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前編

このエピソードは本編「積み重ねた思い出と増えた秘密と」直後の真理恵ちゃんのサイドストーリーとなります

更に「初めてのモデルロケット(前編)、(中編)」及び「高塚さんはお見舞いしたい」にも関連していますので、そちらもよろしければお楽しみください


「ねぇ、本当によかったの?」


「ちゃんとこちらのチームにも挨拶してきたし、うちらが2ON2に飛び入りするわけにもいかないでしょ」


「またそんなとぼけちゃって」


「なんの事?」


「全然素直じゃないんだから。いつもの真理恵とは大違いだね」


「うるさいなぁ、もう」


 うちの双子のバカ兄貴、友也の通う学校の学園祭に顔を出した帰り道、私は一緒についてきていたチームメイトからずっといじられ続けていた。


「少し細いけれど優しそうだったね」


「子供の頃から真理恵に振り回されて苦労してそうな顔だったね」


「ちょっと? 何か勘違いしてるみたいだけど、あれはあくまでついでに寄っただけなんだからね」


「えー。 わざわざ差し入れまで買っていったのに?」


「あれはたまたま見かけて面白そうだと思っただけだし⋯⋯」


 まったく、こんな事になるなら一人でこっそりと見に来ればよかった。


 朝練が終わった後、天気が良いからとランチに誘われた時に、なんでうっかりこちらの学園祭に行くつもりだなんて、口をすべらせちゃったのだろうか。


 うん、本当は久しぶりに一輝の所に顔を出したらどんな顔をするのだろうかなんて考えていて、少し浮かれていたのが原因だってわかってる。


 だってあの日からずっと時間が止まったままだったから⋯⋯。


 遊園地での別れ際の事、気づかれちゃったのかな。


 少し変な顔はしていた気がするけれど、多分偶然だったと思っている気がする。



 昔からいつもそうだった。


 友也のところへ遊びに来た時も、なんだかいつも振り回されていたし、だからこそ私がしっかり支えてあげなくちゃなんて思っていたのに。


 そんな事全然気づかなくて、見かねた私が口を出すと照れくさそうに笑うだけ。


 それがなんだかじれったくて、気が付けばいつの間にか私も2人の中に交じって、何をする時も3人で一緒だった。


 中学生になってからは部活も分かれたし、男子と女子の距離感なんかも意識するようになってはいたけれど、たまに顔を合わせれば子供の時のままのでいられたし、それがずっと続くと思っていた。




 きっかけは高校受験だったのかもしれない、私はバスケットボールのスポーツ推薦に選ばれて、少し離れた学校に通うことになり、離れ離れになるとは思ったけれども、焦りはなかった。


 友也と一輝は一緒に近くの公立へ進学するのは聞いていたから、どうせ今までと変わらずにうちに遊びにきた時に会えるだろうと思っていたからだ。


 それなのに偶然再会した時、それまで一度も聞いた事が無かった天文部とかいう所に入部したと聞いた時は、もしかして気になる人でも出来たのかと驚いた。


 もともとそんなに運動が得意そうには見えなかったし、中学では仕方なく陸上部に籍をおいていた程度だったのに、休日の朝から楽しそうに部活に出かけようとしていたから。


 さらに追い討ちをかけたのは、すぐその後の出来事だった。


 元々その日は、一輝達の学校に練習試合の遠征の予定が入っていた。


 そのウォーミングアップの最中に、まさかその天文部の女の子たちと仲が良さそうにしている姿を見る事になるなんて⋯⋯。


 知らない間にどんどんと距離が遠ざかっていく気がしたけれど、その時の私の中では夏の大会の事で頭がいっぱいだった。


 いや、もしかしたら一輝の事をあまり考えないようにする為にも部活に集中していたのかもしれない。


 ようやく夏の大会が終わって、私は新チームのメンバー候補に選ばれようとしていた。


 先輩の壁は高いけれども、確かな手応えはあったし、秋季大会に向けての夏合宿も良い感じで終える事が出来た頃だった。


「高塚さん、ちょっと落ち着いて」 


「だって、こうして話している間にも優がっ」


 練習に出かける途中の街中で、久しぶりに聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、嫌がる女の子を無理矢理引き止めている一輝の姿が目に入った。


「ちょっと一輝。嫌がっている娘に何してるのよ!」


 反射的に持っていたスポーツバッグを叩きつけたのは、嫌がる女の子に手を出していると思ったのか、ただの嫉妬だったのかどっちだったのだろうか。


 その後理由を知った私は、あまりの勘違いっぷりの気恥ずかしさで、部活に遅れるなんて言い訳してその場を去ったけれど、心の中ではよりいっそう距離が離れていたのを感じたのだった。

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