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最果てに天深く  作者: 高原 景
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 痛みの合間に見た夢は、どれも輪郭がぼやけたものばかりだった。だが意識が浮上するたびに、夢から逃れられた安堵と、その余韻に凝る冷たさに慄いていた。

 夢は、常に何かを追いかけているようだった。ある時は、遠く小さな背中が見えた。一散に駆けるその姿を追おうとするが、足はまるで前に進まない。体が重かった。声の限りに叫ぼうとして、出たのは掠れた息ばかり。圧迫するような苦しさは鼓動のせいだけではなく、言い様のない焦燥のせいもあった。止めなければ、と思う。伸ばした手の先で、小さな姿が振り向いた。銀の髪が光を弾き、幼い容貌の中、強い藍の瞳が睨みつけていた。そのまま、踵を返して闇に消えた。

 夢はそこで終わる。そして記憶の底に澱のように沈む。

 時折声が聞こえるような気がした。知っている声もあったように思う。そっと触れる手は優しく、まるで思うままにならぬ体の一点、そこだけが温かかった。懐かしい、と思い、その理由が掴めないまま、しかとはわからぬ夢にまた落ちる。

 浮き沈みを繰り返すように不安定な眠りは、しかし唐突に途切れた。目を開ければ、柔らかく朱華から象牙へと傾斜する色彩が視界に広がった。見覚えのないそれに辺りを見ようとして、引き攣れたような痛みが右肩にはしった。呻き声をあげて重い腕をあげる。左手で肩に触れると、ざらついた布の感触があった。

かい、気がついた?」

 声に顔を巡らせると、栗色の艶やかな髪の一房が視界に入り、次いで覗き込むかのの顔が見えた。

「……叶?」

 声はひどく掠れていた。

「良かった。気付いたのね。出血がひどかったから、一時はどうなることかと思ったのよ」

「ここは……?」

 問いながら見回せば、なめした毛皮のような白い布が、ぐるりと周囲を取り巻いている。木造りの小さな卓と椅子があり、卓の上には水入れといくつかの小鉢があった。灰にとっては馴染み深い薬草の匂いが籠っている。叶以外に人の姿はない。寝かされている寝台の他にも、いくつかの寝台があった。小さな医療室といった趣である。

來螺らいらの宿営所よ。気分はどう?」

「……ぼんやりする」

 言いながら身を起こそうとすると、掛け布の上から柔らかく胸を押さえられた。

「だめ、寝ていなさい。熱も出てるのよ」

「どれくらい眠ってたのかな……」

「一日よ。丈隼たかはや達があなたを運びこんでからずっと。今は夕方」

 再び上を見る。春の花を思わせる色彩は、捲り上げられた入口から差し込む夕日のせいらしい。その入口に人影があった。覗き込み、快活な声を上げる。

「お、気がついたか」

 言いながら入って来たのは自警団の蘇芳の衣を粋に着こなした丈隼である。颯爽とした歩みに疲れは感じられなかった。

「傷の具合はどうだ?」

「よく、わからない」

 覚束ない答えだったが、丈隼は気にした様子もなく傍らの椅子に座った。不意に灰は気を失う前の出来事を思い出していた。不安がわき起こる。

「あの後、どうなったんだ? 皆は?」

 灰の問いに丈隼の表情がにわかに真剣なものとなった。

「その前に聞きたい。お前を傷つけた奴が、話に出ていた聖遣使しょうけんしなのか?」

「多分」

「やはりな。名前を聞いた時の若衆わかしゅうの様子から、そうだろうとは思ったが……」

「名前?」

「お前が言ったんだよ。確か……そうたつ、だったかな。覚えてないのか?」

 名を言っただろうか、と灰はぼんやりと考える。言ったようにも思う。聡達そうたつ、と。

「誰も怪我をしなかったか?」

 懸念を込めて問えば、丈隼は呆れたような表情になった。まずは自分の心配をしろ、とその顔は言っている。

「いや、あの後は何も起こらなかった。その聖遣使を捜そうとした奴もいたが、結局どこに潜んでいるかわからなかった。何よりお前の怪我の方が大事だったからな。多加羅の医術者のところまでは時間がかかるから、來螺の宿営所までつれて来たんだ」

「そうか……」

「若衆の連中もついて来たがったが、そのまま多加羅の街に戻ってもらった。あいつらが来ても何もならんうえに、來螺にとっても若衆が来るのは……何と言うか、色々と厄介だ。それに、火つけの犯人を警吏けいりに預けないとだめだし、あいつらは今日が本番だからな」

 言われて今日が祭礼の三日目、若衆の見せ場である剣舞つるぎまいが行われる日であることを思い出した。夕刻、ということはまだ行われてはいないだろう。剣舞は祭礼の最後、夜に行われる。篝火に浮かび上がる華麗で勇壮な舞と、巫女役の祈りの儀式だけを見に訪れる者も多い。

「無事、間に合ったんだな……」

 言いながら、またも眠気に襲われる。安堵のせいかもしれなかった。意識が解けるように拡散した。遠く、丈隼の声が聞こえる。

「眠ったのか……?」

 違う、と言おうとして、なぜか口が動かなかった。

「このまま寝かせてあげましょう。何だか、すごく無理をしてたみたいだもの」

「そうだな」

 丈隼の声には苦々しさがあった。

「無理をし過ぎだ」

 そんなことはない、と灰は思う。

 ――俺は大丈夫だから……――言葉は声にならず、灰は再び眠りに落ちていた。



 その朝のことである。須樹すぎ達は後ろ髪を引かれるような思いで來螺の若者達と別れ、多加羅の街へと戻った。まず警吏に捕えた犯人を引き渡したが、その際にも男は自失したまま一切の抵抗を見せなった。

 そのまま急ぎ鍛練所たんれんじょへと赴いたのは、渦中にいた自分達が、最も状況を把握できていなかったせいである。倉庫一つが崩落し、一夜行方をくらましていた彼らである。峰瀬みなせが彼らのことを敢えて伏せていたことを知らず、秘密裏の彼らの行動も明らかとなっているだろうと考えたのだ。周りがどのように言っているのか、それを確かめたかった。

 剣舞の本番に向け、早朝から鍛練所に集っていた若衆は、彼らの話に目を剥いた。ともに行動していた一部の若衆以外は、須樹達が灰とともに火つけの犯人を追っていたということを知らなかったのである。それも犯人を捕えたとあれば、驚きは尚更である。その中で加倉かくらだけが奇妙に冷静に見えた。

「そうか、捕えたか。よくやったな」

 若衆頭に与えられた部屋の中、加倉は己の意向を無視して勝手な行動に出た彼らに対して言った。叱責すらなかった。下手をすれば若衆からの追放もあり得る、と覚悟していた須樹達は呆気に取られる。一人仁識(にしき)だけが観察するように若衆頭を見つめていた。

「お咎めにはならないのですか?」

 須樹の問いにも加倉は鷹揚に笑んだ。

「なぜ咎める必要があるのだ。火つけの犯人は街に害悪をもたらす。何としても捕えねばならなかったのだ。若衆が捕えたとあらば、この上もない名誉となるだろう。惣領にも、早速に私から御報告申し上げよう」

「なるほど……」

 仁識の低い呟きを聞いたのは、傍らにいた須樹だけだった。思わずその顔を見れば、皮肉な中にも楽しげな笑みがある。何事かを企むようなそれだった。

 さすがに疲労のせいで重い体を引きずり、各々の家に帰ったのはまだ八つの刻だった。剣舞は祭礼の最後、夜である。十四の刻まで僅かでも休息を取るように、というこれもまた普段からは考えられぬ、耳を疑うような加倉の配慮だった。


 そして祭礼は最高潮を迎える。

 若衆の剣舞は例年に比しても大変な盛況振りだった。詰めかける人波は神殿前の広場から溢れ、果ては家々の屋根にのぼってまで見ようとする者もあらわれる始末だ。

 多加羅惣領家の面々も列席し、その前で披露された剣舞は大成功に終わった。惜しみない喝采が若衆に送られ、その後の悠緋ゆうひを巫女役としての儀式をも、冷めやらぬ興奮が包み込んでいた。その熱気の中、一動作で見事に巻書を広げた悠緋の姿に、来年の吉凶を占う人々は大いに沸いた。白く閃くそれは美しく、軽やかに潔く、来る年の明るさを人々に信じさせるに十分だった。

 そして重々しい司祭長の祈祷と託宣が祭礼の儀式の終わりであり、最後の夢の始まりである。すべてを終えた司祭長が神殿に下がり、司祭達も姿を消した後、供物を捧げるための祭壇が手早く片づけられる。次いで毛氈が敷かれ豪奢な机と椅子が運び込まれた。広場の奥に設えられたそこに、惣領家の人々、惣領である峰瀬みなせを中央に透軌とうきと悠緋が座る。控えていた下男達が大樽を運び込めば、広場を取り囲む人々から歓声が上がった。

 大樽の中身は、惣領家から街衆へと振舞われる、この地方特産の甘水酒かんすいしゅである。本来なら雲の上の存在である惣領家の人々とともに酒を飲む、それがこの祭りの真の締め括りだった。思い思いの器を手に次々と広場を訪れる人々は、酒を注がれ、惣領家の三人にそれを高々と掲げて一気に干す。多加羅の人々にとってはまたとない栄誉であり、一抱えもあろうかという巨大な杯で、一息に酒を飲み干す豪の者もいる。

 男女を問わず、どのような身分の者であれ平等に一杯の酒が振る舞われ、そして朝まで続く祭礼に酔い痴れるのだ。

 この行事の始まりは、まず惣領家の者が杯を干することから始まる。

 悠緋は、父と兄の杯に恭しく注がれる透明な液体を見やって、小さく溜息をついた。彼女にとってこの行事は単に退屈なだけではなく、苦痛でさえあるものだった。惣領家の三人の前には贅を凝らした食事が置かれ、食べることも飲むこともできる。だが、これからの長い時間、にこやかな顔で酒を飲む人々を見続けるのかと思うと、出るのは溜息ばかりだ。何より酒をまだ許されていない悠緋にとっては、なぜそれほどに皆が熱狂するのか理解できない。それよりも街中で最後の夜とばかりに繰り広げられる華やかな催し物を見る方がよほどいいと思う。

(だいたい、ここじゃなくても皆浴びる程にお酒を飲んでいるでしょうに)

 悠緋はちらりと若衆に目をやった。この行事の際には南軍と、若衆の主立った者達が背後に控えることとなっている。護衛という意味合いもあるが、色鮮やかな正装に身を包んだ彼らの姿はそれだけで場を盛り上げる。若衆からは若衆頭と副頭、そして錬徒が控えることとなっていた。

(どうしていないのかしら……)

 内心に呟く。灰の姿がなかった。剣舞と巫女役の儀式の際には惣領家の一員として列席するはずだったが、一向に姿をあらわさず、若衆の中にも見当たらない。

(何かあったのかしら)

 彼女は火つけの犯人を巡る一連の出来事は知らされていない。つらつらと考えていると、峰瀬が杯を手に立ち上がった。彼女と父親を挟む形で座っている透軌がそれに続く。悠緋も慌てて立ち上がると、申し訳程度に置かれている水の入った杯を手に取った。

「今宵、皆には思うまま楽しんでもらいたい。我ら多加羅に栄えあらん」

 峰瀬は朗々と言うと一気に杯を干した。そして掌程の木札を高く遠くに投げる。その木札を取った者が第一に杯を干する権利を得るのだ。我先にと手を伸ばす群衆が、大きな生き物のように揺れた。大柄な男が木札を掴み取り、両手を天に突き上げる。拍手と歓声が起こった。

 男が惣領の前に踏み出そうとしたその時、背後から声が上がった。

「暫しお待ちを。惣領にお願いがございます」

 若衆の一人が前に進み出ると惣領家の三人に向かって叩頭した。広場を照らし出す篝火のせいなのか、少し癖のある髪が奇妙に赤く見えた。何事かと注目が集まる。

「仁識! 何をしているのだ!」

 慌てふためいた声は若衆頭の加倉である。

「よい。どうしたのだ」

 落ち着いた峰瀬の声に、仁識は更に深く頭を下げると明瞭に言った。

「どうかこの場を離れる許可をいただきとうございます」

 広場が静寂に包まれた。何という不敬――咄嗟に顔を顰めた人も多い。惣領家に仕える者として傍に控える栄誉を拒む、人々にはそのように聞こえた。許されぬことだ。だが峰瀬は面白そうに笑みを浮かべる。

「理由を聞こう」

「灰様が深い傷を負い、街の外におられます。私は灰様をお迎えにあがりたく存じます」

 ざわりと人々がどよめいた。峰瀬は目を細めると、なおも恭しく頭を下げる若衆を見つめた。その表情に変化はなかったが、次の声音にどよめきが俄かに静まる。

「なぜ、そのようなことになったのか申してみよ」

 仁識は灰の負傷を加倉に伝えているが、峰瀬までその報がもたらされているかどうかは知らない。峰瀬の言葉からは、それを推し量ることはできなかった。口を挟む者はいない。誰もが耳を欹てている。

「今朝早く、逃亡していた火つけの犯人が捕えられ、我らは警吏に引き渡しました。しかし実際に犯人を捕えたのは灰様と來螺の者です。そして深手を負われたにも関わらず、灰様は我らを気遣われたのです。何より犯人を獄舎に戻すことと剣舞を優先すべきとのことでしたので、断腸の思いで來螺の者に灰様をお預けしました」

 背後で呆気に取られて仁識を見ていた須樹は思わず額に手をやる。開いた口が塞がらぬとはこのことか、と思い、全くの嘘ではないことに気付いた。否、聞きようによっては全て真実だ。気を失う寸前に灰は確かに彼らを気遣っていた。そして仁識は誰が犯人の引き渡しと剣舞を優先しろと言ったかは曖昧にぼかしている。傷を負ったのも何によるのか明言していない。

 仁識は顔を上げると峰瀬を正面から見た。

「灰様は惣領家の御一員、本来ならこの場におられるべきお方です。それに加え、我らにとってはかけがえのない若衆の仲間でもあります。どうか、灰様の元へ赴くお許しを」

 須樹は驚きをも圧してわき起こる思いに笑みを浮かべた。素早く前に進み出ると、仁識の横で叩頭する。高らかに言った。

「どうか私にもお許しを」

 背後で息を呑む気配がする。加倉だろうか。

「なるほど。だが私は許しを出すことはせぬ」

 峰瀬が言った。思わず落胆を感じた須樹は、続く峰瀬の言葉に顔を上げる。

「お前達も灰も若衆の一員であるならば、私ではなくそこにいる若衆頭が決めるのが相応しかろう」

 突然名指しされ、人々の視線を一身に浴びた加倉が目を見開いた。僅かに青褪めて見える。

「どうだ。この者達に許しを与えるか? 火つけの犯人を灰が捕えたのであれば、その労を労ってやりたいものだ」

 峰瀬の言葉に加倉は何かを言いかけ、口を閉じ、そして大きく息を吸った。

「ですが……火つけの犯人を捕えたのは若衆であり……灰様は、若衆では……」

 言葉は弱々しく、消え入るようにして途切れた。その表情に浮かんだのは、恐れであるように須樹には思えた。何に対しての恐怖なのかわからない。だが、加倉が考えていることは手に取るようにわかった。

 加倉は灰を若衆から追放した。だが仁識は灰が若衆の一員であるかのように言っている。傷を負ったその仲間の元へ行きたいと言っているのだ。ここでそれを否定し拒絶すれば、火つけの犯人を捕えたのは若衆ではなく、あくまでも灰個人と來螺の若者達、ということになるだろう。何故かはわからぬが、加倉は若衆が犯人を捕えた、というその点にひどく拘っているようだった。あたかも、加倉自身が若衆の手で犯人を捉えることを意図していたかのような言動をしていたことに気付く。

 傍らの仁識の顔を見れば、静かなそこには如何なる思惑も窺えない。だが、おそらく朝加倉と対したあの時すでに、仁識はこうすることを決めていたのだろう。彼が浮かべた笑みの意味を、今更ながらに知る。

(大したものだ)

 加倉は若衆が犯人を捕えたというその栄誉を手放せないに違いない。そして來螺の者達が捕えたと認めるのは尚更に許せないだろう。そうであれば導き出される答えはただ一つだ。すなわち、仁識の言葉に頷き、再び灰を若衆の一員と認めること、それしかない。そして須樹はその言葉を聞いた。何かを無理矢理に抑えつけたかのような声音だった。

「若衆頭としてこの者達に許しを与えます」

 仁識と須樹は深々と頭を下げた。

「ありがとうございます」

 それぞれに淡々と言うと立ち上がる。加倉の奇妙に歪んだ顔を一瞬見つめると踵を返した。峰瀬は普段と変わらぬ落ち着いた表情の中にも、どこか面白そうに事の成り行きを見守っている。その時、広場を後にしようとした二人に澄んだ声が掛けられた。

「お待ちなさい」

 振り返ると、悠緋が立ち上がっていた。

「灰は大丈夫なの?」

 花鳥を描いた衣が揺れる。篝火の明かりに浮かび上がる姿は、艶やかだった。

「命に関わる程の傷ではございませんでしたので、大丈夫かと思います」

 仁識の答えに、少女はほっとしたのか表情を緩めると、力が抜けたようにすとんと椅子に座った。一礼すると二人は広場を後にした。

 人々が彼らのために道を開ける。そして進む二人の後に、人波の中から歩み出し、同じ歩調で続く者達がいた。一連の出来事を見ていたらしいそれぞれの範の一員である。冶都やとの姿があった。街の見回りをともにした者達がいた。剣舞への参加資格を持たぬまだ新参の幼い者もいる。

 須樹は小声で傍らの仁識に言った。

「やっとわかったぞ」

「何がだ」

「この前、灰に星見役ほしみやく殿には若衆を抜けたことを言うなと言っていただろう」

「それがどうした」

「言うな、ではなく、言う必要はない、ということだったんだろう。あの時すでに灰が若衆に戻るにはどうしたらいいか、考えていたんじゃないのか?」

 仁識はにやりと笑った。

「さて、どうだろうな」

 須樹もまた思わず笑い、そしてふと顔を引き締めた。

 彼らを見守る群衆の中に父親の姿があった。じっと須樹を見つめるその顔を、彼もまたまっすぐに見返す。ふと、父親が笑んだようだった。そして小さく、しかしはっきりと頷いた。その前を通り過ぎ、須樹は振り返りたい衝動を抑える。何故か目頭が熱かった。目を瞬いて見上げれば、祭りの喧噪を透かして天はどこまでも深かった。

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