閑話 封印
時は室町時代、京の都は戦の炎に焼かれていた。後に応仁の乱と呼ばれる戦場を名もなき雑兵が鬼神のごとく敵陣を駆け抜けていった。神刀『鬼導丸』によって。応仁の乱後、鬼導丸はその後行方知れずとなる。
応仁の乱後間もなく、大和国から伊賀国に入ったばかりの山奥の洞穴。年老いた男と女。
「おおおおお、これが鬼導丸か。噂に違わぬ神々しい輝き」
年老いた男が震える声で叫ぶ。
「やかましいわ。この忌々しき刀のどこが神々しいのじゃ。そもそもこんな刀、この世に存在してはいけないのだよ」
年老いた女が年老いた男を諌める。
「いやはや、平安の時代に高名な陰陽師様が作ったと言われる神刀『鬼導丸』まさに神々しい。そして、先ほどの武者がその式神『カヤト』。凛々しい青年であったのう」
年老いた男が言うのを年老いた女がふたたび諌める。
「なにが凛々しい青年じゃ。青二才ではないか。今はほら、そこに浮かぶ光の玉。無様じゃのう」
「そこの光の玉となった式神の記憶をこの洞穴に封印し、鬼導丸には特殊な呪印を施した。『この世に蔓延る鬼を斬れ』と刻んでおいた。これで万が一、そこの式神が復活しても、鬼導丸で鬼を斬りまくる。そして、開きっぱなしの鬼導からは永遠に鬼が出てきて永久にこの世は乱世となる。そうすれば我ら忍びは大名たちから引く手あまた。食いっぱぐれることはなくなる。我ら忍びにとっては平穏な時代など⋯⋯」
年老いた女はそう言って、呪印を施した鬼導丸を洞穴の奥の光の玉のそばに置く。
「後はここを祠として整え、妖刀『鬼導丸』の伝説を触れ回ればよいのだな」
年老いた男が大いに笑った。




