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最果てに天深く  作者: 高原 景
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 おうな笠盛りゅうせいに戻ったのは男との面談から三刻程後のことだった。笠盛の街の一角にある彼女の屋敷は決して大きなものではない。街を裏から支配する者の住処にしてはこぢんまりとして質素だった。だが、屋敷が他と比べ異彩を放つのは、その敷地に植えられた木の多さである。屋敷はまるで森の中にあるかのように、木々に抱かれている。

 媼が屋敷に入ると、そこには人影があった。彼女の帰りを待っていたらしい、宇麗うれいである。媼は宇麗に外套を渡すと、執務室に向かって先に廊下を歩いた。背後からつき従う宇麗が尋ねる。

「如何でしたか?」

「やはり思った通りでしたよ。西の代表者達の背後には元締めのあの方がいました」

「では、多加羅たからの狼藉にかこつけて緩衝地帯の実権を沙羅久しゃらくに渡すべきという意見が評議会で出されるのは確実なのですね?」

「そのようね。すぐに実権を渡すなどということにはならないでしょうけれど、大きな変化には違いないわね」

「ですが、多加羅若衆があのような狼藉を働かぬことなど、普通に考えればわかることです。何故、西の頭はおかしいと思わぬのでしょう?」

「おそらく、西の方も多加羅若衆が真に狼藉を働いたとは考えていないでしょう。ただ、己の考えを実現するために、この機に乗じたのね。それに、多加羅若衆でないという確かな証もないわ。西の方にとっては好都合だったでしょうね」

「如何なさるのですか」

「さあ、どうしましょう。このままでは評議会でも一致して沙羅久惣領家に上奏することを決してしまいそうね」

 おっとりと媼は言った。緊迫感を欠片も感じさせぬ響きだったが、普段から媼の物言いに慣れている宇麗には、彼女が言葉とは裏腹に鋭く思考を巡らせていることがわかる。

 二人は執務室に入ると向い合って椅子に座った。その部屋もまた素朴な装飾が施されているが、部屋の主の本質をあらわしているのか、温かな雰囲気の中にも無駄を排した機能性があった。

「媼、緩衝地帯で起こっている出来事はやはり沙羅久の仕業なのでしょうか。緩衝地帯を以前から所領内に取り込もうとしていた沙羅久ならば、多加羅若衆の狼藉をでっち上げることも納得出来ます。それに、仮に沙羅久と西の元締めが繋がっていれば、今起こっていることの全てに説明がつきます」

 宇麗の言葉に媼は考え込む様子だった。

「それはどうかしら。いくら沙羅久の力が強くなっていても、多加羅若衆を名乗って狼藉を働くようなことはしないでしょうね。明らかとなった時の危険が大きすぎるでしょう。それこそ緩衝地帯から排除されるのは多加羅ではなく沙羅久になってしまうわ。それに多加羅の惣領が代替わりすれば、沙羅久の優位はさらに強まる筈よ。今危険を冒さずとも、沙羅久はただ待っていれば緩衝地帯を手にすることが出来ると考えているのではないかしら?」

「でも、媼は評議会の動きと一連の出来事に繋がりがあるとお考えになって、あたし達に裏で動いている者を探り出すようお命じになったのではないですか?」

「確かにそうね。でも、思ったよりもこれは厄介なことかもしれないわね。まるで影を追っているよう。目先の出来事に惑わされていては、本質は見えない気がするわ。西の方が評議会に働きかけているのも、もしかすると何か別の裏があるのかもしれないわ。彼もまた利用されている一人かもしれないわね」

「では一体誰が……。捕えた男達を殺されたのは失態でした。奴らから何か引き出せたかもしれなかった。彼らが多加羅の噂を撒いていたのは確実でした。狼藉を実行したのも彼らかもしれません」

「そうかもしれないわね。でも、おそらくその男達は何も知らされていなかったのではないかしら? 貴女達の尋問にも、誰が背後にいるかについては何も明かさなかったのでしょう?」

「はい」

「捕えた者達を殺害した犯人はまだ見つかっていないのね?」

「はい、申し訳ございません」

 宇麗は悔し気に唇を噛む。その様子を見るともなしに見ながら、媼はふと首を傾げた。

「宇麗、貴女は何故彼らが殺されたと思う?」

「一連の出来事の背後にいる者が、口封じのために彼らを殺したのではないでしょうか」

「そう、そうかもしれないわね。でも私はこう思うのよ。もしもあの者達が何も知らないならば、口封じをする必要すらないのよ。それに、あの場所まで入ったのだから、全員を逃がすことも可能だった。それを何故殺したのかしら?」

「それは……」

 媼の言葉に、宇麗は眉を顰める。確かにおかしい。何故、殺す必要があった。しかもその殺し方が尋常ではない。ただ殺すのではなく、耐え難い苦痛を与えてから止めを刺していた。何故――? その思いに応えるように、媼が言った。

「もしかして、彼らを殺すことで何かを示したかったのではないかしら。例えば、己の失態への落とし前をつけるためだったのかもしれないわ」

 おっとりと語られる媼の言葉を聞きながら、宇麗の脳裏に壁一面に飛び散った血の有様が浮かぶ。まるで殺すのを楽しむかのようなそれだった。

「殺したのは、もしかすると捕えた者達の仲間だったのかもしれないわね」

「仲間!? まさか! 仲間ならば、あのように酷い殺し方をする筈がありません!」

「ええ。貴女ならば、そう考えるでしょうね。でも、そうではない者達もいるの。己の失態は死を以て償う、それが筋だと考える者達もいるのよ。あるいは失敗した者達への制裁だったのかもしれないわね」

 穏やかに言った媼の眼差しはひやりと冷たい。それに宇麗は、媼が何を言わんとしているかを悟る。薄ら寒い思いに、背筋が冷える。

「まさか媼は耶來やらいをお考えですか?」

「そうであれば、納得出来ることも多いと思っているわ」

「ですが、奴らが国境を越えて来るなど、今まで一度もありませんでした!」

「表向きはそうね。でも耶來があらゆる汚い仕事を請け負うのはよく知られていること。実際に、嘗て帝国内で起こった事件のうち幾つかは耶來の仕業と考えられているものもあるのよ」

「それならば……耶來が何者かの依頼を受けて緩衝地帯での一連の騒ぎを起こしていたと……」

 宇麗は呟いた。その顔が不意に強張る。

「媼、こんが姿を消したことを先日申し上げましたが、もしも屋敷に侵入したのが耶來の者達ならば、そいつらに連れ去られたのではないでしょうか」

「何故そう思うの?」

「あの子が以前來螺(らいら)の裏側にいて、そこから逃げて来たのは媼も御存知でしょう。孤児院で起こった出来事が耶來の仕業だとして、紺は彼らと遭遇したのかもしれません。姿を見られたならば奴らは紺を殺す筈です。でも、彼女は忽然と消えたんです。孤児院に忍び込んだ者達は紺を知っていたのかもしれません!」

「あり得ないことではないわね。もしそうならば、耶來の者達はこの街のどこかにまだ潜んでいるということになるわね」

 笠盛の街は、今や人の出入りが厳重に見張られている。全ての馬車が中を改められ、蟻の子一匹も見逃さぬ程の体制が敷かれていた。そのような中で紺の行方は杳として知れぬ。宇麗の推測通りならば、紺を連れた者、それがすなわち孤児院での惨劇を起こした者なのだ。だが、さらに悪い事態も考えられる。もしも孤児院以外の場所で紺が既に命を奪われていたら――耶來が、裏側から逃げた者を執拗に追跡し、惨い制裁を下すことは有名な話だった。

青褪めた宇麗の顔を見つめ、媼はがらりと口調を変えた。朗らかささえ感じさせて言った。

「ところで、もう一人捕えた青年がいたわね。彼はどうしたかしら? 傷を負ったと言っていたわね」

はくですか。今はこの屋敷の地下の一室に捕えています」

「まだ何も言わないの?」

「はい」

「会ってみようかしら」

「そのような……何者かもわからぬ者を、媼のもとにお連れするわけには参りません」

「私が会ってみたいのよ、宇麗。貴女、その子をとても気に入っているのでしょう?」

「気に入っているなどと、彼は正体もわからぬ……」

 宇麗は媼が己に向ける表情に口を噤んだ。まるで小さな少女に向けるような眼差しで見詰められている。

「……おうですか? そのような戯言を媼に吹き込んだのは……」

 歯軋りするような宇麗の声音に、媼は可笑しそうに笑った。

「あら、黄は無口な子よ。そんなこと言わないわよ。貴女を見ていれば、すぐにわかりますよ」

 苦々しく顔を歪めた宇麗は、なおもにこやかな媼を見つめると溜息をついた。からかう口調に誤魔化されはしない。宇麗は彼女をよく知っていた。媼はただ己の興味だけで駁に会いたいと言っているのではない。何か思惑があるのだろう。

「わかりました。駁を連れて来ましょう。ただし、あたしも同席しますからね」


「どこに行くんだ?」

 須樹すぎは前を歩く宇麗に問いかけた。答えはなかった。

 突然、捕われている地下の一室から出された。ただ一言ついて来いと言った宇麗は、どこに行くか言おうとはしない。須樹の背後を固める男達も一様に無言である。須樹は答えを引き出すことを諦めると、辺りの様子をさりげなく窺った。

 はじめに捕えられていた場所から馬車で移され、既に二日程は経っているのではないか、と思う。捕われの身であることに変化はないが、どうやら少し待遇は改善されたらしい、と須樹は思っていた。彼らの仲間を救ったのが良かったのか、それとも怪我の治療を優先しているのか、尋問らしいものも受けていない。今も後ろ手に縛られてはいるが、背後を固める男達にもはじめほどの敵愾心が感じられない。何よりも宇麗の態度が僅かに柔らかくなっている。会話らしきものまで交わすようになっていた。もっとも、今目の前を歩く宇麗はどこか苦々しい様子である。

 奇妙なものだ、と須樹は前を行く背中を見て思う。相容れぬ立場でありながら、二人の間にあるのは互いを尊重するかのような空気だった。それは共感と呼ぶのが相応しい。

 宇麗は一つの扉の前に辿り着くと、須樹の背後の男達を振り返った。

「ここで待て」

 ですが、と言いかけた男達を視線一つで黙らせると宇麗は扉に手をかけた。

「入れ。お前に会いたいと仰せの方が中でお待ちだ」

 命じられて、須樹は部屋の中に踏み込む。そこはこぢんまりとして温かみを感じさせる部屋だった。壁に掛けられた織物は柔らかな春の景色が刺繍されている。そして奥の窓辺に立つ人もまた、その部屋の雰囲気を纏うかのような様子だった。初老の女である。淡い衣の色彩が、結い上げた白銀の髪に映えている。

 部屋の中へと入った須樹に、女が視線を向ける。須樹の背後に宇麗が立った。扉が閉ざされる。

「連れて参りました」

「御苦労さま」

 おっとりと女が言う。声音までも春の陽射しを思わせる柔らかさである。

「貴方が駁と呼ばれている青年ね?」

 女はふと首を傾げた。滑るように須樹に近付くと、彼の顔を見上げる。そして何を思うのか、涼やかな笑い声をあげた。

「宇麗、この子が何者か、貴女は本当にわからないの?」

「え……?」

 宇麗の訝しげな声に、女はさらに笑みを深めた。

「貴女もまだまだ、知らなければならないことがあるようね。何よりも人を知らなければ」

「まさかこいつが何者かおわかりに……?」

 宇麗の声が上擦る。

「そうねえ。私は貴方が何者かわかる気がするわ。私の考えが正しければ、貴方が何故何も言おうとしないのか、それもわかりますよ。とても賢明だこと」

 須樹はまじまじと女を見やった。女の言葉とその眼差しに、築いた筈の警戒心が解けるような心地がする。

 ――呑まれている。己を見つめる女の視線に、絡め取られていた。

「媼! どういうことです!? こいつは一体何者なんですか?」

 慌てふためく宇麗に、女はただ微笑んだ。

「それは貴女が自分でつきとめるべきことですよ」

「ですが……」

 さらに言い募ろうとした宇麗だったが、女の表情にはっと言葉を呑み込んだ。

「わかりました……」

 宇麗の声を背後に聞きながら、須樹もまた驚きを感じていた。

(媼……)

 宇麗が口走ったそれを心中に繰り返し、愕然とした。彼とてその名を聞いたことがある。思わず問うていた。

「貴女が、媼なのですか?」

「ええ、そうよ。私を知っているのかしら?」

「緩衝地帯の卸屋を纏めている元締めの一人が、そのように呼ばれていると聞いたことがあります」

 媼はくすりと笑うと、須樹の背後を見やった。

「宇麗、どうやら貴女のそそっかしさはまだまだなおっていないようね。貴女はこの子に私達の正体を告げてしまったのよ。正体を探るどころか、この子に一歩先んじられてしまったわね」

 媼、と口走ったのは無意識だったのだろう。宇麗が苦々しく顔を顰めた。

「貴方は何か私達に聞きたいことはないかしら?」

 突然問われ、須樹は媼を見つめた。はるかに背の高い男を前に柔らかく笑んだ媼は、目を細めた。

「貴方も、今の状況は不本意なのではなくて? 宇麗の話では貴方は自分の名前すら明かそうとしていないようね。私達も、貴方を酷い目に遭わせたいわけではないのよ。ただ真実を知りたいだけ」

「それは俺も同じです」

 我知らず須樹は答えていた。

「貴女達が俺を捕え、何者か言わせようとしているのは、何か理由があるのでしょう」

「ええ。そうよ。貴方はどんな風に考えているのかしら?」

「俺には、貴女達が何かを守ろうとしているように思えます」

「そう、貴方はそんな風に思うのね」

 須樹は頷いた。何故か、この女性に偽ることが無意味に思えた。

「ですが、それは俺も同じです。俺にも守りたいものはあります。貴女達が何を考えているのか、自分が何に巻き込まれたのかわからなければ、名前の一つとて明かすつもりはありません」

 そう、と媼は呟いた。須樹を見つめる女の瞳に、僅かに測るような色が過った。次いで出た媼の声音は低かった。

「やはり愚か者ではないわね。私も、有望な若者の前途を閉ざしたくはないわ。でも覚えていてちょうだい。今緩衝地帯は大きな流れの中にある。流されぬために、私はどのようなこともでもするつもりよ。そのためならば、貴方の人生を奪うことを躊躇いはしないわ」

 冷徹な響きに、媼、と宇麗が囁きかける。媼は宇麗を見つめた。

「宇麗、見極めなさい。この子が我らにとってどのような意味を持つのか、害なす者か否か。それが貴女の役割よ」

「……はい」

「貴方に会えて良かったですよ、駁」

 にこりと笑って媼が言った。


 再び地下の一室に戻されて、須樹は闇の中で座り込む。

 媼との対面の後、宇麗は彼に一言も口をきかなかった。僅かに軟化したかに見えた彼女の態度が、再び頑ななものとなっているのに彼は気付いていた。

(媼……)

 内心に呟く。

 緩衝地帯の世情にさほど詳しくはない須樹でもその名は知っている。緩衝地帯を実質的に支配しているのは、卸屋である。中でも特に力を有する者達、その一人が『媼』と呼ばれる存在である。

 緩衝地帯で生まれ育った彼の父親は、間近に卸屋の所業を見てきたせいか、卸屋という存在そのものに良い印象を持っていない。その影響を須樹もまた受けていた。だが、父親が唯一その人となりを認める発言をしたのが媼――つまりは先程対面した女性だった。貧しい者に自らの富を分け与え、目先の利潤ばかりを追い求める卸屋達とは一線を画しているのだと、何かの折にこぼしたことがあった。

 だが、例え媼が如何に高潔な人物であろうとも、須樹にとっては何ら救いになることではなかった。直接に対面した媼という人物は、掴み難く、底知れぬ凄味のある女性だった。何よりも、彼女は緩衝地帯を裏から支配する存在なのだ。

 何故、卸屋の存在にまで考えが及ばなかったのか、今となってはその方が信じられぬ。宇麗の口調から、彼女は媼の傍近くに仕える者なのだろう。その彼女が、媼の縄張りで不審な動きをする者達を見張っていたのは不思議でも何でもない、むしろ当然のことだったのだ。そこに迂闊に踏み込んでしまったのは、やはり己の失態だ、と須樹は苦く思う。

 ――貴方が何故何も言おうとしないのか、それもわかりますよ。とても賢明だこと。

 媼の言葉が引っ掛かる。彼女は、彼が若衆であることを見抜いたのだろうか。媼の思惑など彼にわかろう筈もなく、ただ焦燥と不安ばかりがあった。

 若衆であることを明かさなかったことに、須樹は今更ながらに安堵する。彼がいるのは緩衝地帯で絶大な力を有する者の懐の内なのである。己の置かれた立場の危うさを、須樹はすでに自覚していた。緩衝地帯には絶対的な原則がある。すなわち、二惣領家からの干渉を受けず、中立と自治を貫くということであり、それは緩衝地帯の人々にとって誇りでもあるものだった。

 須樹の存在はその絶対原則を揺るがしかねないものなのだ。彼自身がどれほど個人の行動なのだと言ったところで、多加羅若衆の副頭が卸屋の縄張りに踏み込み何事かを探ろうとしていた、その事実だけでも均衡を揺るがす結果になりかねないだろう。

 須樹はぎり、と唇を噛みしめていた。

 媼の言葉、冷ややかに射竦める視線――彼女の意を受けて、宇麗は何としても須樹から真実を聞き出そうとするだろう。仄かに生じていた共感など、甘いまやかしでしかない。何よりも須樹自身が、このまま捕えられているわけにはいかないのだと痛感していた。隠そうとしても、何時須樹が若衆であることが明らかとなるかわかったものではない。

 ――何としても逃げないと……――

 須樹は両手を握り締めると、そこに額をつける。拳は冷たく、己の鼓動が鈍く響いていた。

 見張りの連中は彼が傷を負っていることを知っている。そのせいもあるのか、最近でははじめほどの警戒を見せてはいなかった。あるいは仲間の命を救ったことが、油断に繋がっているのか、以前には見られぬ隙がある。だが、先程の宇麗の様子から、この先さらに厳重に見張られることになるかもしれぬ。

 逃げるなら今しかない。

(次の食事の時だ)

 食事を入れるために扉が開かれる、その時しか逃げる機会はない。見張りの人数はおそらく二人、食事を持って来た者をあわせても三人、不意をつけば他の者達に気付かれることなく倒すことが出来るだろう。媼の元に連れて行かれた際に、多少なりとも建物の構造を見ることが出来たのは幸いだった。どちらの方向に行けばよいか、だいたいの見当もついていた。

 須樹は決心を固めると、暗闇の中、目を見開いた。立ち上がると、扉を開けた者から死角となる位置に移動する。扉の向こうに意識を凝らし、その場に座り込んだ。

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