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第4話~竜の力~

ここまでで一部修正している箇所がいくつか有りますが一先ずそのまま読み進めていただいても問題ありません

満天の星空の下、全長二十五メートルほどの飛竜が、風を切り優雅に飛翔する。

その背にはリュウヤと女三人がいた。


「やっぱり夜風を感じながらってのは最高だな。精神的に疲れて眠いってのが勿体ねー」


「無理も有りません。リュウヤ様は先程記憶を取り戻されたばかりですから。其なりの負荷がかかっていたはずです」


リュウヤの愚痴に、隣に座るサラが応える。


「目的地まではどのくらい掛かる?」


「暫くは。我らの集まる地は、この大陸の最南端にある鉱山ですので。海を挟んで魔大陸が拝めますよ」


「魔大陸ねえ。確か三百年前の大戦で二つに割れたんだったか?」


「はい。私は産まれておりませんが、先代の父と人間の英雄、そして現魔王の衝突によるものだと聞いております」


「やれやれ、ご苦労なことだが、俺から言わせれば馬鹿としか言いようがないな。こんな力を持った連中が本気でやり合えば、先に大陸が悲鳴をあげるのは眼に見えてるだろーに」


リュウヤの呆れた様子の言葉に、サラはクスリと笑う。


「今では南の小さい大陸を魔族が、こちらの大陸をそれ以外の種族が、基本的には暮らしております」


「最も数の多い人間と険悪な魔族を南に追いやり、同盟を結んだ獣族とこっちで国を造ったってわけだ」


「はい。そして最も数が少なく、中立であった我らと、大戦を期に完全に他種族との関わりを持たなくなったエルフが此方に宛がわれ、協定を結ぶことによって、種族間での大規模な争いは起きなくなりました」


「ふん。そんなもんは結果オーライでしかないな。まぁ、俺の知ったこっちゃねーが、魔王にはそのうち挨拶に行かねーとな。向こうもそのつもりだろう」


リュウヤの記憶には、先代と魔王は酒を飲み交わす程度には良好な関係だったとある。

ならば新たに竜王の力を手にした自分を、既に認知していると読んでいる。

どのみち接触するならば、礼儀として此方から出向いてやろうという事だ。

それに対してサラは一つ頷いた。


「さて、それじゃあ俺は一眠りするぜ。着いたら起こしてくれ」


「承知しました。宜しければ膝をお使いになられますか?」


「あん?」と首を傾げるリュウヤに、サラは続ける。


「人間の生活を送っていたリュウヤ様には、竜の背は少々(かた)いかと愚考します」


「はは、そいつは妙案だ。御言葉に甘えるとするぜ」


そしてリュウヤは、サラの柔らかそうな膝の上に頭を置き横になる。

すると少し落ち着かない様子で、サラが口を開いた。


「その……如何でしょうか?」


「あん? なんだお前、自分で薦めといて恥ずかしがってんのか? 可愛いとこあるじゃねーか」


「わ、私はただ、リュウヤ様の……いえ、自分の意思に従っただけですので」


どこか必死に誤魔化そうという意図が見えるサラの言葉だが、先程からリュウヤの頭部には落ち着きの無さが伝わっているため、どう言い繕おうとも無意味であった。

リュウヤはクツクツとその反応を楽しんだ後、先程の問いに応じる。


「クク。ああ、悪くねーよ。薄着なのもまたいい」


リュウヤからしてみれば水着にしか見えないほど扇情的な衣装の為、体温や肌の弾力まで直に感じられる、まさに最高と言える条件だ。

この状況で不満などあるはずがない。


「竜族はいざという時に竜化をするため、この方が都合が良いのですよ」


「そうだったな。自分の背中から翼が生えて来るかと思うとゾッとするぜ。出来ればしたくないもんだな」


竜王の力を持つリュウヤが、竜化をしなければならない状況など限られている。

しかしそれとは別に、元人間の感性として単に、気色悪そうという意味である。

更に言えば、竜化は竜族としての寿命を削ると言われている。

無論、一部を竜化させるだけならば対して問題は無いが、全身、或いは完全な竜化ともなると、どれだけの寿命が削られるか分からない為、どちらにせよ竜化は避けたいところだった。


「あーッ! サラ姉だけずるい! あたしもリュウヤ様に膝貸してあげたいのに!」


「抜け駆け……サラ姉でも駄目……公平求む……」


これまで飛竜を先導するために、リュウヤ達から少し離れていた二人の少女が 、駆け寄ってきて異を唱える。


「やかましいぞ、ガキんちょども。そういうのはもっと色々な部分を柔らかくしてから出直してこい」


はっきりと言われたリュウヤの言葉に、まさしく「ガ~ン」と言うのに相応しいショックを受ける二人。

しかし、ふとミラの方が何やら思い付いたようで。


「もうすぐ夏……。ミラ抱く……お得……」


「あん? どういうことだ?」


いまいち理解出来なかったリュウヤがサラに尋ねる。


「竜族は基本的には体温が高いため夏場は非常に暑く、冬場は然程寒さを感じません。ですがミラは氷竜の力を備えていますので、夏場でも体温は低く、冬場には本領を発揮します。メラは火竜ですからミラとは正反対となります」


「なるほど、そいつはいい。今思えばこの身体、夏は死にそうなくらい暑かったからな。そんときゃミラを抱いて寝るとしよう」


リュウヤの言葉にグッと、小さな握りこぶしを作って喜ぶミラが、どこか微笑ましい。


「えーリュウヤ様! あたしは? あたしは!?」


「バーカ。今の理屈じゃ、夏にお前を抱いたらそれこそ死んじまうだろーが」


「じゃあ冬! 冬は!?」


「冬は別に、寒くねーから要らねーな」


「そ、そんなー!!」


最早、意気消沈の様子で今にも泣き出しそうなメラを余所に、双子とは言え妹であるミラは、頭のなかで計画を建てるのに忙しいのか、メラをガン無視である。


「やれやれ、そんな顔すんな。機会があればそのうち抱いてやるよ」


「ほんと!? 絶対! 絶対だよリュウヤ様!」


「抱く」の意味が少々違うような気もするが、メラがそれで元気になったので良しとしておく。


「はいはい。其までに多少は色々と成長しとけよ」


メラは「まっかせて!」と意気揚々と飛竜の先導に戻っていく。

ただの膝枕から随分と話が大きくなったが、気にしない。

リュウヤはやれやれと、漸く眠りについた。

サラの表情がどこか嫉妬と羞恥心で覆われている様に見えたのは内緒である。




其から暫く、リュウヤ達は目的地である鉱山へと降り立っていた。

竜族の集まる洞穴へ向けて歩いている時だった。

此方の気配を感じ取ったのか、魔物が三体、正面から近付いてくる。

その魔物はリュウヤには見覚えの在るものだった。


「ギガント・ロックのようですね」


魔物を視認したサラが言う。

その魔物は幾つもの石礫(いしつぶて)を押し固めたような姿をしていた。


「まさかあたし達にはむかう気じゃないよね~?」


「無謀……」


少女二人は呆れた様子で、リュウヤに至っては意味深な笑みを浮かべている。


「そう言ってやるな。彼方(あちら)さんも縄張りにのこのこ入ってきた連中を見逃してたんじゃ、魔物としてのメンツが立たねーだろ」


「直ぐに排除しますので、暫し御待ちを」


しかしサラの言葉に、リュウヤは待ったを掛けた。


「いや、俺がやる。この眼で自分の力を一度見ておきたかったしな。それに奴らには個人的にちょっとあってな」


リュウヤの言葉に女達は一歩身を引く形で応える。

ギガント・ロックは鉱山などに住み着く魔物だが、時おり人里まで降りてくることもある。

その為、記憶のなかった頃のリュウヤは幾度か刃を交えたことがある。

しかし、リュウヤの言葉は、それより以前の事を意味していた。

リュウヤの前に、数倍の巨躯(きょく)を持つギガント・ロックが三体、立ちはだかる。

まるで大人と赤ん坊といった光景だが、リュウヤに焦りは皆無だった。

正面に立つ一体がリュウヤの身体より大きな拳をリュウヤ目掛けて奮った。


「やれやれ」


その一言の後、リュウヤは右手を前にかざし、あっさりとその拳を受け止めた。

周囲に風圧の衝撃が舞うがリュウヤ達には何の影響もない。


「どうした? あの時と立場が逆転したな、化け物」


攻撃を受け止めたことにより、どこか怯えた様子で後ずさったそれに言い放つ。


「人じゃねーうえに場所も違うからな。同一人物ってのはおかしいが、正直お前らの見分け方なんて知らねーからよ。それにこうして俺に挑んだんだ。文句はねーよな?」


先程より勢いを付けた拳が、再度リュウヤを襲った。

しかし今度のリュウヤはそれを受け止めたりしない。

巨大な拳目掛けて、自身のちっぽけな拳を奮う。

だが、拳同士が触れた瞬間吹き飛んだのはリュウヤではなく、ギガント・ロックの方であった。

それも跡形も無いほど無惨に消し飛んだのである。


「やれやれ。分かっちゃいたが、実際に眼にしても異常だな、くそったれ。……さて、あの時のように俺を無視して逃げなかったのが運の尽きだ。諦めろ」


その言葉に、同族の惨状を目の当たりにした他の二体が逃げ出す。

リュウヤとしてはそれならそれで良かったが、あり得ないとは言え、自分達の王に危害を加えようとした者を女達が見逃すはずはなかった。

一体はメラの灼熱の焔によって溶解し、残りの一体はミラの息吹きによって氷付き、砕け散る。


「勝手な行動を御許しください」


「構わねーよ。お前らの忠誠を考慮すればこうなることは分かってた。不都合があるなら止めるさ。それにお前らが決めたことだろう?」


リュウヤはニヤリと笑みを浮かべる。




その後は予定通り、他の竜族達と顔を合わせ、村でサラ達に言ったことを繰り返す。

幾らか不満そうな気配を漂わせたもの達がいたが、表情には出さなかったため、取り敢えず忠誠を受け入れたリュウヤは、こうして竜王の座に収まったのである。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「取り敢えず、目に見えて反抗しない限りは奴らの忠誠も信じといてやるさ」


「寛大な御配慮、感謝いたします。ところで王都の街までは歩いて行かれますか?」


既に目的地近辺にて、飛竜は見事な円を描き旋回していた。


「そうだな。ここで降りようか。あん?」


リュウヤが下に視線を向けると、森の中の小道で何かを見つける。


「どうやら、人間が狙われているようですね。如何しますか?」


サラも視認したようで、明確な情報を告げ、続けて問う。


「別にどっちでも構わねーが、見ちまったもんは仕方ねー。忠告くらいはしてやるとするか」


そう言うと、下ろした髪をかき上げ、つり上がった鋭い瞳を露にする。


「お前は見付からねーように適当なとこで待機してな」


飛竜にその言葉を残して、二人は地上へと降りていった。


展開が遅いうえにいまいち盛り上がりに欠けますがマイペースに行きますのでご了承ください!

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