マギァ
それは魔法だった。悪天使が言うなれば銀の鏡の象徴らしい。
マンダラの出現と召喚獣の軌跡は誰にも説明できずに、困惑している。
「まるで昔ばなしみたいだね」と君は花のように笑っていて、
閉ざされた森のなかは子供の精神のようにきらきらと輝いていた。
それは何の儀式なんだい、と僕が訊いても答えてはくれなかったね。
昔は、泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、
強がってばっかりいた君を僕は透明な淡雪の彼方に見ていたんだ。
――けれど、複雑な面と線の位階にいったきり、
君はもう帰ってこなくなってしまったんだ。
透き通った碧空。蘇生の魔術書。アレキサンドライト。
僕は用意したんだよ。聖なる炎群らの道具を。
黒い蝋燭で浄化した幻想動物の骨と肉体を。
円形劇場で複合獣に捧げたラストダンスを踊る。
多大な犠牲を払い、赤い楽園を求めた結果、聞える。
どろ、どろ、どろ。古代の溶鉱炉の音がする。
七つの封印。五つの霊薬。三つの幻想。
それらの封印をたやすく解いて君を復活させよう。
月蝕の夜に、色彩豊かな魔方陣の中に君の骸を捨てるのさ。
融滌してしまったどろどろの脳髄を早く回収せねば。
君の光芒を、純乎たる智慧を、天使的数値を。
さあ、画箋紙に書かれた堕ちて穢れた呪文を唱えよう。
高次の存在として、ただ別れをいうのさ。「さようなら」と。
魔法。それは死の門を開けるための生贄。グロテスクな独裁者の呪い
狂気の叫びと並行する数直線であって、淡い恋心では決してない。
凝縮した魔力は必要最低限の生存エネルギー。失えば、もう蒼穹を見れない。
土と風は寄る辺を失い、海はついに落下した。
操りの城へ逃げる魔物を――もとい神々を突き刺して、
頭の中をグルリと重なる言葉に浸す。幾度も幾度も。
抽象名詞の聖化。自由の贋造紙幣。時間の瀝青。飴玉の説明。
懐かしい思い出を灰色に変化させないために、罪を犯す。
禍々しい雑念は捨て、青い涙を拭う。そして狂った罰を受ける。
人間と言う制限を破る、そのかわり絶え間ない苦しみを受けよう!
僕は焼いてやる。あらゆる神の邪魔を。魔法を使って君を幸せにするんだ。
魔法は――僕の器官であり、僕の翼なんだぜ。
どうしようもない崩れた愛で僕たちは繋がっているんだ。
「幸せかい?」「うん、幸せ」最期の時まで楽しい会話をしよう。
「口づけをして、灰に帰ろう」そう言って、虚空は劈いた。