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少し怖い短いお話

宵宮

作者: 浅井一希

 蒸し暑い夕方でした。

 その日は朝からひどい雨でしたが、昼過ぎには小雨になり、私が仕事をしている間にすっかり止んでしまったようでした。アスファルト舗装された車道のあちこちに出来た水溜まりだけが、雨の名残を伝えていました。


 水溜まりは、歩道にも出来ていました。

 私は、邪魔な傘が人に当たらないように気をつけながら、水溜まりを避けて歩きました。

 と、目の前の水溜まりの様子がおかしいことに気付きました。


 黒いのです。


 歩道は、車道とは違い、カラフルなコンクリートブロックが敷かれていました。その道は白とオレンジのブロックが交互に並べられており、黒い水溜まりなど、出来るはずもないのです。


 私は思わず足を止めました。

 水溜まりの水はぐるりととぐろを巻きながら、ゆっくりと持ち上がりました。


 私は最初に、それが髪であることを認識しました。髪、そして、頭。

 髪の長い生首だ、と私は思いました。

 顔は向こうを向いており、男の生首なのか、女の生首なのかはこちらからは分かりませんでした。もしかすると、向こう側も髪しかなく、これには顔がないのかもしれません。

 生首はそこにありますが、私以外の人には見えていないのか、皆、私と生首を避けて歩いていきます。中には不思議そうに私を振り返る人までいます。


 けれど、生首はそこにありましたし、私はそれが今にもこちらを向きそうで、それどころか、やはり顔などどこにもないその正面で私を見ているような気がして、動けないでいました。


 足に違和感を感じて、私は自分の足元を見ました。


 水溜まりから伸びた青白い腕が、私の足を掴んでいました。


 筋張って見えるものの、やはり、男性か女性かは分かりませんでした。


 足を生首に掴まれながら、周りに喧騒が戻ってくるのを感じました。


 私は、道端で浴衣姿のキャンペーンガール達が団扇を配っているのを見て、明日から祭なのだな、と思いました。


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