまいました!」
隣から急に声がかかった。見ると、そこには10歳くらいの子供がいた。男かよ、クソッ。 いや、ロリコンじゃないですよ?
「でもね、死因が『異世界転移の失敗』なんだよ。召喚者側の失敗だし?可哀想かなーって思って、チートをあげて生き返らせることにしました!喜べ!」
つまり死因ただのミスか·····なんか嫌だな。つかなんでこいつ偉そうなんだ?
「じゃあ質問! 1.最初からチート 2.成長するチート 3.いらない さあどれか選べ!あ、因みに3選んだら異世界に行かせません!残念!」
俺は声を出せないから指で「2」を選択した。
最初からなのは面白くない。
「2ね!オッケーオッケー。今から行くのは剣と魔法、ステータスがある世界だ!どう?科学に溢れた世界よりワクワクするだろ?それじゃ、さっきの6人と一緒のタイミングで世界に入れるからね!」
って事は安全な場所って事か?テンプレではそうなんだが。
「あ、因みに転移先ではまだ君血塗れだから、すぐ治してもらってね!
それじゃ、転送!」
ふざけるな、治せよ!ここで!
あれ、何か····意識が遠く········
◆◆◆
·····空が見える。どうやら外に転移してきたようだ。ちゃんと他の6人、あと召喚者らしき女性もいる。
他の奴等は無傷。俺は血塗れ。
「貴方達は勇者として·····きゃあっ!ど、どうして血塗れの人が!?あああああ·····どどどどうしよう!?」
「痛って·····とりあえず治してくれないですかね······」
あ、声が出るようになってる。つかこいつ聖職者だろ。治せよ。
「そそっ、そうですね!《ハイ・ヒール》!」
おお、傷が治ってる····魔法ってすげー。まあこの傷を作る原因になったのも魔法なんだろうが。
「それで、ど、どうして血塗れだったんですか!?」
「魔法構築の式になんか問題あったんじゃねーの?」
言ってみたは良いものの、まず魔法構築とかあるんだろうか。なかったらどうしよう。
「え、えっと····ああっ!式が一節抜けてる!すみませんすみません!こちらのミスです!うぅ····」
「あーあー、泣かないで。大丈夫だから、生きてるから。それで、俺らは何をすればいいの?」
泣き出してしまった。ああ面倒くさい。おら、あくしろや。
「ぐすっ、すみません。ええと、貴方達は勇者としてこの世界に召喚されました。今から王様に会って貰います。くれぐれも粗相の無いようにお願いします。では、行きましょう」
聖職者っぽい女が歩き出すと、呆然としていた6人もハッとして歩き出した。大きな城の中に入る。
歩いている途中、女子生徒が話しかけてきた。
「ねぇねぇ祐くん、なんであんなにすらすら対応できたの?こんな状況で」
「小説ではよくある展開だからだよ。」
今更だが俺の名前は山崎祐。普通の高校生だ。
今話しかけてきた女子は奥山葵。俺を唯一名前で呼ぶ奴だ。
「この扉の先が王の間です。」
扉の先は、もはや別世界だった。
赤いカーペット、宝石などの装飾、ミスリルと思われるシャンデリア。
「そなたらが勇者として召喚された者達だな。」
王様は筋肉隆々のおっさんだった。
····もうお前が魔王倒せよ。
「そなた達には魔王を倒してもらう。『ステータスオープン』と念じてみよ」
言われた通りにステータスオープンと念じる。すると、システムウィンドウらしきものが出てきた。
ユウ・ヤマザキ
HP 100/100
MP 70/70
攻撃力 100
守備力 100
敏捷性 100
魔力 100
技術 100
《魔法》
〈全初級魔法〉〈操作術〉
《スキル》
〈取得経験値上昇〉〈アイテムドロップ率上昇〉〈成長速度上昇〉〈Lv補正〉〈強奪〉〈偽装〉〈剣術Lv3〉
〈槍術Lv1〉
《恩恵》
〈全言語理解〉〈アイテムボックス〉〈命神の加護〉
····なんだこれ。スキルがおかしいぞ。神の力ってすげー!
っていうかこれ、説明が欲しい。触ったら出てきたりするかな。
〈取得経験値上昇〉
魔物を倒した時に得る経験値が2倍になる。
おっ、マジで出てきた。他の説明は····
〈アイテムドロップ率上昇〉
魔物がアイテムを落とす確率が2倍になる。
〈成長速度上昇〉
スキルレベルなどの必要経験値が減る。
〈Lv補正〉
運や確率に補正が掛かる。
〈強奪〉
殺した相手のステータスを奪う。魔物以外も可。
パーティを組んでいる場合、味方一人にもステータスが分け与えられる。
複数パーティの場合、ランダムで一人が選ばれる。
〈偽装〉
ステータス画面を偽装できる。
····いや、俺は確かに成長チートを選んだ。だがな、これはやり過ぎだ。
こりゃ偽装が無いとやってらんないな。
「祐くん、どう?強い?」
「奥山はどうなんだ?」
俺は奥山のを見せてもらった。
能力値は俺と同じ、スキルは杖術Lv2、魔法は回復だった。
俺はスキルを剣術、槍術以外消して、あと恩恵は加護とやらを消して奥山に見せた。
「おぉ~!強いじゃん!」
そんな事を話していると、王様が手を二回鳴らした。
「そなたらには暫くこの城で訓練してもらおうと思っているのだが·····それを受けない奴はおるか?」
俺はピシッと真上に手を上げた。王様が驚いた表情をしている。
「ふむ····訓練したほうが死ぬ確率は下がるぞ?良いのか?」
「はい、私はもともと格闘技を習っておりましたので。少しは大丈夫でしょう。」
勿論嘘だ。城で訓練なんて洗脳フラグでしかない。さっさとずらかろう。
「ふむ、良いだろう。金貨1枚を渡しておく。これで3ヶ月は生活できるだろう。健闘を祈る」
「ありがとうございます。」
王様から金貨1枚を受け取り、俺は部屋を後にしようとする。
すると、後ろから声がかかった。
「待って祐くん!私も行く!」
「え、何でまた。今まで対して話したことも無いような関係だろ?」
「祐くんについて行った方が安全な気がする!」
奥山が引き止めてきた。こんな状況だからなのか、妙に積極的に話しかけてくるな。
王様も驚いていたが、しっかり許可してくれた。
部屋を出ようとした時に、ふと浮かんだ事を王様に言っておく。
「王様、私達はとても平和な世界から来ております。なので、魔物だろうと命を奪う事に抵抗を持つでしょう。それをお忘れ無きよう。」
「うむ、感謝する。」
俺たち二人は王城を後にした。