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HUMANOID  作者: 青草 光
第Ⅰ章 旅立ち編
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第3話 旅立ち

LMCの男三人を撃破し、あたりは静けさを取り戻していた。


「これでよしっと……」


ジェットは気絶した三人をロープで縛ってコンテナに入れ、少女と二人でフタをかぶせた。


「これでしばらくは出て来れないだろ……」


ジェットはそういうと、はーっと大きなため息をついて座り込んだ。


「これからどうするか……」


LMCの実態や少女の本当の開発者、頭の中では、先程知らされた多くの真実が駆け巡っていた。


「どうなるの……ジェット……?」


心配そうに少女が見つめる中、ジェットは腕を組み考えた。


『今回三人の男を倒したが、こいつがここにいる内はLMCがまた取り返しに来るだろう。LMCの悪事が世間に知れる危険を秘めているから。だったら、少女がアンドロイドだということを世間に見せて、LMCの悪事を暴こうか?いや、一般人のオレがいきなりそんなことをしても、誰も信用しないだろう。ましてや相手は世界一の企業。簡単に信頼を覆すことはできない。もっと説得力のある人物が同じことをしたらどうだろう?オレがやるより、よほど影響があるはずだ。でも、一体誰が……?』


ジェットはふとディゴスの言っていたことを思い出した。


「Dr.アクアだ……!」


「アクア……?さっきの男の人が言っていた人?」


少女が尋ねた。


「ああ。Dr.アクアなら世間的にも有名だし、盗まれた張本人だから絶対に協力してくれるはずだ。お前がDr.アクアと一緒いれば、LMCが作ったものでは無くDr.アクアが作ったものだということを証明できるはずだ!」


ジェットは手を握りしめて言った。


「どんな人?」


少女に尋ねると、ジェットは苦笑いした。


「オレも名前や噂しか知らないんだけど……。本名はアクアリオっていうらしく、Dr.アクアとか、アクア博士って呼ばれてる。何年も前に高い技術力で一世を風靡した天才技術者で、めったに人前には姿を現さないことで有名なんだ。たぶんLMC以外に居場所を知ってる人はほとんどいないかもしれない。今では幻とまで言われているんだ」


「ギジュツシャって何?」


少女が頭をかしげた。


「はあ……」


ジェットはため息をついた。


「まあ、要するにお前を『生んだ』人。お前の親だな」


怪我と疲労で重くなった体で、よっこらせと立ち上がりながらそう言うと、まっすぐ少女を見た。


「よし決めた!お前をDr.アクアの元まで送り届ける!お前の生みの親に会いに行くぞ!里帰りだ!」


少女はあまり話を理解できていなかったが、新たな目的を見つけたジェットの迷いの無いまっすぐな目を見て嬉しくなった。


「うん!」


少女はにっこりと笑って返事をした。


「そうと決まれば一旦家に帰るぞ。準備を整えて、明日出発だ!」


二人は森を出て、ジェットの家へ帰った。




家へと戻ったジェットは自分の傷の手当てをした。


「痛ててて……」


傷だらけの体に消毒液が染みる。

その様子を少女が心配そうに見ていたので、ジェットは心配させないようにっこりと笑った。


「大丈夫だって。すぐに元通りになるさ」


その返事に少女が安心する。


「そういえば……。お前……名前決めた方がいいかもしれないな」


ジェットが安心した少女に言った。


「名前?」


「ああ。いつまでも『お前』とか『おい』とか呼ぶわけにもいかないしな」


ジェットは腕を組み考えた。


「しかし、どんな名前がいいんだ……?親がDr.アクアだから……うーん……。ん……?何だこれ?何かあるぞ」


少女を見ながら悩むジェットはあることに気付いた。

少女の服の襟の部分に何か小さい文字が書かれている。


「フ……ロ……ラ……『フロラ』?」


ジェットが文字を読み上げた。


「これは……、もしかしたらDr.アクアがすでに名前を付けてたのかもしれないな……。よし!今日からお前の名前は『フロラ』だ!どうだ、嫌か?」


ジェットが尋ねた。


「『フロラ』……なんか聞いたことあるような気がする……『フロラ』がいい!」


少女はにっこり笑って答えた。


「よし、今日からよろしくな!フロラ!」


「うん!」


名前が決まって喜ぶ二人。




夜になり夕食を終えたジェットはベッドに座りこんだ。疲労で体はかなり重くなっていた。

右腕を外した瞬間、急に眠くなった。


「そういえば、昨日フロラの腕を徹夜で修理してから寝てなかったな……」


そのままジェットは目を閉じ、深い眠りに落ちた。


ジェットの夢の中では昔の記憶がよみがえっていた……。




「ジーク兄ちゃーん、何作ってんのー?」


8歳のジェットが目の前で機械を作っている男性に声をかけた。


「へへっ、完成してからのお楽しみだ」


ジークと呼ばれた男性が答える。つんつんした黒髪で長身、目がパッチリとしてジェットと似た顔立ちだが、大人っぽい雰囲気を漂わせていた。目には作業で使うゴーグルをつけている。


「できた!完成だ!お前の新しい腕だ!」


目につけていたゴーグルを外し、完成した義手をジェットに見せ、にんまりと笑うジーク。


「ええっ!オレの新しい腕!?やったーっ!」


新しい義手を頭の上に掲げて大喜びするジェット。


「今の腕そろそろ小さくなってきただろ?新しいの作らなきゃって思ってよ!」


「兄ちゃんありがとう!」


ジークはジェットの頭を思いっきり撫でた。


「じゃあ……、もうそろそろ行くな」


ジークは作業着を脱ぎ、余所行きのスーツのジャケットを羽織ってそう言った。


「ええっ!?もう行っちゃうの!?」


ジェットが泣きそうな顔で叫ぶ。


「悪いな……。どうしても、行かなきゃなんねえんだ……」


ジークがしゃがみ、ジェットの目線に顔を合わせてつぶやいた。

ジェットは目に涙を浮かべている。


「次は……いつ帰ってくるの……?」


「さあ……、いつになるかな……」


「また、遠いところでお仕事なの……?」


「ああ、そうだ……。いつも一緒にいてやれなくてごめんな」


ジークが静かな声でジェットに謝った。

泣きながらジェットは下を向いている。

すると、ジークは何かを思いついたように言った。


「そうだ!これお前にあげるよ」


「え?」


「ほれ、オレがいつも使ってるゴーグルだ。次帰ってきた時は、義手の作り方も教えてやるから、それ着けて楽しみにして待っていてくれ!」


ジークはジェットの頭をポンポンと叩き、笑顔でそう言った。


「……うん!絶対だよ!」


涙を腕で拭ったジェットは、鼻水をすすりながら笑顔で返事をした。




「ん……あれ、オレ寝ちゃってたのか……」


ジェットが目を覚ますと夜明け前だった。窓の外がうっすらと明るくなってきている。

ふと見ると、寝ているジェットのお腹にフロラが頭をのせて、すーすーと寝息を立てていた。


「やべっ、フロラほったらかしだった……。てか、ロボットなのに眠るのか……?」


ジェットは起きると、フロラを代わりにべッドに寝かせて布団をかけてあげた。


「機械だから布団かける必要ねえかな?それとも、『風邪をひく機能』までついてたりするのか?」


そう言いながらフロラの寝顔を見ると、いよいよ旅に出るんだなという自覚が湧いてきた。


「『オレが憧れていたLMC』はもう存在しないんだよな……。昔からの夢だったのに……一瞬で無くなっちまった。これからの目的はこいつを親であるDr.アクアの元まで送り届けること……か。正直どこにいるのかわかんねぇし手がかりも全く無ぇけど、やるしかないよな。」


ジェットはゆっくりと立ち上がり、右腕を握りしめた。


「過酷な旅になると思うけど……必ずお前を作った親を見つけ出すからな……。LMCの悪事を暴くためだけじゃなく、お前を……家族に会わせてやるために……」


ジェットは心に強く誓った。


しばらくして、フロラが目を覚ました。


「ふわぁ……。あれ……もう朝……?」


「目が覚めたか。フロラ」


体を起こしたフロラがぐーっと背筋を伸ばす。


「アンドロイドも寝るんだな。具合は悪くねえか?」


「うん!大丈夫だよ!」


にっこりと笑って尋ねたジェットに、フロラが元気に答えた。


すると、ジェットは真面目な表情になり、フロラに尋ねた。


「もう少ししたらお前の親を探す旅に出発するけど、フロラはどんな気持ちだ?」


フロラはジェットの真面目な表情を見て、質問の内容を頭の中で真剣に考えた。


「私は……」


フロラが考えながら言う。


「ごめんなさい……。私、本当はジェットが昨日言っていた『Dr.アクアの協力』とか『私を元の場所に返す』ということがどういうことなのか今でもよくわからないよ……」


フロラは泣きそうな顔だった。


「そうか……」


ジェットは表情を崩さずにそう言った。

フロラが難しい話を理解できないことはわかっていた。


「でも……!」


まだ何か言おうとしたフロラが力強く声を出した。


「でも……!私、ジェットが傷付けられているのを見るのがすごく嫌だった!あんなのもう見たくない!LMCの人がこれからもあんなことをするのは嫌だ。だから、それを無くすためなら……私、まだまだわからないことだらけだけど……、ジェットについていきたい!私もDr.アクアに会いたい!」


フロラが真っすぐな力強い目でジェットを見た。


「そうか!」


フロラの本心を聞けたジェットは嬉しくなりニコッと笑って答えた。




旅の準備を終え、家の外へ出た。春の朝の少し肌寒い空気が二人を包む。

空はだいぶ明るくなっていた。


「よし、じゃあ行くか!」


「うん!」


二人は朝日に向かって歩き出した。


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