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HUMANOID  作者: 青草 光
第Ⅲ章 魔女狩り作戦編
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第19話 地獄

爆発が起こった後の工場内は薄暗く、辺り一面に物が散乱している。

ジェットはがれきが散乱する足元に気を付けながらゆっくりと進んだ。


「すげぇぐちゃぐちゃだな……。あいつらはどこだ……?」


足を進めると、目の前にあったトラックの傍に見慣れた金髪の青年を見つけた。


「カイト!無事だったのか!」


トラックの傍に立つカイトに向かって声をかけると、カイトもジェットに気付いた。


「あ!ジェット!お前こそ無事だったのか!」


カイトはジェットを見た瞬間笑顔になり、ジェットの肩を思いっきりバシバシ叩いた。


「痛ててて!やめろって!」


傷が痛むジェットだったが、カイトの無事を確認できて安心していた。

すると、そこへガチャガチャという足音を立てながら走って来たダイナがジェットたちの姿に気付いた。


「おう、カイト無事だったか。おっ、ジェット、お前ボロボロにされてんじゃねぇか。だっせぇな」


わざとらしく雑な反応をされ、ジェットに火が付いた。


「ダイナ、てめぇこそなに大げさに血ぃ流してんだよ?心配してほしいのか?」

「あ?こっちはてめぇの戦った相手を雑魚呼ばわりする相手を倒したんだぞ?文句あっか?」


ジェットとダイナの相変わらずな様子を見たカイトが嬉しそうに二人の背中を叩いた。


「ダイナもジェットも無事で良かったぜ!」

「痛ってぇ!おいやめろ!」

「痛ててて!オレさっきも叩かれたんだけど!?」


ジェットは二人の無事に安心し、ダイナも面倒くさそうだがどこか和らいだ表情になった。


「ったく、カイトは元気だな……。フロラとキッドはいないのか?早く探そうぜ」

「えっ!?フロラとキッドは一緒じゃねぇのか?探さねぇと!」


ダイナの言葉でジェットが不安な表情になり、三人はフロラとキッドを探し始めた。


「おーい!フロラー!キッドー!返事しろー!」


三人は離れすぎないようにしつつ、大声で叫んで探し始めた。

ジェットたちのいる一階は照明が破壊されて薄暗くなった上に、今は土埃が舞っていて余計に視界が悪かった。

すると、ジェットが壁際に横たわるうっすらとした人影を見つけた。


「いた!キッドだ!倒れてる!」


その声に反応し、カイトとダイナが慌てて駆けつける。


「おい!大丈夫か!?キッド!しっかりしろ!」


ジェットがキッドに呼びかけるが、ぐったりとして全く反応を示さない。

キッドが十五階から落下した姿を目撃していたカイトとダイナの脳裏には、最悪の状況が浮かび上がった。


「そんな……。嘘だろ……」


カイトが諦めかけたその時。


「息はしてるみたいだ。大丈夫。気絶してるだけだ」


キッドが呼吸をしていることにジェットは気付き、それを聞いた瞬間、カイトとダイナは一気に安心した表情になった。


「マジか……、良かった……!!」


半ば諦めかけていたカイトの目には涙が浮かんでいた。


「後はフロラだな。あいつオレより先に下へ向かったはずだが……。カイトは見なかったか?」


ダイナに尋ねられたカイトは涙を拭いながら、気絶したキッドを担いで答えた。


「いや、見てねぇな……。オレは北側の階段を下りてきたが、LMCの奴以外会わなかったな」

「そうか……。オレは南側の階段を降りてきたが、オレは誰にも会わなかったぞ……。先にどこかへ行ったのか?」


ジェットの表情が少しずつ険しくなってきた。


「フロラの行方わかんねぇのか……。くそっどうすれば……。あっ!そうだ!こいつがあったんだ!」


ジェットは突然何かを思い出し、ポケットに手を突っ込んで受信機を取り出した。


「そうだ!フロラに発信機を持たせてたんだったな!」


カイトも思い出し、三人は小さな手のひらサイズの丸い液晶画面をのぞき込んだ。

しかし、ボタンを押しても液晶画面は真っ暗のままで反応しなかった。それどころか画面にはヒビが入っていた。


「…………壊れてるな」


ダイナの呟きが静寂の中に響き、ジェットが頭を抱えた。


「ああ!たぶんさっきの戦いで壊れたんだ!くっそぉ!あのコゲ野郎がぁ!」


ジェットは歯を食いしばり、ポケットに受信機を勢いよく直した。

イライラするジェットの横でダイナは冷静に考えていた。


「上から降りてきたオレもカイトも見ていないってことは、先にどこかへ行ったのかも知れねぇな。いずれにしろ、立ち止まってる暇は無さそうだぜ。オレたちもさっさと先を目指した方が良さそうだ」


ジェットとカイトはダイナの提案に頷き、先へ進むことに決めた。

しかし、いざ動こうとしたその時、三人の足がピタリと止まった。


「ところで、先へ進むってどこへ行きゃいいんだ……?オレたち上から降りてきて、ここ一階だよな……?ここに来るまでに、魔女が捕まってそうな部屋なんて見当たらなかったぞ。」


ダイナがぽつりと呟いた。

辺りには外への出口しか無く、部屋の入口ようなものは見当たらなかった。

ジェットとカイトも同じことに気付き、辺りを見回した。


すると、カイトが辺りのがれきを眺めながら口を開いた。


「あのさ……、ずっと思ってたことなんだが、この工場変じゃねぇ?なんというか、工場なのに機械らしい機械が見当たらないっていうか・・・。トラックとかコンテナくらいしか置いてないし、一体何を作る工場なのか全くわからねぇんだよな……」


ジェットも刺激されたように続けて口を開いた。


「言われてみればそうだな……。中は吹き抜けですっからかんだし……、なんかハリボテみたいな印象だよな」


ジェットがそう言うと、ダイナが何かに気付いた。


「もしかしたら、この工場は連れ去った魔女を隠すカムフラージュとして建てられたものなのかもな。中がこれだけ空洞で魔女を隠すとしたら……、地下か……?」


ダイナがそう言った瞬間、カイトが何かを思い出し、弾けたように口を開いた。


「あっ!そうだ!オレさっきエレベーターを見つけたんだが、そこにB1Fって書いてあったんだ!地下の部屋があるはずだ!」


カイトの話で地面に目を凝らしたジェットはすぐに何かを見つけた。


「おい!柱の根元になんかあるぞ!」


柱の根元を見ると床に妙な取っ手が付いており、引っ張ると人が一人通れるくらいの階段が現れ、三人は間違いないと確信した。


「よし、行くぞ」




張り詰めた緊張の中、長い階段を降り続けるジェットたち。

壁についた電灯がジジジと音を鳴らしており、ジメジメとした湿気やひんやりとしたコンクリートの壁は、明らかに工場内とは雰囲気が違う物だった。


「この先に……、連れ去られた魔女がいるのか……」


ジェットは緊張で顔が引きつっていた。


「たぶんメビウスもこの先に……」


ダイナも普段のふてぶてしい表情とは一変して緊張した表情をしている。


「何のために魔女を連れ去るのか、ようやくわかるな……」


キッドを背負うカイトもいつになく慎重に歩を進める。


階段が終わると、三人の前に大きく頑丈そうな鉄の扉が現れ、緊張が一気に高まった。

冷たい扉の取っ手にジェットがゆっくりと手をかけると、三人とも自分の心臓の鼓動を感じ始めた。


「準備はいいか……。開けるぞ……」


ジェットはゆっくりと扉を開いた。


三人の目に最初に飛び込んできたのは、まばゆい緑色の光だった。

その光はジェットたちが先程十二武将との戦いで目にしたものと同じものだった。

扉の向こうに広がる大きな四角い部屋の中央に、天井まで届くほどの大きさの機械が緑色の光を放ちながらそびえ立っている。

その機械の周りに一際濃い光が点在しており、その光を受けて部屋全体がぼうっと緑色に染まっている。


緑色の光に続いて、次は強烈な臭いが三人の鼻を突いた。

スッと透き通るようでありながら、鼻の奥にこびりつくような、強烈な化学薬品の臭いだった。


ジェットとカイトはその臭いに覚えがあった。街の廃棄場に捨てられていたLMCの謎の廃棄物の臭いだった。


「何だ……、ここは……」


あまりに理解できない光景に三人はしばらく立ちすくんでいた。

不気味な光と臭いで気分が悪くなりそうだった。

本音を言えばあまり進みたくはなかったが、ジェットはゴクリと唾を飲んで、カイトとダイナに声をかけた。


「近づいてみるか……」


カイトとダイナもあまり気が進まない様子だったが、ここまで来て引き返すこともできず、意を決して三人は足を進めた。


LMCの領域であることすらも忘れそうになりながら、ゆっくりと点在する光の元へ近づいていくと、光を放つカプセルの形が見えてきた。

ジェットとカイトはそのカプセルに見覚えがあった。


「なあ、カイト……。このカプセルにこの臭いって……」


ジェットとカイトはLMCの廃棄物の事を思い出していた。


「ああ……。廃棄場にあった物と同じだ……。これだったのか……」


三人がさらにカプセルに近づいていくと、ジェットが何かに気付いた。


「ん……?カプセルの中になんか入ってる……?」


カプセルの光の中にぼんやりと黒い影が見えた。

すると、ダイナが突然声を上げた。


「悪い、オレ……、見たくねぇ……」


十二武将との戦いで、すでに検討が付き始めていたダイナはカプセルに近づくことを拒んだ。

ダイナらしくないその言動に、緊張と不安をより一層高めながらジェットとカイトが少しずつ近づいていくと、黒い影がだんだんはっきりと見えてきた。


「あ……」


ジェットとカイトの心に一つの不安が芽生えた。

信じたくない不安は、近づいていく程に確信へと変わっていった。


「そんな……、これは……!」


ジェットとカイトがカプセルに手を触れて中を見た。


そこには裸の魔女が目をつぶった状態で薬品に漬けられていた。


ジェットとカイトの驚く様子を見たダイナも確信した。


「なんだよ……、これ……?」


ジェットの声は震えていた。


カプセル内は薄い紫色の薬品で満たされており、緑色の光は魔女の体が放っていた物だった。

魔女の背中に透明のチューブが刺さっており、それがカプセルの外へ突き抜けて中央の巨大な機械に繋がっている。

透明のチューブを通り、魔女の体から中央の機械へと脈打つように光が流れていき、機械は心臓の鼓動のように点滅している。


「これは……、魔女からエネルギーを……吸い取ってるのか……?」


カイトがカプセルと機械に交互に目を配らせる。


後ろにいたダイナが苦い表情で口を開いた。


「そうみたいだな……。正確には魔女の持つ『魔力』を、この機械で吸収してるんだ……。あいつらが使ってた緑色の光は……、やっぱりそういうことだったのか……」


ジェットはカプセルを叩きながらダイナの方を見た。


「この魔女は……どうなるんだよ……?」


ダイナは下を向いた。


「この感じだと、こいつらは死ぬまで魔力を吸い尽くされるだろうな……」


ジェットがゆっくりとカプセルから手を離した。


「そんな……。これ……、全部そうなのか……?捕まった魔女はみんな……こうなるのか……?」


ふと隣のカプセルを見て、ジェットは絶句した。隣のカプセルの中の魔女は白骨化していた。


「う!?うあああ!!…………う、うおえぇぇ……」

「ジェット!?大丈夫か!」


あまりに衝撃的な光景にジェットが地面にひざまずいて嘔吐し、カイトとダイナが心配して駆け寄った。

カイトはジェットの背中をさすりながらダイナの方を見た。


「LMCは……何のためにこんなことを……?」


ダイナは光を吸い上げる機械を見上げた。


「さっき戦ったLMCの奴ら……、緑色の光を使ってなかったか?おそらく、魔女から吸収した魔力を、武器に使えるエネルギーへと作り変えて使っていたんだろう。要するに、魔女の命を貪って、兵器として使ってやがるんだ」


説明したダイナがふと横を見ると焼却炉があり、そこに黒こげになった骨や頭蓋骨が大量に散乱していた。まだかすかに火が残っており、つい先程まで使用されていた様子がうかがえる。


「魔力を吸い尽くされて命を失った魔女はああなるのか……。工場から吐き出されていた煙は、死体を燃やしたものだったってことか……」


ジェットが四つん這いになりながら拳を握りしめた。


「ごほっ、げほっ……、なんだよそれ……。命を犠牲にして兵器を作るだと……?そんなの許されるか……。地獄じゃねぇかよここは……。魔女が言っていた『行きたくない、あそこには』ってのは、こういうことだったのか……」


うつむいたまま苦しそうに声を出すジェットの横で、ダイナは複雑な表情を浮かべていた。


「メビウスはいつもこの『魔女狩り』を阻止しようとしていた。おそらく、このことを魔女全体に伝えていたはずだ。LMCに連れて行かれたらどうなるか、魔女もみんなわかってたんだろうな」


カイトもジェットと同じく拳を握りしめ、怒りを燃やしていた。


「だけど、魔女は世間的には嫌われている存在だろ……!助けを求めても誰も聞き入れないし、それどころか、無実の罪を着せられて、市民を守るふりをするLMCが英雄扱い……。

こんなバカな話にオレは今まで騙されてたのか……!こんなことに使った機械の処理までやらされて……!」


ダイナは魔力を吸い続ける機械を呆れた顔で眺めた。


「メビウスの奴から、LMCは裏でやばいことやってるというのは聞かされてたが、まさかここまでとはな……。こりゃとんだクズだぜ……」


すると、三人の耳に突然誰かの声が聞こえた。


「見てしまったようだね、LMCの闇を。」


「だ、誰だ!?」


驚いて振り返ると、一人の男が立っていた。

丸い髪形で落ち着いた雰囲気のやせ形の男は、背中に大きな板の様な物を背負っており、胸にLMCの紋章を付けている。


「LMCか!」


三人が同時に戦闘態勢を取った。

男は構える三人を前にしても尚、堂々としている。


「君たちがメビウスと戦っていたという奴らだね?僕は十二武将、『盾』のルシード。メビウスを倒すために待ち構えていたんだけど、この際関係無い。侵入者は無条件で排除するよ。」


ルシードは背負っている板のようなものを前に出して構えた。

それは人が一人丸々隠れてしまう程の、大きな逆三角形の形をした盾だった。


ジェットは目の前に現れたLMCの人間に対し、怒りを露わにした。


「お前らこんな酷いことして、何考えてやがんだ!!」


ジェットの横ではカイトも興奮状態だった。背負っているキッドを地面に降ろし、武器を構えながら今にも飛びかかりそうな程前のめりになっている。

唯一ダイナは冷静だったが、ジェット、カイトと共に目の前の敵を倒すべく、戦闘態勢を崩さなかった。


今にも向かってきそうな三人に向かってルシードは笑った。


「君たちはさ、魔女から吸収したこのエネルギーが気になっているんだろう?」


ルシードがそう言うと、今までの十二武将と同じように腕輪から光が溢れ出し、構えた盾に流れ込んだ。

魔女から吸い上げた魔力をわざとらしく見せつけられ、怒りを抑えれられなくなったジェットとカイトが爆発したように同時に飛び出した。


「ジェットハンマァァ!!」

粉砕解体ダイヤモンドブレイク!!」


ジェットが右腕を打ち込み、カイトがブレイカーを渾身の力で振り下ろし、ガゴン!という大きな音と振動が響き渡った。

しかし、ルシードの笑いをこらえる声が聞こえた。


「くくく……無駄だよ……」


「……何!?傷一つ付いてねぇ!?」


ジェットとカイトがよく見ると盾には傷一つ付いておらず、ルシードは余裕の笑みを見せた。


「君たちの攻撃ではこの盾はビクともしないよ。魔女の魔力を使ってコーティングし、耐久力を上げているからね。」


「くそがぁ!!!」


魔力を笑って扱うルシードに、ジェットとカイトが怒りに身を任せてなりふり構わず攻撃を仕掛けた。


一方、ダイナはルシードの後方へと素早く回り込んだ。


「後ろは無防備だろうが!!」


高速で側転をしつつ接近し、地面から勢い良く飛び上がって回転の威力を乗せた右足を振り下ろした。


流剣フロウセイバァァ!!」


力の込められたダイナの右足が頭上に迫ったその時、ルシードはカッと目を見開き、盾を持ったまま両手を突き出した。


「ふん、無駄だ!僕の本気を見せてあげるよ!!」


叫びと同時に、盾にまとわりついたエネルギーが拳程度の大きさの無数の塊へと分裂した。

そして、その塊は弾丸のように目の前のジェットとカイトに勢いよく放たれた。


「「ぐあぁぁぁぁ!!」」


無数に放たれたエネルギーの弾丸の一部がジェットとカイトに命中し、二人を吹き飛ばした。


「ほぅら!君も食らいなよぉ!!」


ルシードは盾を後ろに回し、ダイナめがけて弾丸を発射した。


「があっ……!!」


ルシードの頭上に迫っていたダイナも弾丸を喰らい吹き飛ばされた。


それはまるで、焼けた鉄の玉が飛んできたような衝撃と熱さだった。

ジェット、カイト、ダイナが体から煙を出しながら地面に倒れ込んだ。


「くっ……。何をしやがったんだ?」


ジェットが痛みで顔を歪めながら、三人を見下ろすルシードの方を見た。

ルシードの盾を覆っていたエネルギーは消えていたが、腕輪からエネルギーが流れ込んで再び緑色に光り出した。


「僕の盾はね、受けた衝撃をため込んで、それをエネルギーの弾丸として跳ね返すことができるんだよ。魔女の魔力はそれ単体でも武器として使えるけど、こんな風に武器の能力を拡張させることもできるんだ。どうだい、素晴らしいだろう?」


その言葉に三人は自分が戦った十二武将の武器を思い出していた。

思い出せば全員紛れもなく魔女の魔力を活用した武器を使っていた。

ジェットはトラックから逃げ出す魔女の手から光が放たれた時の光景を思い出した。


「そうか……。どこかで見たことあると思ったら……、魔女の光だったのか……」



理不尽な方法で作られた力を前に、成す術も無く地面にひれ伏すジェットたち。


「まあ、この力を相手によくここまで戦ったよ。だが、僕は十二武将の中でも最強と言われている。初めから君たちに勝ち目は無いのさ」


ルシードに力が及ばず、ジェットは拳を握りしめて地面を叩いた。

ここまで残虐な悪を見せつけられておきながら、何もできない悔しさでいっぱいだった。


「それじゃ、終わらせようか。」


ルシードがゆっくりとジェットに近づこうとしたその時だった。


突然、後方にあるエレベーターの扉が開いた。


その瞬間、今まで笑っていたルシードの表情が一気に凍り付き、歩みを止めた。

辺りに妙な静けさが漂う中、異変に気付いたジェットたちはルシードの視線の先に目をやった。

そして、ジェットたちも言葉を失った。


「っ……!」


視線の先には、ジェットたちがテレビや新聞で幾度となく見たことのある人物が立っていた。

オールバックの髪にすべてを見透かすかのような鋭い眼光、異様な存在感を放つその人物は、エレベーターからゆっくりとジェットたちに向かって歩いてくる。


ルシードが目の前のジェットたちを無視して、慌てて大声を出しながら頭を下げた。


「ギルグランド様!お疲れ様です!」


すべての元凶、LMC社長ギルグランドが地獄に降臨した。

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