始まりは唐突にあり得ないほど分かりやすい巻き込まれ方でした
どことも知れない場所。どこにでもあるような場所。そう、例えば今彼女がいる通学路とか。
もともと人がほとんど通らない場所にこの日は二人いて珍しいなぁと思っていたのもつかんの間。どうやら追う者、追われる者、という関係に見えたのでかかわり合いにならないでおこう、と歩いていた道の端に移動しようとして、巻き込まれた。
なぜか手をがっしりとつかんだ、追われている方はそのまま走っていく。彼女は進行方向に背を向けたまま引きずられるように進んでいく。まあ、進行方向は見ない方がよかったのかもしれない。
(私を引きずってるのにスピードが落ちないなんてすごいなあ。)
こんなことを彼女が考えていたのはおそらくあまりにも突然すぎて理解が追いつかなかったのだろう。そして、追いついた時にはもう遅かった。
後ろが見えなくてよかった理由。黒い空間が口を開くようにぱっくりと開いていて彼女を引きずっている人ごと飲み込んでしまったのだから。
「ちっ、逃がしたか。だがそれなりに傷を負わせたはずだ。」
追いかけていた方はそう言ってその場からいなくなる。
一方、巻き込まれた彼女はというと。
一人で、手に剣を持った兵士たちに囲まれておりましたとさ。




