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HUMANOID  作者: 青草 光
第Ⅱ章 追手との戦い編
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第7話 ジャイロスフィア

「これが、親父からオレへのプレゼント・・・!?」

父の残した日記の最後のページを読み、困惑するキッド。

「この手袋みたいなのと二つの玉が・・・『おもちゃとは呼べない程危険』・・・!?『危険』ってどういうことだ・・・?」

キッドは箱の中身の手袋と玉を取り出して観察したが、どうやって使うのか全く見当がつかなかった。

しかし、よく見ると箱の底に説明書があることに気付いた。

「説明書!?これを読めば・・・!」

急いで説明書を読むキッド。隣ではフロラが声をあげて泣いている。

「うわああん・・・!ジェットぉ・・!」


ちょうど部屋の正面を通りかかっていた双子がその声に気付いた。

「兄さん!今この部屋から声がしたよ!!ここにいるよ!!」

「オレも聞こえたぜ!間違いねぇな!ここだ!」

双子がニヤリと笑みを浮かべた。

ドクはおもむろに扉の取っ手を掴み開けようとしたが、カギがかかっていた。

「チッ、カギがかかってやがる。無理やりぶち開けるしかねぇなぁ!」

双子は扉から距離を取り、勢いよく助走をつけて体当たりでこじ開けようとした。

二回、三回と体当たりを繰り返し、扉が徐々にミシミシと壊れていく。

「ほぅらぁ!これで終わりだぁ!!」

扉をぶち破ろうとして最後の体当たりを繰り出した、その時だった。

体が扉に当たるよりも先に、部屋の中からとてつもない勢いで何か硬いものが扉を破壊しながら飛んできた。

『硬い何か』は双子の腹に一発づつ命中し、廊下の壁まで吹き飛ばした。

「ごほぉえっっ・・・!!」

床にのたうち回る双子は何が起こったのか全く理解できなかった。

「ごほっごほっ・・!なんだ、何が起こった・・・?」

防弾チョッキのおかげで何とか致命傷を免れた双子は起き上がると、そばにテニスボール程の大きさの鉄球が落ちていることに気付いた。

「こ、これが飛んできたのか?ガキが投げたのか?」

ドクが鉄球を拾おうとしたその瞬間、鉄球が独りでに動き、まるでビデオの巻き戻しのように飛んできた部屋の中へと戻っていった。

「何だ!?」

鉄球が戻っていった部屋の中を見ると、そこにはキッドが立っていた。後ろにはキッドにしがみつくようにしてフロラが立っている。

キッドは両手をこちらに向けており、その両手には父親からのプレゼントである手袋が装着されている。その手に吸い寄せられるように鉄球が戻っていく。

二人の姿を見た双子は怒りを露わにした。

「ガ、ガキィ!!見つけたぞ!よくもやってくれたなぁ!鉄球投げるなんて、やってくれんじゃねぇか!!」

「『投げた』わけじゃねぇ。」

キッドは双子を目の前にしても冷静に堂々と立っている。

「『投げたわけじゃない』だとぉ!?何わけわかんねぇこと言ってんだ!独りでに飛んできたってのかぁ!」

「そうだ。」

キッドがボソッと返事をした。

「ああもうどうだっていい!ぶっ殺す!」

わけがわからないことが続いて怒りが高ぶった双子は電気を帯びた棒を取り出し、部屋の中のキッドめがけて突撃した。

キッドの服を掴んでいるフロラの手に力が入る。

「キ、キッド!来るよ!」

「大丈夫だ!『こいつ』があれば・・!」

キッドは鉄球をいったんポケットにしまい、手袋を装着している両手を相手に向けた。

「死ねぇぇぇ!!」

双子がまるで鏡のように同じ動きでキッドめがけて棒を振り下ろした。

その瞬間、キッドは手袋の手首の部分にあるスイッチを押した。

すると、双子が手に握っていた棒だけがその場でピタリと動きを止め、手からすり抜けた。

「うわっ・・!!」

まるで縫い付けられたかのように急に動きを止めた棒が手からすり抜け、双子は腕だけを思いきり振り下ろし、その勢いで体制を崩して転んだ。

「フロラ行くぞ!」

キッドは双子の隙をついてフロラを引っ張って部屋から飛び出した。

棒はカランカランと音を立てて床に落ちた。

「くそっ、何が起こったんだ!?」

双子が急いで起き上がり、キッドたちを追って廊下へ引き返した。

キッドとフロラは再びこちらを向いて立ち止まっていた。

「てめぇ今何しやがった!」

怒りの双子がキッドに向かって吠える。

双子とは対照的に冷静なキッドが口を開いた。

「この武器の力だよ。」

「あ!?武器だと!?」

双子はキッドが先程までは身に着けていなかったはずの手袋を装着していることに気付いて驚いた。

「この手袋は『磁力』を発生させる武器だ。最初にお前らに喰らわせた鉄球は、磁力を反発させた力で飛ばしたものだ。今はお前らの電気の棒を磁力で反発させたから、オレに向かって振り下ろせなくなったんだ。」

双子はキッドの話を聞いてはいたが、怒りのあまり理解しようとする気は無かった。

ガクが再び電気の棒を構え、バチバチと音を立てる。

「磁力だぁ!?そんなもんでオレら双子を倒そうってのかぁ。いい度胸だ。要はこいつを手離さないようにしっかり握ってれば済む話だろ?さっきのオレンジのガキみてぇに黒コゲにしてやるよぉ!」

ガクの『黒コゲ』という言葉を聞いたキッドとフロラは愕然とした。

「「えっ・・。」」

なるべく考えないようにしていたジェットの安否を決定づけるような発言に、キッドたちのかすかな希望が打ち砕かれた。

「そんな・・、やっぱりジェットは・・・。」

「う・・うわあああん!ジェットー!!」

落胆するキッドとフロラ。



「誰が黒コゲだって?」



「えっ・・!?」

その場にいた全員の動きが止まった。

見ると、双子の数メートル後方にジェットが立っていた。

「ジ、ジェット・・・!?ジェットー!!」

フロラが歓喜をあげた。顔は喜びに満ち、目からは涙を流している。

「ほ、ほ、ほら!や、やっぱりオレの言った通りジェットは無事だっただろ!?オレは心配なんてしてなかったからな!」

キッドが安堵に満ちた表情で強がりながらフロラに言った。

二人の言葉を聞いたジェットは思わず怒鳴った。

「おい!お前らまさかオレが死んだと思ってたんじゃねぇだろうな!こんな奴らにやられるオレじゃねぇよ!!」

ジェットは怒鳴りつつも、二人の無事を確認して安心していた。

すると、ジェットは表情を一変させ、怒りの形相で目の前の双子をにらみつけた。

「おい双子!お前らを探すためにこのクソでかい屋敷を片っ端から走り回る羽目になったじゃねぇか!中庭も走ったんだぞ!どうなるかわかってんだろうなぁ!!?」

予期せぬ罪を着せられた双子は思わず言い返した。

「なっ・・!?それは関係無いだろがぁ!こいつ・・今度こそ始末してやらぁ!!」

双子が二人同時にジェットに突進していった。

「ジェット伏せろ!」

キッドが慌てて両手を双子の方に向けた。

「兄さん来るよ!」

キッドの声に警戒してガクが注意を促した。

「磁力がどうした!離さないようにしっかり握って振り下ろせ!」

そう叫び、電気の棒を振り下ろそうとした、その時、キッドが腕を交差させた。

すると、キッドの手の動きに引っ張られるように双子が握っていた電気の棒も交差し、お互いの体に接触した。

まぶしい光を放ちながら、激しい電流が音を立てて双子の体に流れる。

「ぎあああああああああ!!!!!」

ジェットの目の前で双子が同士討ちになった。

「お・・・ほ・・・。」

先程のジェットと同じように双子がその場に膝をついた。口からは煙が出ている。

ジェットはなぜこうなったかわからず驚いていた。

「ごほっ・・!くそが・・!殺す・・・!」

双子が再び立ち上がり、ジェットに掴みかかろうとした。

双子の着ている防弾チョッキが電流でズタボロになっていることをジェットは見逃さなかった。

「フロラ!左を頼む!」

「わかった!」

ジェットの合図でフロラが右腕を構えた。

「ジェットハンマァァ!!」

「ロケットフィスト!!」

ジェットとフロラの右ストレートがそれぞれ双子に炸裂した。

「ごあああああ!!!」

双子がそれぞれ廊下の端まで勢いよく吹き飛び、床に倒れて気絶した。

ジェットは双子が気絶したことを確認すると、ほっと一息ついた。

「ジェットー!!」

「うわっ・・!」

フロラがジェットに飛びついた。目には涙を浮かべていた。

「う・・ジェットぉ・・・。無事で良かった・・・。」

「ありがとう、フロラ。キッドを守ってくれたんだな。心配かけてごめんな。」

ジェットはフロラの頭をぽんぽんと叩いた。

「何とか終わったな・・。」

キッドもゆっくりとジェットの元に歩いてきた。顔には疲労感が漂っている。

「さっき双子が自滅したように見えたんだが、あれはキッドの仕業だったのか?」

ジェットが気になっていたことを尋ねると、キッドは両手を見せた。

「親父が力をくれたんだ。親父の机の中から見つけた。」

ジェットはキッドの両手の武器をまじまじと眺めた。

「そうだったのか。助かったぜ。ありがとな。」

「へっ、まあオレが本気出せばちょろいもんよ。」

「なに調子こいてんだよ!」

敵を倒し、二人が安心してふざけているのをフロラは笑顔で見ていた。

すると突然キッドが叫んだ。

「あ!そうだ!倉庫に閉じ込められたみんなを助けねぇと!」




カギを開けた倉庫の中から使用人が続々と出てきた。

「みんな、大丈夫か!?」

キッドが心配して声をかける。

出てきた使用人たちは自分たちが解放された喜びもそこそこに、すぐにキッドの無事を確かめた。

「坊ちゃま!ご無事で何より・・・!まあ、腕をお怪我なされて・・・!すぐに手当てをしないと!」

使用人たちはキッドの無事に一安心すると、腕の怪我に気付いてすぐに救急箱を取りに行った。

一方、後ろでは気絶してロープで拘束されたドクとガクを見て、使用人たちが驚いていた。

その様子を横で見ていたジェットとフロラに使用人たちが声をかけた。

「あなた方が坊ちゃまをお守りし、侵入者を退治してくださったのですね・・・。本当にありがとうございます。さあ、あなた方も怪我の手当てをしなくては・・・。」

お礼を言われたジェットとフロラが照れくさくなり、顔を赤らめた。

「あ、いや・・・、オレたちだけじゃなくて、キッドも一緒に戦ったよ。あいつがいなかったらダメだったかもな。」

「まあ・・!そうだったのですね。坊ちゃまもたくましくなられて・・。本当にありがとうございました。」

そういうと、使用人たちは別の部屋へと走っていった。

感謝されたジェットはニコッと笑って、フロラに声をかけた。

「ありがとうって言われるのも、いいもんだな。」

「そうだね。すごくうれしかった。みんな無事で良かった・・・。」

フロラもニコッと笑って一安心した。

すると、使用人が全員無事なのを確認したキッドがやってきた。

キッドは照れくさそうにジェットとフロラを見た。

「あ・・その・・・、ありがとうな。みんなを守ってくれて。」

ジェットは少し真剣な表情になった。

「お礼言われるようなことはしてねぇよ。むしろ・・・、すまなかった。屋敷の人たちを巻き込んじまって。オレたちがここに来なけりゃこんな騒ぎにはならなかったはずだ・・・。」

ジェットの言葉を聞き、フロラも申し訳なさそうにして下を向いた。

二人の様子を見たキッドは真剣な表情で答えた。

「そんなことねぇよ。LMCの真実や親父の日記を知ることができたんだから、オレは感謝してる。LMCの真実は世の中の人みんなが知らないといけないことだと思ったよ。二人は間違ってなんかない。」

キッドのその言葉に、ジェットとフロラは救われたような気がした。

その時だった。

「LMCの真実ねぇ・・。」

「えっ!?」

慌てて振り返ると、ドクが目を覚ましていた。

「お前、目が覚めたのか。」

三人の表情がきつくなった。

武器を奪われ、ロープで身動きできないドクは不気味に笑っている。

「お前らが何を考えてるのか知らねぇが、LMCの真実なんて世の中に伝わりはしねぇよ。LMCの巨大な力の前では何もかもがねじ伏せられるのさ。」

「やられた奴がよく言うぜ。」

ジェットが吐き捨てるように言ったが、ドクは不気味な表情を崩さなかった。

「オレを倒したくらいでLMCを分かった気になってんじゃねぇ。お前らなんか『LMC十二武将』の前では手も足も出ないだろうよ。」

「『LMC十二武将』・・?何だそれは?」

「LMCの裏の仕事を任される12人の戦士たちだ。オレたちみたいな下っ端よりもずっと強い奴らだ。ディゴスやオレがやられたとなると、次はそいつらが動き出すだろう。まあ、せいぜい頑張るんだな。」

そう言いながらドクは満面の笑みを浮かべていた。

ジェットはその顔を見下しながら、腕を組み堂々としていた。

「ふーん・・。どんな奴だろうとぶっ飛ばすだけだ。」




LMC社員であるということを隠すために証拠となるものを一切所持していなかった双子は、強盗として警察に突き出すことにした。

真夜中になり、屋敷はようやく静けさを取り戻した。

使用人やジェット、フロラが眠りにつく中ただ一人、キッドだけは自分の部屋で父親の日記を読んでいた。

懐かしい父親の字で書かれた6年前の日記には、知らないことばかりが記されていた。


『4月30日 LMCから新製品に使う為の半導体を供給してほしいとの依頼があった。しかし、私は丁重に断った。LMCとは過去に何度か取引をしたことがあったが、あの会社はどうも好きになれない。取引の時はいつも強引で、相手の雰囲気も良くは感じられないのだ。あの会社には何か怪しいものを感じる。今後もあまり関わらないようにしたいものだ。』


『5月6日 今日の通勤中もまた誰かに後を付けらているように感じた。ことをあまり大げさにしたくないので、警察ではなくボディガードを依頼した。しかし、一体何の目的で誰が後を付けているのだ・・?まさか、先日の・・?』


『5月10日 雇っていたボディガード二人が行方不明となり音信不通になってしまった。いくらなんでもやり過ぎだ。警察に連絡し調査を依頼したが、仮に、もし、万が一、犯人がLMCならきっと調査は無駄に終わるだろう。今やLMCは警察の上層部とも癒着しているという噂だ。』


『5月11日 家族に被害が及ぶ可能性を考え、今日からしばらくは一人で別荘に移ることにした。妻は私のことを心配し猛反対したが、こうするしかない。キッドともしばらくお別れだ。誕生日が近づいているというのに・・・。悲しそうに見送ってくれたキッドの顔が頭から離れない。』


『5月20日 別荘に移ってから私の後をつける不審者はいなくなった。しかし、油断は禁物だ。家族と連絡を取ることもなるべく控えておこう。最近の唯一の楽しみは、キッドへの誕生日プレゼントを何にするか考えることだ。またあの子とキャッチボールをしたい。プレゼントは庭をめいっぱい使って豪快にキャッチボールができるようなものを作ろう。』


『6月1日 大変なことになった。我が社の株価が大暴落した。原因はわからないがおそらくこれも奴らの仕業に違いない。こうなれば今後奴らが何をしてくるかわからない。結局警察も真剣には取り合ってくれなかった。社長として社員に対する責任も果たさなければならない。妻にだけ手紙で事情を説明しよう。』


『6月7日 妻に事情を説明すると、私も別荘へ移ると言って聞かなかった。どれだけ危険か説明しても頑固な妻を説得することはできなかった。一日だけという条件付きで、来週妻が別荘に来ることになった。誰も巻き込みたくない。キッドへのプレゼントを早く完成させて、私は私のやるべきことをやろう。すまない・・キッド・・。』



日記を読み終えたキッドの目には涙が溢れていた。




翌朝、応接室でジェットとフロラは用意された朝食を食べていた。

しかし、使用人たちの様子がおかしいことに気付いた。何かあわただしい雰囲気だ。

「あの・・、何かあったんですか・・?」

ジェットが近くにいる使用人に尋ねると、とてもおどおどした雰囲気で答えた。

「それが・・、今朝キッド坊ちゃまから使用人全員へ、しばらくそれぞれの実家に帰るようにとのお申し付けが御座いまして・・・。あまりに突然のことだったのでみんな戸惑ってしまいまして・・・。」

突然の内容にジェットも困惑した。

「ええっ!?じゃあ、キッドはどうすんの!?」

「それが・・・、旦那様と奥様が亡くなった原因を探しに行く為に、この家を出て行くとおっしゃっておりまして・・・。」

立て続けに驚愕の知らせを聞き、ジェットはいてもたってもいられなくなった。

すぐにキッドに事情を聞きに行こうとしたその時。

「そういうことだ。ジェット。」

自分の名前を呼ぶ声に振り返ると、部屋の入り口にキッドが立っていた。

少し悲しそうな表情をしているキッドにジェットは慌てて尋ねた。

「キッド、この家を出て行くのか・・?」

キッドはしばらく無言のままだった。使用人も心配そうにキッドを見つめていた。

長い沈黙を破り、キッドが口を開いた。

「親父の日記を読んだ・・・。ジェット、親父と母さんは・・・LMCに殺されたのかもしれない・・・。」

キッドの声が静かに部屋に響いた。

使用人は口に手を当て、言葉を出せない程驚いている。

ジェットは驚き、キッドの父親とLMCとの取引の書類のことを思い出していた。

誰も言葉を出さないまま、再び部屋に沈黙が流れた。

しばらくすると、キッドが下を向き、すすり泣く声が聞こえた。

「親父と母さんは事故で死んだんだとずっと思っていた・・・。だけど、親父の日記を読んだら・・・、LMCの仕業のように思えてきて・・・。」

その場にいた全員が悲痛な思いでキッドの方を見ていた。

キッドは手で涙を拭うと顔を上げてジェットの方を見た。

「ジェット、オレは親父と母さんが死んだ本当の理由を探したい!オレもお前らと一緒に行かせてくれ!」

キッドの目は涙を浮かべつつも真っすぐにジェットを見つめていた。

ジェットはその目に答えられずにはいられなかった。

「ああ!一緒に行こう!」

微笑みながら答えるとキッドの表情にも少し笑顔が戻った。

すると、キッドは使用人の前まで歩いていき、真剣な表情で話した。

「突然勝手なことをして本当にごめんなさい。でも、今回LMCに関わってしまった以上、使用人のみんなにも危険が及ぶ可能性があるんだ。この家にいると、また追手が来るかもしれないから、みんなにはしばらく実家へ戻ってほしい。ライディーン家の財産から、賃金は今まで通り支払うので・・・」

キッドの話を遮り、使用人が泣きながらキッドを抱きしめた。

「坊ちゃま・・・、必ず無事に帰ってきてください・・・。私たちのことは心配いりませんので・・・。」

抱きしめられたキッドは再び涙を流した。

「うん・・。必ず帰ってくるよ・・・。今までありがとう・・・。」




他の使用人にも事情を説明し、旅の準備を終えたキッド、ジェット、フロラが屋敷の外へ出た。使用人たちはキッドの言いつけ通り一度実家へ帰り、屋敷を出たのはジェットたちが最後だった。

「これからよろしくな。ジェット、フロラ。」

キッドにそう言われ、ジェットとフロラが笑顔で返した。

「ああ!よろしくな!それじゃあ、行くか!次は『ニューオークス』を目指すぞ!」

暖かい日差しの下、三人は出発した。




その頃、遠く離れた場所、LMC本社の地下会議室。

部屋の奥に座る社長ギルグランドの前に、12人の人間が集められていた。

性別、年齢、風貌様々なメンバーで構成された12人の集団に向かってギルグランドが話す。

「諸君、よく集まってくれた。今日集まってもらったのは、以前から計画していた『魔女狩り作戦』の概要を伝えるためだ。この計画を一週間後にニューオークスで実行する。ちなみに、今回の『魔女狩り』はいつもとは違い、過去最大規模のものになるだろう。LMC十二武将の名に恥じない活躍を期待している。」

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