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終
時は天正九年九月二十八日、大和国へと拔けていく伊賀国の山奥の道を二人の男女が瀕死の身体を支え合い歩いていく。
「佐平、ここまでくれば大丈夫。追手も来ていない」
佐平と呼ばれた男は息も絶え絶えに頷く。
男の名は伊賀下忍『韋駄天の佐平』、女の名はくノ一『火炎の雪乃』。二人は平楽寺での滝川一益隊の猛攻から逃れ、息絶え絶えに大和国との国境まで逃げてきたのだ。
「佐平、しっかり。あそこの祠でしばらく休もうよ」
雪乃がそう言って佐平を祠の中に誘う。
佐平を祠の入口の近くに座らせて雪乃もその隣にへたり込む。
雪乃は祠の奥で何かが光を放っているのに気づき立ち上がってそちらの方へ歩き始めた。光にたどり着く前に雪乃は足元のものに気づく。お供え物だろうか。柿が置いてある。雪乃はしばらくそれを見つめ無造作にそのうちの一つに手を伸ばしガブリと食いつく。どうやら甘くおいしい柿だったらしい。雪乃は恍惚な顔で手に持っている柿にむしゃぶりついた。そして、雪乃は目を光の方へ戻し手を伸ばしていった。
「刀?」
雪乃がそう呟いた瞬間、雪乃の身体は光へと吸い込まれていった。




