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第8話~再会~

「ユーリア隊長。我々はこの()どういたしますか?」


実践訓練や剣闘祭等のイベント事に使用される闘技場。その場内にて飛竜を運び終えた滅竜隊のメンバーの一人。

真面目そうな印象とスラッと伸びた紺色の髪が特徴的な滅竜隊副隊長、エリザ・ノットが指示を仰ぐ。


「滅竜隊はこのまま街の警護と、例の二人組の捜索をするわ。指揮はエリザとアニスに任せるから二手に別れてちょうだい。特徴は聞いているでしょ?」


「黒髪の少年と、ローヴを纏った金髪の美女だっけ? どっちも街中じゃあまり見掛けないし、きっとすぐ見つかるよー」


「アニス、お前はもう少し緊張感を持て。その二人が竜族の可能性だってあるんだぞ」


エリザがたしなめると、茶髪の美少女、アニス・ヴェルサードは「むぅー」と可愛らしく口を尖らす。


「もう、エーちゃんは真面目すぎ。私だってやるときはちゃんとやるもん!」


「それは当然だ。それから今はまだ任務中だ。副隊長を付けろ」


そんな二人の掛け合いをユーリアは微笑ましそうに眺める。

実はこの三人は幼い頃より共にしてきた仲だったりする。そして付け加えるなら、アニスとエリザの実力はほぼ互角で、その力の特性上、反発することもしばしば。

無論、度が過ぎればユーリアが間に入るが、今回は必要無さそうだった。


「あ! そうだユーちゃん! 結局、飛竜の血は誰が飲むの?」


エリザのお説教から逃げるように唐突にアニスが切り出した。

皆の視線がユーリアへと向く。


「それなんだけど、総隊長は私達の隊から選抜して言いと仰ったわ。だから、レニー? あなたは私とこの場で総隊長が来るまで待機してちょうだい」


ユーリアが名を上げる。

それはつまり、その者が飛竜の血を飲み、竜殺しの力を手にすると言うこと。


「わ、わわ、私ですか!?」


選ばれると思っていなかったのか、名を呼ばれた桃色の髪の少女、レニー・ローディアスが慌てたように声を上げる。


「わぁ、レーちゃんおめでとぉー! これでレーちゃんも竜殺しの仲間入りだね」


「確かに……。レニーなら飛竜の血は適任でしょう」


「……私で本当にいいんでしょうか?」


いまいち自分に自信の持てないレニーが問い掛ける。


「大丈夫よ。確かにレニーは皆のように何かに突出して優れてるわけではないわ。でも、レニーの治癒魔法は隊には必要不可欠。それに使える魔法も一番多く、一つ一つのバランスも取れてる。だから飛竜の血を飲むのは隊の中ではレニーが一番適任なの」


「……分かりました。 がんばります!」


ユーリアの言葉で漸く自信を持てたレニーは笑顔を見せる。

ユーリアの言う通り、突出した部分のないレニーには飛竜の血は理想的だ。

どの竜の血、つまり竜殺しの力であっても、得られる恩恵は基本的には等しく、身体能力の向上と全体魔力の増大、そして魔力コントロールである。

そこに対象の元々の能力(スペック)との相性によって偏りが生まれる。

火の魔法を得意とするならば火竜の血を飲めば、といった具合に。

無論その分、他の要素はほとんど伸びない一点特化となってしまう。

故にレニーの場合、突出した部分が無いため、全体の能力をバランス良く高められる飛竜の血が望ましかった。

ただ、それでも尚、彼女が皆より優れている部分を上げるなら、それはーー


「大丈夫! おっぱいはレーちゃんが一番おっきいよ!」


「ふぇっ!?」


レニーは咄嗟に両手で胸覆い隠した。

確かにアニスの言う通り、十五才という年齢にしては幼すぎる顔立ちからは想像出来ないほど見事に実っている。

所謂ロリ巨乳というやつである。


「アニスッ! お前と言う奴は!」


「ゴツン」という擬音がぴったりな見事な拳骨がアニスの脳天に落ちた。

苦痛に顔を歪めながら、アニスは言う。


「もぉエーちゃん! 自分に胸がないからって八つ当たりしないでよね!」


ここから再び二人の慎ましやかな論争が始まった。


「なっ! お前に胸のことを言われる覚えはない!」


「残念でしたー。身長差を考えれば私の方が成長してるもん! やーいペッタンコ~」


「……貴様。溺死させられたいようだな……」


ユーリア以外の隊員が思わず身震いを起こす程の形相でアニスを見下ろす。


「エーちゃんの水なんて私の炎で一滴残らず蒸発させてあげるよ!」


アニスも負けじとエリザを見上げた。

そんな一触即発な二人を前に慣れた様子で、しかし頭を抱えるように首を振ったユーリアが言う。


「二人とも……その辺にしときなさい。まだやることが残っているでしょう?」


優しく発せられた言葉。

しかし、二人は確かにユーリアの背後に、鬼を見たのであった。




隊員が別れて暫く。その場に残ったユーリアとレニーの下へ総隊長がやって来る。


「待たせたな。ふむ、レニー・ローディアスか。確かに彼女ならば適任だろう」


バルトスがレニーを一瞥し納得の声を上げる。


「はい。彼女なら十分飛竜の力を発揮してくれると思います」


「ふむ、期待している。それで二人組の動向は掴めたのか?」


「まだです。ですがどちらも王都では目立つ外見のようなので時間は掛からないでしょう」


返答にバルトスが頷く。


「だが相手の正体と目的が確定していない。発見しても暫くは監視が必要か……」


万が一、二人組が竜族であるならば慎重を期する必要がある。下手に接触して街中で戦闘などになった場合、被害は甚大。

出来れば穏便に済ませたいと言うのがバルトスの考えだ。


「まぁいい。先に此方を済まそうか。戦力は多いに越したことはないのでな。準備はよいか? レニー・ローディアス」


「は、はい!」


緊張した面持ちで返事をする。

それが総隊長を前にしてなのか、竜殺しの力を手にすることに対してなのか。

おそらく両方である。


「大丈夫よ、レニー。あなたは優秀。自信を持ちなさい」


ユーリアが再び自信を促す。

それを聞き、レニーの表情が引き締まった。


「では始めよう」


バルトスが氷魔法で凍った飛竜の心臓部へ触れる。

パリンと音を立て魔法が解除される。

そして剣を抜き、飛竜の身体に突き立て心臓を取り出そうとしたーーそのときだった。


ーーーー!!!


突如、闘技場入り口付近から感じた異様な気配に一斉に振り向く。


「……この身体に突き刺さるような濃密な覇気(プレッシャー)……。まさしく竜だ。それも上位クラス……。だが竜がご丁寧に入り口から入って来る筈がないな」


「竜族……」


ユーリアが入り口を睨む様にして呟いた。


「で、でもこの気配、ユーリア隊長に似ている気が……」


「「なっーーーー!?」」


レニーが呟いた言葉に二人が驚きを見せる。

あまりの異様さに気付くのが遅れた。

確かに感じる気配はユーリアの持つ竜殺しの気配に似ている。

むしろその強大さ以外は同じと言ってもいいほどに。

その気配の主はゆっくりと、だが確実に此方へと近付いて来ている。

ユーリアが驚愕の表情で口を開く。と、同時に入り口の影から黒髪の少年が、現れた……。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




僅かに時を遡る。

現在リュウヤは街中を見回っていた騎士を掻い潜って闘技場前まで来ていた。


「中に気配が三つ……。随分と無警戒じゃないか」


リュウヤが呟く。

確かに街中の警戒はあった。大方(おおかた)飛竜と行動を共にしていただろう竜族が街に入り込んでいる可能性を考慮しての警戒だろう。

そしてそれは騎士達が、黒髪の男とローヴを纏っている者に視線を集中していたことからも間違いなく気付いている。

だが竜族を相手にあれっぽっちの騎士では足りない。

まして飛竜の亡骸をあれだけ堂々と引いて来たにも関わらず、そこに三人しかいないなど無警戒にも程がある。

ただ、それも致し方無しか、とリュウヤは思う。

元々竜族も竜も、互いに仲間意識など持ち合わせてはいない。

それは周知の事実だ。でなければ人間が竜を殺して竜殺しとなることを黙っている筈がない。

故に、飛竜を一体殺してその力を得ようとしたところで、約定故に襲ってくることはないと言うのが人間側が思う所だろうと予想する。

しかし、今回ばかりは勝手が違った。

リュウヤとて、人間がどこでどんな竜殺しになろうがどうでもいい。

ただ自分の物を勝手に使われるのは癪にさわる、というだけ。

リュウヤは一度上空を見上げ笑みを浮かべた。


「さて、行くとするか」


そしてリュウヤは場内に続く通路を歩いていく。

静けさ漂うなか、リュウヤの耳に声が届いてきた。

内容からしてちょうど、飛竜の血を飲もうとしているのだろう。


(悪いがそいつの心臓は俺が貰う予定なんでな)


リュウヤが全身から場内に向けて覇気を放った。

世界最強の竜の覇気である。

無論加減はしている。精々が二割弱といったところ。。

例えるなら上位竜程度であった。

そしてリュウヤの思惑通り、場内の気配はリュウヤの覇気を感じ、動揺が見られる。


「流石は竜殺しなだけはある。気付いてくれてなによりだ。悪いが邪魔させて貰うぜ」


言いながら、太陽の光で照らされた場内に踏みいると、女性騎士二人と屈強な中年男性騎士の姿、そして飛竜の亡骸が目に写る。


「まさか私と同じ竜の……」


此方を警戒し、身構えていた三人のうちの一人、銀髪の女性騎士が、リュウヤが現れると同時にそんなことを呟く。


「ちょっと違うな」とリュウヤは口元を緩ませ、ユーリアを見据えた。


「その銀髪……うっすらだが覚えがあるぜ。それに隊長だって? 随分と俺の力を使いこなしてるようじゃないか? まぁ使いこなすもなにも、ただ破壊するだけの力だけどな」


リュウヤの発言に、ユーリア以外は怪訝な表情をした。


「え……? そ、そんな……。まさかあなた……」


「ああ、十年ぶりか? 正直今の今まで忘れてたのが勿体無いくらい俺好みに成長してるじゃねーか」


クツクツとリュウヤは笑みをこぼす。


「どういう事だ、ユーリア? あの竜族の者と知り合いだったのか?」


探していた男が目の前にいて、しかも竜族であった事実に驚愕を隠せず震えているユーリアへと問い掛ける。


「は……い……。彼は私を助けてくれた人に間違いありません。で、でも確かに彼は人間だったはず……」


「まぁあの状況からすれば俺がお前を助けたことになるな。それに人間だったってのも間違いじゃない」


ユーリアの言葉にリュウヤが応える。

確かにあの瞬間、リュウヤが黒竜の心臓喰らった瞬間はまだ身体は人間のものだった。

竜王の心臓を喰らった者は一度記憶を失う。

それは強すぎる力を封印し、身体に馴染ませるための処置である、防衛本能とも呼ぶ現象。

だが、リュウヤは元々人間だったため、身体を幼児化し、竜族の身体に作り替える必要があった。

その期間がおよそ三年。

それはサラ達がリュウヤの居場所を察知するのに掛かった時間でもある。


「わからんな。だが今はそれを問い質している余裕はない。少年……いや、竜族の者を見た目で判断するのは早見(そうけん)か」


「あー、別に構わねーよ。おっさんより生きてないことは確かだ。それにそんなことを気にする質でもないんでね」


かったるそうにリュウヤが応える。


「そうか。では少年。君がユーリアを助けたのが事実であるなら、育て親である私からも感謝したい。だが私は全騎士を統べる総隊長でもあるのでな。問わなければなるまい。何故(なにゆえ)竜族がここ(・・)へやって来たのか?」


バルトスの問いに、リュウヤがニヤリと笑い、更なる問いで応えた。


「それは俺がこの場に来た理由か? それとも……俺らが王都に来た理由か?」


あっさりと問いの真意を見抜かれたバルトスが表情を変えた。


「……つまり、我々が君ともう一人に気付いていることに気付いていたと言うことか」


「当然だな。そんなものは王都に入る前から予見してる。それすら気付けないようならあんたら人間はとるに足らない、そう評価するだけだ」


無論、リュウヤからすれば「人間」の前に「この世界の」が付くが。


「では両方の答えを聞きたい。正直、君達竜族の考えは我々には解りかねるのでな。宣戦布告しに来たわけではないのだろう?」


「はっ、そんなことしねーよ。一先ず、王都へ来た理由だが……そこの女だな」


リュウヤがユーリアへと視線を移す。


「わ、私に……?」


「そうだ。こいつは俺も予想外だったが、あの日、俺はお前に血を飲ませただろう?」


その問いにユーリアが頷く。


「そんときにどうやら俺の力が僅かにお前に渡ったらしくてな。それをある奴から聞いて興味が出たから観光がてら覗きに来たって訳だ」


「ど、どういうこと? あなたは私に竜殺しの力を譲ってくれたんじゃ……」


意味がわからないといった風にユーリアが呟く。

確かに人間は竜の血で竜殺しの力を得ることができるが、竜族の血では得られない。というよりは試した前例がないと言うのが正しい。

ならばユーリアが、その場で撃ち取られた竜の血を譲ってもらったと思うのも当然だ。

しかし、目の前の少年は自分の力という。

混乱するのも無理はない。


「譲った? おいおい、当時のお前がどれだけ実力を持ってたかは知らねーが、とても竜殺しの力をてにできるだけの(もの)を持ってたとは思えねーがな。あれは俺の意思で飲ませたから耐えられたんだ。まぁ俺が担いで村まで運んだらしいから、力の負荷で直ぐに気を失ったんだろーよ」


リュウヤの返答に、愕然とする。

確かに竜殺しの力に耐えられるだけの力は当時のユーリアには無かった。

だからこそ、その手段を件の少年が持っているのではないか? 或いはそういう竜の力ではないか? と色々と考えていた。

ユーリアはその少年、リュウヤを探していた。

それは助けてもらったお礼がしたかった、というのが一番の理由ではあるが、同時に思惑もあったためである。

ユーリアは自分の力がどんな竜の力なのかを知らない。それは力を使いこなす上では必須とも言える。

それをリュウヤから聞き出し、欲を言えば、あの年で竜に勝つだけの力を備えた彼に、協力を仰ごうという目論みもあった。

両親を殺した魔物を殲滅するため、そして魔族と対抗するために……。

しかし、そんな思惑は探し求めた少年が、とりわけ良好な関係とは言えない竜族だった事実に、驚愕と混乱、そして怒りの中で消え去った。


「冗談……ではないのね。貴方が竜族だということも、私の力が元々貴方の物だってことも」


「さっきからそう言ってる筈だけどな」


肯定に、ユーリアはゆっくり瞳を閉じ、自分の中の想いを断ち切る。

開いた瞳は先程までとは違い、鋭いものへと変わっていた。


「そう……。私はずっと貴方を探していた。助けてくれたお礼と、話を聞きたかったから。でも貴方は竜族。どうせ私の力について聞いても答えてくれるはずないでしょう?」


敵だから……。

その感情から出た言葉だった。

故にリュウヤの返答に呆気にとられる。

まるでついで、だからどちらでも構わない。そんな風に即答されたリュウヤの言葉に……。

今回見直しが甘いかもしれません

それと作者的に満足のいく物になっておりません……

あまり読者様を待たせるのも申し訳ないですし、一部分に固執し過ぎるとモチベが下がりかねないので一先ずこれで投稿させてもらいました。

なのでいずれ修正すると思います。

次回はバトルが入るかと思いますのでどうぞお楽しみに……

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