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11 無邪気なひととき

約1時間練習したところで妹の瑠璃子がお茶にしようと言い出し、少し休憩することになった。美人姉妹は部屋の奥へ行くとミルクティーとシフォンケーキを持ってきた。


「ミルクティーか。いいね。私は tea person だからね。でももしかしたら coffee person かもしれないなんて思わなかったの?特に何も聞かれなかったけど。」


「お姉ちゃんが、英介さんは全体的な雰囲気からどう見ても tea person だって言うから。お姉ちゃんってそういうところとっても鋭いから、私全然疑ってなかったわ。現に当たってたし。」


「へえー、すごいんだね。おっ、このケーキ、めちゃくちゃ美味しいしミルクティーに合うね。美味しい!」


「気に入ってもらってよかったわ。それに私たち二人も tea person なのよ。だから気が合って楽しいんじゃない?」


「なるほど、そうかもね。」

すると響子が

「今日はこれで終わりにしましょう。最初から飛ばし過ぎると続かないから。これからも時々こんな風に練習したいでしょう、英介さん?」


「ええ、是非。じゃ私はこれで帰ります。」


二人と別れると英介はのんびりと駅に向かって歩き始めた。先ほどまでの美人姉妹たちとの至福の時を反芻しながら。第一に美しい音楽、そして美女、そして更に美味しいスイーツ。


信じられないくらい素晴らしい夢のような時間であった。響子は続けようと言っていたが、余りにも楽しすぎて、こういうことは続かないのではないかと心配になってしまった英介であった。


 響子とは一応ラインで連絡を取り合っている。ラインをやっているとはいっても次の練習日の連絡、調整以外に使うことはない。一ヶ月ほどすると響子からまた合奏練習をしようと呼びかけがあり、前回と全く同じように彼女の家を訪れ、同じように妹が現れ、一緒に楽しく練習した。


今回のデザートはマカロンだった。そんな時も妹の瑠璃子がいるおかげでとても気楽に楽しく世間話などができた。彼女のおかげで変な邪念に惑わされる事はほとんど無く、集中して楽しく練習できた。


瑠璃子もピアノを習っているということで、ディズニーの「アナと雪の女王」を弾いてくれたりした。これは英介にとっては幼い頃からの理想、言わば桃源郷であった。


子供の頃ならまだ性に目覚めていないので心から無邪気に交流できたろう。ところが成長した今では性欲と戦わなければならない身であり、無邪気にはなれないはずなのだが、瑠璃子のおかげで性欲は影を潜めてくれているので、子供のように無邪気に合奏したり談笑することができたのだ。


英介は今までの経験からこうした楽しい事は余り続かないと覚悟していたのだが、不思議なことに毎月一回の割合で定期的に行われるようになり、しかも毎回安定して楽しく合奏することができ、何か気まずい思いをしたり誤解して不愉快な思いをするなどという事は皆無だったのだ。


これは本当に素晴らしいことだった。女性とこのように明るく楽しくつきあえるというのは理想であった。ただ人間というのは欲深いもので、この楽しい状態が7ヶ月ほど続いた時、英介の中ではやや違和感が感じられるようになったのだ。


このような女性との無垢なつきあいかたは理想通りではあるが、と同時にある意味不自然なのではないか。今の響子と英介の関係を何と言うのだろう。


今だに手さえ触れたことが無い。でもそんな事はできる状況にないし、何より響子はある意味純粋培養っぽいところのあるお嬢さんなので、ひょっとしたらちょっと手を触れただけでも毛嫌いされてしまうかもしれないという不安があった。

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