5-2話 私、出ます。
なんだか、凄く更新が遅れてしました。申し訳ありません。
そういえば、今日は先週に比べると涼しかったですね。半袖ということもあって、涼しいを通り越して寒かったです。
人間が3人に精霊が3人?で良いのかしら。中々面白い状況ね。可笑しいって意味じゃないからね。interestingな方ね。
「――ていうか!」
つい声が出てしまった。
男の子の方がビクッとして、相変わらずのデカイ声で言う。
「うお、驚くじゃないか。な、何なんだよ?」
お前の声の方が驚くっつーの、と突っ込みたいがここは我慢我慢。
「ああ、ごめんごめん。いや、君たちも魔法使いなの?」
魔法使いって結構小さい頃からなるものなのかな。この子達はいつ頃から魔法使いなんだろう。
「お、おう、そうだけど……ていうか、お前もかよ!」
「それ、今、私が言ったこと!つーか、さっきまでの会話で分かりなさいよ。」
愛梨沙は君たち"も"と言ったことに何で気が付かないかなぁ、と思った。そのくらいは読解力があっても良いんじゃないの?それとも、それって、ただの我がまま?
男の子は頭を掻いて、へへっと笑う。
「はは、すまんすまん。つい……な?」
「はいはい。」
呆れた。いや、それは言いすぎか。でも、もう少し考えてよ。あんまり考えすぎで、突拍子も無いこと言われるのも嫌だけど……折角、そこに重い頭乗っけてるんだから少しは使って欲しいな。
「兄さんはいつもこんな感じなんですよ。」
女の子がフォローを入れた。愛梨沙の様子から察したのだろう。
「へえ、そんなんだ。」
この子たち、兄妹だったんだ。まあ、そんな気はしてたけど。
じゃあ、兄妹揃って魔法使いってことなんだね。魔法使いの兄妹が……ちょっと羨ましいな。私、兄弟いないから。
兄の方がが口を開く。
「魔法使い……」
兄はそう呟いてから言った。
「珍しいな。お前、名前は?」
随分と失礼な聞き方ね。気にしないから良いけど。
「シーナ――シーナ‐ロレンソだけど?」
一応フルネームで言っておいた。
「ロレンソ、ロレンソ……ああ、あのフィリップさんの子供か?」
「何で、父さんのこと知ってるのよ……」
「そりゃ、知ってるさ。偶に俺の家に来てるしな。それに、カンピエナの領主の名前を知らねぇ奴がいるかよ。」
ああ、もう、このガキ。この口の利き様は後でどうにかしてやりたいわね。
ガキだし仕様が無いのかな。でも、さすがにこの口の利き方は……偶にこいつん家に父さんが行ってるみたいだし、注意するように言っておこうかな。だって、父さんの知り合いってことは、これからも会うことになりそうだしね。その度にこれじゃたまったものじゃないわ。
……って、私、まだこいつと妹ちゃんの名前知らないじゃない!これじゃ、言いつけようもないわね。それに私だけ自己紹介するのもフェアじゃない気がするわ。
「あなた達は何ていうの?」
そんな気を悟られないよう、愛梨沙はできるだけ普通に言った。悟られたところで問題は無い気がしていたが、悟れないようにする方が面白そうだった。一種のゲーム感覚だ。
兄はぶっきらぼうに言う。
「フィリップのやつから聞いてないのかよ。」
「兄さん、その言い方はどうかと思います。」
妹の方が冷静に注意した。あら、できた妹ちゃんね。こいつを反面教師にしてるのかしらね。
「ふん。」
ああ、本当、兄の方は面倒くさいガキねぇ。このくらいの子供ってこんなもんなのかしら。
「兄さんがテオドリック‐ロマーナ、私が同じくエリアナですよ。ああ、それで、この子がリサで、この子がリリーです。——」
エリアナがリサと言ったとき、さっきの竜がお辞儀をした。リリーと呼ばれた精霊は恥ずかしそうにテオドリックの陰に隠れてしまった。
「——多分、これからか何度か会うことになるでしょうから……よろしくお願いしますね。」
エリアナがペコリと頭を下げた。
エリアナが頭を上げたら、白っぽい栗色の髪が翻った。綺麗な髪ね、なんて思う愛梨沙の感情は、空気を一切読まないテオドリックの発言によって打ち砕かれた。
「何でこれから何度も会うんだ?」
「ああ、もう——」
——鈍いやつね、と口には出さないが付け加えた。ちっ、と舌打ちもしたかったが、さすがに大人気ないなと思う。
「ん?」
テオドリックの方は何のことかさっぱり、という感じである。
「ああ、もうっ、何でも無いわよ!」
説明が面倒臭くなってしまった。こういうバカに頑張って教えたところで、何のメリットも無いじゃないの、と思ってしまうのであった。
「何で怒ってるんだ?」
愛梨沙の心情などテオドリックが読めるはずもなかった。
こいつ、どんだけ鈍感なのよ。でも、父さんの知り合いらしいし、これからかもそれなりに接点があるんでしょうね。まあ、ほら、清々しいほどのバカって、むしろ、場が和むし良いんじゃないかしら。
そして、そんな愛梨沙とテオドリックのやり取りの間、エリアナはじとーっと兄を見つめていた。
「はぁ……兄さんは——」
エリアナはため息まじりに切り出した。
「——今日、何しに来たか忘れたんですか?」
「エリアナ、お前、俺のことどれだけバカだと思ってるんだ?」
「そりゃまあ、兄さんですからねぇ。」
エリアナは少し意地悪く笑う。愛梨沙は終始ニヤニヤと二人を見ていた。
仲が良い兄妹だね。私なんて、一人っ子だからそういうのと縁が無いんだよね。兄がバカなのはどうかと思うけど、まあ、それもそれで良いんじゃないのかな。当人達は置いといて、周りからすれば和むのよね。
エリアナがムッと愛梨沙を見る。
「何か?」
ニヤつく愛梨沙にムスッと言った。
「んーん、何でもないわ。仲、良いなって。」
「そんなこ――」
「だろ?」
エリアナをテオドリックがかき消した。
「兄さん……」
「何だ?」
「はあ……もう……」
エリアナは呆れたように言った。
そうだ。話が途中だったわね。
「で、何しにきてたの?」
「魔法の練習ですよ。大掛かりなのは、村に被害が出そうなので。」
村に被害が出そう。そんなのがあるの?
「そんな魔法、あるの?ハルトは教えてくれてないんだけど。」
すると、ハルトが言った。
「愛梨沙にそういうのを教えると、どう使うか分かったものじゃない。」
「あら、随分と信用されてないのね。」
ツンと言ってみた。
「当たり前だ。君はそういう魔法も、後先考えずにどんどん使ってしまうようなのは、会って数日で分かった。」
「ふーん。」
あからさまに不満気に言った。
後先考えずに……ね。まあ、そう言われちゃそうかもしれないけど……でも、なんか納得いかない。確かに、心当たりは十二分にあるわよ。ハルトの召喚自体、そんなもんだし。
竜がエリアナの周りを飛びながら言う。
「エリアナ、見せてあげたら?」
「そうですね。」
え、何?見せてくれるの?
私は多分、期待に目を輝かせていたと思う。生憎、鏡が無かったから確認はできないけど。
それから、エリアナは愛梨沙から10メートルほど離れた場所に立った。
「いきます。」
エリアナは言う。愛梨沙はそれに無言で頷き返した。
なぜか、自分のことのように、自信満々な顔で腕を組むテオドリックが隣にいた。気にしないことにした。
一瞬、辺りが静まり返ったように感じた。嵐の前の何とやらだ。
ピタリと風が止む。気持ち悪いくらいにタイミングが良い。
日に雲がかかった。一瞬、土砂降りにでもなるのかと思った。
その後、風が再び徐々に吹き始める。草がさわさわと鳴った。
日が再び顔を出す。愛梨沙は一瞬、目をつむった。
その次の瞬間だった。目の前が猛烈に光り輝いた。
「うわっ。」
思わず、手で目を覆う。
これ、最初に言っておきなさいよ。私の光魔法を超えられて癪だし、文句の一つくらい良いわよね。
愛梨沙は目を開けた。
一瞬、自分の目を疑った。白、白、白、白、白、白――眩しいくらいに白い。ああ、真っ白っていうやつなんだな。愛梨沙は残像かとも思ったのだが、それはすぐに否定された。しっかりとカラーでエリアナとリサが見えたからだ。
「どうだ、凄いだろ。」
横でテオドリックの声がした。聞こえてはいたが、この感動をそんなもののために壊したくはない。だから、愛梨沙はテオドリックを無視した。
胸の前で、手をパンと合わせる。
「凄い!」
愛梨沙は言った。お世辞でも、皮肉でもない。純粋な感動であった。
エリアナは愛梨沙の元に駆け寄ってきて
「氷系の魔法なんです。リサが森で魔物に襲われたときにって教えてくれたんです。」
と言った。
「氷なんだ……ハルト、私にもできるかしら?」
「無理だろうな。」
ハルトは即答した。
「何でよ。」
「愛梨沙のマナじゃ少なすぎる。」
「ええー。」
「まあ、諦めるんだな。」
「はいはい。」
愛梨沙は頬を膨らませた。
エリアナがクスッと笑う。
「何よ?」
愛梨沙はそれにムスッと言う。
「面白い人ですね。」
「どういう意味よ。」
「言葉のままですよ。それより、リサ、今日はどうでしたか?」
あ、話を逸らしたな。面白い人って……Interestingな人ってなんなのよ。Funnyな方だったら容赦しないわよ。
それにしても、こういうところは兄妹ね。なんというか、我が道を行くというか、天然というかって感じ。周りに流されないっていうのかしらね。おそらく”面白い人”発言のことはとうに忘れているであろうエリアナを見て、愛梨沙は思った。エリアナはリサからアドバイスを受けていた。




