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最果てに天深く  作者: 高原 景
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 祭礼まで三日を残すばかりとなった日、十二あるはんは見回りを免除され鍛錬所たんれんじょに集められた。日々の見回りと厳しさを増す剣舞つるぎまいの稽古に、広場に集まるどの顔にも疲れが色濃く出ていたが、疲労をも圧してその表情にあらわれているのは緊張と高揚である。

 その日は祭礼三日目、つまり六日後の本番に向けて、惣領家の人間もまじえての本格的な下稽古が行われるのである。街衆には秘されるため鍛錬所で行われるそれに、惣領家からは若衆わかしゅうの剣舞を神殿に捧げる役目である透軌とうきと、巫女役みこやくを務める悠緋ゆうひが訪れる。惣領家直系の子弟が鍛錬所を訪れることはこの時以外にはなく、いずれ己の主となるに違いない透軌を迎えるため、若者達にとっては祭礼の前の第一の晴れ舞台とも考えられていた。

 そして中央の舞い手の指名も、例年この日に行われるのが習わしである。古くから多加羅たからに伝わる武道の型を模したその舞いは若衆であれば誰もが修めるものではあるが、祭礼の場において舞うのはたった一人である。通常であれば頭が、それ以上の舞い手があれば頭からの指名によって決定されるものだった。

 広場に集った若者達は興奮を抑えきれず、己の主たる人々の訪れを今や遅しと待ちかまえていた。特に若衆に入ったばかりの幼い面々にとっては初めて惣領家の人間と間近に接する機会であり――むろん灰を除いて、ということではあるが――そのはしゃぎようは並々ならぬものがあった。

「おい、何とかしてくれ、あのがきどもを」

 見るに見かねて言う冶都やと須樹すぎは苦笑で答える。幼い者達はまだ祭礼で果たすべき役割はないため、この場で求められるのは静かに礼儀正しく惣領家の人々を迎えることなのだ。

「そのうちいやでも静かになるさ。俺達もそうだっただろ」

 須樹の言葉に冶都も確かに、と頷いた。かつて彼ら自身が同じようにはしゃぎながらも、実際に惣領家の人々があらわれた時には、緊張のあまり硬直して立ち尽くしていたのだ。

「透軌様が今回は来られるんだよな。確か俺達よりは一歳上のはずだが……」

 冶都自身も緊張しているのか、他愛もないことをぶつぶつと言いながら、まだ誰もあらわれてはいない入口を見つめている。

「おい、かい、お前透軌様とは話したことがあるんだろ? どんな方だ?」

 冶都の問いかけに灰は一瞬困ったような表情を浮かべた。

「俺は一回も話したことがないんです。多加羅に来た時接見の間で見ただけで、それ以来会ったことはありません」

 灰の答えは淡々としたものだったが、冶都は顔を赤らめた。

「すまん、いらんことを聞いたな」

 灰は気にした様子もなくそれに首を振っている。笑みさえ浮かべているその表情を、須樹は複雑な思いで見守った。どうやら灰が惣領家に厚く遇されているわけではないことに、そして灰自身が惣領家に対して穏やかならざる思いを抱いているらしいことに須樹は気付いていた。

「若様、気をつけた方がいいですよ」

 横合いから口を挟んだのは隣に整列している範の先頭に立つ仁識だった。斜め後ろに立つ灰を振り返っての言葉である。彼はどうやら彼なりに灰のことが気に入ったらしい。茶化すようなその呼び名には悪意ではなく砕けた気安さが感じられた。

「何に気をつけるってんだよ」

 冶都の声にあからさまに白い目を向けた仁識ではあるが――この二人は呆れるほどに相性が悪いのである――普段のように辛辣に応酬することはなかった。

「このような場で若様がどれほど複雑な立場か、お前達は気付いてないらしいからな」

「どういうことだ?」

「貴族的思考というやつだ。支配の基本のその一は、己の権威を絶対とすることだ。だが、ここに意に沿わぬ出来損ないの同族がいたとしよう。さあ、どうする?」

 あまりな比喩に須樹の顔が険しくなるが、灰はあっさりと答えた。

「その出来損ないが単に愚かであれば問題はないですね。己の道具として利用するもよし、捨て置いて見捨てるもよし。だが無視出来ぬ程にそれが度外れていたなら、己の名を貶めかねない厄介者ともなる」

「逆も然り、ですよ、若様」

 仁識は意味ありげな笑みを浮かべ囁くようにして言葉を続けたが、折しも遠く馬車の響きが聞こえ俄かにどよめいた若者達の中で、須樹はそれを聞き取ることができなかった。どよめきは波が退くように消え、かわって張りつめた静寂が辺りを覆う。

 馬車の音はやがて鍛錬所の手前で止まった。まずあらわれたのは惣領家の屋敷で透軌付きとして仕えている老年の家司けいしだった。家司は整然と並ぶ若衆に鋭い視線を投げると、重々しい響きの声を発した。人を圧するに慣れた者の声音だった

「これより透軌様と悠緋様がこちらにお越しになるが、決して失礼のないよう、厳に心掛けよ」

 張りつめた静けさの中、家司は傲然と顎をあげて続けた。

「灰様はおられるか」

 我知らず体を強張らせた須樹は、無言で己の横をすり抜けて行く少年を見やった。若衆の前に灰は一人立つ。

「灰様はこちらへ。祭礼では惣領家の一員として列するよう惣領の御命令です。ただし灰様は特に何も役目はございませぬ故、後ろに控えていただくだけで結構です」

「わかりました」

 家司の声が敬意に欠けるという点でむしろ情感が籠っているのに対して、灰の声は虚ろなほどに何も感じられなかった。冶都の身じろぐような気配に、須樹はそれに気付いたのがどうやら彼だけではなかったらしいことを知る。

 程無くして入口に姿をあらわしたのは、華麗に髪を結い上げ、白の絹衣の上に鮮やかな菫色の打掛けを纏った悠緋であり、高位の武官が着る装束に身を包んだ透軌だった。その鉄紺の胸元には鷹閃ようせんを模した勇壮な図柄の刺繍が施されている。さらに続くのは悠緋付きの女官連中だろうか、憮然とした表情は祭礼のためとはいえ若者ばかりの場所に大事な姫が赴くことへの不満のためだろう。

 最後に入って来たのは神殿の司祭らしい青年だった。青年は灰を一瞬凝視したが素早く目を伏せるた。それは、彼が誰であるかを知った人々が向ける好奇心もあらわな視線に比べれば極めて控えめなものだったが、灰はなぜか焼けつくような強さを感じた。そしてそのように感じる程にどうやら動揺をしているらしい己に、腹立たしさを覚える。若者達の視線を痛いほどに背に感じながら、灰は背筋を伸ばした。そうしなければ、足元がぐらつくようなおぼつかない感覚に捕らわれそうになる。

 大気を打つような音が広場に響き、若者達はその場に一斉に叩頭して主である者達を迎えた。初めてのことにまごつく幼い少年達も慌ててその動作にならってぎくしゃくと頭を下げた。灰はその一種異様な光景を見つめる。跪く彼らの姿に、むしろ地中に落ち込むような心地を感じたのは灰の方だた。

 いかにもそれを自然に受け止めている二人に視線をやれば、自分を見つめていたらしい悠緋と目が合った。悠緋は気分を害したように彼を睨みつけた――少なくとも灰にはそう思えた。仮にそれ以外の何かがそこにあったと気付いていたとしても、それが何なのかはわからなかっただろう。

 灰が透軌と悠緋に会うのは接見の間以来のことである。小さく一礼する彼に、透軌は無表情と紙一重な穏やかさで、悠緋は取り澄ましたような冷やかさで応えた。

「ではこれより一連の流れに従い、祭礼本番と同じく儀式の手順を確認致します」

 家司が透軌に向かって恭しく言うと、透軌が頷くのも待たずに加倉かくらへと視線を送った。

「中央の舞い手はまだ決まっておらぬのか」

「はい。私は本日の舞を御覧いただき、透軌様に中央の舞い手を決めていただきたいと存じます」

 加倉の答えに須樹のみならず多くの若衆が目を見開いた。彼らの誰もが、おそらくは頭自身が名乗りをあげるに違いないと考えていたのである。

「ふむ。それもそうだな」

 家司は頷くと、己の主を振り返った。

「透軌様、よろしいか?」

 問いではなかろう――灰は落ち着いた表情で頷いた透軌を見やりながら、ふと思った。それは真実の意味において問いではない。おそらく透軌にとっては己に仕える者の言に頷くのは自然なことなのだ。その表情にあるのは愚かさではなかったが、どこか漠として掴みどころのない――いわば空白だった。

「舞の隊形を整えよ」

 加倉の一声に若衆の整然とした列が崩れ、舞い手ではない者達が壁際へと退いた。残った舞い手達は各々の配置へと素早く移動して立つ。その彼らの前に進み出たのは司祭の青年だった。彼は若者達の正面ではなく斜めに立つと、己の額と左右の肩に触れ、最後にその手を握りしめて胸の真中に押し当てた。神への崇拝をあらわす動作である。

 次に透軌が進み出ると若衆の前に立ち、誰もいない正面に向かって恭しく頭を下げた。ここに至って漸く灰は司祭の青年が司祭長の代理として来たらしいことに気付く。神殿でもっとも権威ある人物がまさかこのような場を訪れるはずもなく、かわりに青年が送られたのだろう。もっとも真に代理を務めるわけではなかろう。司祭長その人の位置に立つは不敬であり、実際少し離れた位置に立って若者たちを注意深く見詰める姿から、祭礼に向けて不手際がないかを厳しく見極めるために遣わされたと考える方が相応しいのだろう。

 透軌は跪くと腰に帯びた剣を手に持つ。細身の剣の鞘には、銀と翡翠で象嵌された蔦が、滴る血のような紅玉に絡みついている。見事な意匠だった。

「神の慈悲の我らに賜わらんことを」

 供物を捧げる常套句を落ち着いた声音で言うと透軌は剣を高く捧げ持った。司祭の青年が進み出てそれを受け取ると、静かにもとの位置へと戻る。実際には司祭長が供物を捧げた者に対して聖句を言うのだがここではそれはない。

 次いで行われた若衆の剣舞は見事なものであった。第一組の舞は空駆ける風をあらわしており、飛燕の動きに着想を得たものである。素早く身軽な者に適した舞だった。

 悠緋は舞を見ながらも、少し離れて立つ灰に密かに視線を投げた。接見の間以来となる少年は夏の間に日に焼け、背が伸びたようだ。背筋の伸びた立ち姿である。左手から腕にかけて巻かれた包帯に思わず眉を顰める。その白さが痛々しかった。先ほどはどのように接してよいのかわからず、思わずよそよそしい態度を取ってしまったことが気になっていた。すぐにでも声をかけて振り向かせたい衝動と、感情を窺わせない相手への苛立ちが綯い交ぜになり、胸中がざわめく。

 勇ましい掛け声にはっと舞に目を戻すと第二組目の若衆が勢いよく進み出たところである。第二組は大地の象徴として力強く勇壮な舞である。若者達が踏みしめるたびに重い音が響いた。

(だいたい私は灰に腹を立てていたはずなのにどうしてこんなに気になるのかしら。そういえば私、なぜ腹を立てたりしたのかしら)

 悠緋は思う。そもそも灰の態度がまるで人を見下しているようだったから――(本当にそうだったかしら? 今思えば、並居る家臣にも怖気づかずに堂々としていたのはむしろ立派だったのかもしれないわ)――何よりも一度出会っているのに素知らぬ振りをしたから――(でもあの場ではそうするよりなかったんじゃないかしら……)――悶々と考えるうちに、やはり悠緋の視線は灰へと流れる。銀糸の髪を隠しているのが惜しい気がした。絡玄らくげんは吐き捨てるように異端と言ったが、悠緋には鮮烈に感じられた姿なのだ。

 水を象る第三組の舞と炎を象る第四組の舞が終わり、各組の主だった者が進み出て多加羅に古くから伝わる伝統的な型を舞うが、それはあくまでも補助的な動きに過ぎず、最も複雑かつ精妙な動きは中央の舞い手に任されるのだ。

 舞が終わりに近づくにつれ、悠緋は物思いから脱して集中力を高めようとした。この後彼女の出番がある。本番では今この場に集う者達よりはるかに多くの人々の前で行う儀式だが、もちろん練習でも失敗は許されない。何よりも、灰が見ている。

(不様な姿だけは見せたくない)

 そう思い、なぜこれほどまでに灰が気になるのか、悠緋は漸く合点がいく。どうやら年の近い従兄弟に対抗心があるらしい。昔から負けず嫌いだということは周囲の皆から言われていた。それだけのことだ、と言い聞かせれば妙に心が凪いだ。

 舞が終わり若衆達が退くと、最後に悠緋が滑るように進み出た。優雅に正面へと叩頭する。組んだ腕に額を押し付けるようにして身を屈め、次に懐から取り出した巻き書を右手の一振りで開く。長い白紙が優美に広がり、それが地面に落ちないように左手で掲げ持つ。祭礼のために何度も練習した動作である。この動作が美しく行われるかどうかで、次の年の吉凶がわかるとまで言われているため、模擬とはいえ滞りなく果たせたことに悠緋は小さく息をついた。本番に使う祈祷を綴った巻き書は祭礼の時以外には持ち出せないため、今この場で使われるのはあくまでもかわりの巻き書である。

「常しえなる神の御恵みに、我ら真のまことを捧げるなり」

 落ち着いた悠緋の声が響き、司祭の青年が小さく頷くとおもむろに悠緋の手から白紙の巻き書を受け取った。司祭長の祈祷と託宣を受けるのは本番のみである。悠緋は再び深く叩頭すると静かに立ち上がり、元の場所へと戻った。それが儀式の終わりではあるが、祭礼ではその後も夜を通して祝いが続けられ、惣領家の面々もその時ばかりは街へと繰り出すのが通例である。実際に祭礼が終わるのは夜も更ける頃になるだろう。朝が来ると共に、長い祭りの熱から人々は覚めるのだ。

 漸く全ての行程が終了し、広場に張りつめていた息が詰まるような雰囲気も和らいでいた。しかし次の家司の言葉に再び緊張が走った。

「では透軌様、中央の舞い手をお選びください」

 透軌が頷き正面に歩み出ると、若者達は再び叩頭した。その様子を見渡した透軌は跪く彼らを縫うように歩き出した。灰は離れた位置から、迷いもせずに一人の若衆のもとへと向かう透軌を見つめる。急ぐでもなく歩く透軌が傍らを通り過ぎると、期待と不安に彩られた少年達の顔に、落胆とも安堵ともつかない表情がよぎる。やがて透軌は一人の少年の傍らに立つと静かな声音で言った。

「名を何という」

 問われた方は些かも驚いた様子はなかった。

「仁識にございます」

「見事な舞であった。中央はそなたが務めよ」

 仁識はさらに深く頭をさげたが、答えた声はあっさりとしたものだった。

「承知いたしました」

 透軌の選択は若衆にとっては異論の出ようがない、最も相応しいものだった。加倉は何を思うのか、普段からは想像もつかぬ落ち着いた表情でその決定を見つめている。

「皆、御苦労だった。祭礼の時に向けてこの先も弛まず励んでくれ」

 透軌は言うと、妹と家司が待つ方へと踵を返した。事実上その言葉がこの場の締めくくりだったのだろう。家司達を引連れて鍛錬所から出て行く透軌を見送る若衆の間で、漸く緊張が解ける。

 悠緋は促され鍛錬所の外へと向かいながらも、不意に灰を振り返ると唐突に声をかけた。

「あなたは剣舞はしないの?」

 問われた灰以上にぎょっとしたのはおそらく彼女の背後に控える女官達だっただろう。

「俺はまだその資格はありません。一番の新参ですので」

「ああ、そうだったわね。若衆はそういうことには厳しいのね」

「悠緋様、もう行きませんと」

 おろおろとした年嵩の女官が、まるでこの責任が目の前の少年にあるとでも言わんばかりに灰を睨みつけた。

「お黙りなさい。私は従兄弟と話がしたいだけよ」

 これにはその女官も思わず黙る。少女の声は涼やかに響き、なおも叩頭する若衆達の手前、灰にはこの上なく居心地が悪い。それに加えて少女の不可解な態度に少年は混乱するばかりだ。この少女は彼に怒りを抱いているのではなかったのか――?

「そうでしたら何もこのような場所でなくともよろしゅうございましょう。また別の機会にでも……」 

「悠緋様、とにかく今はお戻りください」

 口々に女官に言われ、悠緋は不承不承頷いたが、なおも灰をちらりと見やる。

 灰には少女の行動も言動も戸惑うものばかりだったが、初めて出会った時彼女が去り際に見せた名残惜しげな表情が目の前の顔にかぶった。考えてみれば、彼とてあの時点では彼女を惣領家の姫だとは知らなかったのだ。知らず接した彼女の明快な態度はむしろ好ましく感じられるものでさえあった。そして接見の間で対面した時に素知らぬ顔をしてしまったことを今更ながらに思い出した。

「悠緋様、もうお戻りください。今は互いの名を知っていて同じ街にいるのですから」

 悠緋ははっとしたような表情になり、次いで頷くと鍛錬所の外へと向かう。灰の言葉の意味がわかったのは、おそらく悠緋しかいなかっただろう。しかし女官達は漸く歩き出した悠緋に安堵したのか、とりたてて灰の言葉の意味を考える者はいないようだった。

 悠緋はすでに兄が乗っている馬車へと向かいながらも、目が眩むような思いに惑っていた。湧き起る感情はまるで奔流のように胸に溢れる。我知らず握りしめた両手で胸を押さえ、悠緋は再び振り返った。彼女は灰が自分を見つめていると――たとえそれが融通のきかない姫を見送るためであろうと――確信していた。しかし悠緋が見たのは、彼女から逸れて行く灰の視線と、その先にいる眩しいほどに美しい娘の姿だった。

 娘は数人の若者とともに鍛錬所へと向かってくる。幾枚もの薄布をゆったりと重ね合わせた衣は国境地帯によく見られるものだ。早春の若葉を思わせる白緑の薄布が軽快な動きに靡く。長い髪は頭の後ろでまとめられているが、そこからほつれた髪が奔放に揺れてむしろ艶やかさを増していた。

 誰何する声が若衆の間から起こったが、娘はそれにも構わずにまっすぐに灰のもとへと向かう。

かの、どうしたんだ」

 女官に押しこまれるようにして馬車に乗り込んだ悠緋が最後に聞いたのは灰のその言葉だった。断ち切られるようにして扉が閉められる。衝動的に窓を覆う布を押し上げた悠緋が見たのは、灰に縋りつく娘と、尋常ならざる様子でその周りを取り囲む異国の若者達の姿であり、硝子に映るわずかに歪んだ己の顔だった。

 初恋ってこんなものだったろうか、と思って書いた部分です。悠緋については、なかなか書ききれず……今思えば少し残念です。

 ではでは、今後ともよろしくお願いいたします!

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