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私の青春に『光の百合』が足りませんっ!  作者: 秋乃晃


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調査っ!

 白石女学院の生徒会長・通称『氷華の姫君』の真名は雪城(ゆきしろ)凍華(とうか)。おじいさまとおなじ白石ではなく雪城の名字なのは、孫娘だってことに気付かれない為だろう。まあ、みんなに知れ渡っちゃっているからあんまり意味はなさそうだ。


「ゆいゆい、どこ行くん?」

「校内パトロール!」


 放課後。私はさっそく仲良しになった設楽(したら)(つむぎ)さんことつむつむとバイバイして、雪城先輩を尾行することにする。ひょんなことから雪城先輩が『光の百合』と出会う、歴史的な瞬間の目撃者になる為だ。もしくはすでに出会っているかもしれない。


「そかそか。いってらー。また明日ねん」

「また明日!」


 つむつむはこれから部活動の見学に行くらしい。私は『光の百合』の観測の為に、部活動には入らないかな。運動部は白石女学院の制服から動きやすい運動着に着替えてしまうから、なし。私はこの白石女学院の制服を着ている女の子たちを見る為に白石女学院に入学したのに、見られる機会が減ってしまう選択肢をわざわざ選ぶことはない。ないったらない。文化部なら先輩と後輩の交流があるから『光の百合』に発展するパターンはあり得るけど――


(雪城先輩は、三年二組)


 私が一番見たいのは雪城先輩と誰かのカップリングだ。雪城先輩にふさわしいお相手がすでにいらっしゃるという可能性がある。たとえば同じクラスのどなたか。三年二組という情報は、入学式の生徒代表挨拶で入手した新情報。


 というわけで、私は三年生の教室のある階まで降りてきた。白石女学院の各学年の教室は、一年生が四階、二年生が三階、三年生が二階と、だんだんと下になっていく。毎朝のぼらないといけないの、ちょっときついかもしれない。つむつむは「平気平気ー」と言っていたけど、つむつむは中学時代にテニス部だったらしく、かなり運動していた方だから体力がある。自慢ではないが、私には体力がない!


「おや。君は」

「あいやーっ!」


 急に声をかけられて、私は中国の人のようなかけ声を出してしまった。おほほほほ。ごめんあそばせマドモアゼル。実際に中国の人が驚いたときに「あいやー」と言うかは存じ上げません。


「ふふっ」


 腕章こそつけていないが、風紀委員の先輩だ。朝あれだけのインパクトを残してしまったから、印象に残ってしまっていたか。私って顔には特徴ないけど、たまに挙動不審になってしまうのよね。善処します。


「雪城先輩って、どちらにいらっしゃいます?」


 顔見知りとはいえ、風紀委員の先輩に「雪城先輩の『光の百合』のお相手を知りませんか?」とは聞けない。こういうのは地道な調査をしなくてはならない、と思う。


「ああ、凍華か……たぶん、生徒会室だよ。新入生を迎える会の準備をしているのではないかな」


 生徒会室かあ。だとすると、一般生徒(新入生)の私には入っていきづらい場所だ。


(――ハッ!)


 気付いてしまった。生徒会室のような、誰にも邪魔されないような場所でイチャイチャしているんだ。生徒会室なら、生徒会メンバーと関係している先生ぐらいしか出入りしない。私のような一般生徒たちが見えないところで、密かな秘め事が……!


「用があるのなら、」

「いいえ! ありがとうございます!」


 二人だけの時間を邪魔するわけにはいかない。私は風紀委員の先輩にノーを突きつけた。何かしてくださりそうだったから。この優しげな風紀委員の先輩を巻き込むわけにはいかない。これは私がやりたくてやっていることであって、今朝会ったばかりの新鮮な交友関係を利用するのは申し訳ない。ご厚意に甘えることなく、自力で行く。頭を下げて、校庭に向かった。


 生徒会室は三階だ。二年生の教室の並びにある。私は校庭に出て、花壇に隠れた。花壇からスマートフォンのカメラを向けて、生徒会室の場所をズームしてみれば、……うーんと、えーっと。


(明日はオペラグラスを持ってこよう)


 なんだかうまくいかない。ちぇっ。


「……何をしているのかしら?」

「どぅおもっ!」


 今日は急に声をかけられることの多い日だ。しかも、なんとなく背中が冷たいような。気のせいだといいな。入学して二日目で風邪を引いて休むなんて、そんな病弱キャラじゃあるまいし。


「面白いものは、見えた?」


 雪城先輩に、背後を取られていた。

 心の奥がきんきんに凍り付いてしまいそうな、冷たい笑みを浮かべている。


 あれっ。これってもしかして、絶体絶命というやつ、ではないでしょうか――?


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