表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

第6話:ついにキタ!

 ――――――――――さらに四年後。


「何でえ?」

「確率的におかしい、とも言い切れないけど」


 私もネオンも困惑です。

 この四年間、ユウキさんのためにかなりガチャを引きました。

 裁縫、耕作、鍛冶はプロ級、鼻がよく利いて縄跳びが上手で絶対音感があって拍手でいい音が鳴ってどこでもよく眠れて弁舌に長けるという加護を身に付け、どこに出しても恥ずかしくない美少年になりましたが……。


「どうして冒険者向けの加護を引けないんでしょう?」

「いや、『隠形』や『薬草の知識』は冒険者向きなんだけどさ」


 『隠形』は自分の気配を消せるというもの、『薬草の知識』は文字通りの加護です。


「あの子もう、どうやったって暮らしていけるじゃん。技術職系の加護いくつか持ってるし」

「でもでもユウキさん、冒険者どっぷりなんですもの」


 そうなのです。

 『ステータス可視化』『探知』『ストレージ』を含め、補助系の加護を多く持つユウキさんは、戦闘がからっきしにも拘わらず引く手あまたなのです。


 『エコラント』に来てからずっと冒険者ギルドに入り浸り。

 持ち前の美顔や『ハーレム』『魅了』の効果で可愛がられているために、他の職業は考えていないのでしょう。


「危うさが全然解消されてないじゃん。あの子に必要なのは身体強化系か、魔物にダメージを与えて経験値を稼げる加護だよ」

「わかってるわよ! でも引けないんですもの!」

「……まあちょっとはレベルも上がってるけどさ」


 魔物退治の際に、余裕がある時はとどめを刺す役を振ってもらったりしているようです。

 しかし他のパーティーメンバーとレベルの差がある状況は同じですので、予想外の事態が勃発した時に危険なことに変わりはないです。


 ああ、ユウキさんに身体を強化するか、自力でレベルを上げられる加護があったなら!


「でも美少年だよね」

「ええ、とっても!」


 いつもニコニコの可愛らしいお顔。

 小柄で華奢(だからこそ身体能力に期待できないのですが)でお肌プルプルで驕らない性格。

 しかも『ハーレム』『魅了』の加護持ち。

 完璧なアイドルですわ!


「イリアが推したくなる理由はわかる」

「でしょう?」

「でも役に立つ加護を持たせずに放り出した理由はわからない」

「ネオンの意地悪!」


 放り出したわけじゃないの!

 成り行きだったの!

 だからガチャを引き続けてるの!


『フィーフィーフィー』

「来たよ。予定通りだね」

「ええ」


 ユウキさんからの連絡です。

 さすがに最近は少なくなりましたが、それでも一〇日と空けず連絡をくれます。


『女神様、聞こえますか?』

「はい、聞こえます。ユウキさん、一六歳の誕生日おめでとうございます」

『ありがとうございます!』

「最近お困りのことはありますか?」

『特にありませんよ。お気遣いありがとうございます』


 ああ、なんていい子!


「誕生日のお祝いとして、ガチャ加護を一つプレゼントしますね」

『よろしいのですか? 申し訳ありません』

「いえ、ユウキさんの冒険者生活を応援したいのです。確率的にはとっくに有益な加護を引けているはずなのですが……。運が悪くてごめんなさいね」

『とんでもないです! 女神様の御配慮、いつも嬉しく思っています』

『ピコーンピコーン』


 久しぶりにレア加護キター!

 何でしょう?


『『賢者』です!』


 攻撃・支援・回復万能の魔法職です!


「おめでとうございます! ユウキさんの前途に幸運がありますよう!」


 通信が切れる。


「……ついにやった」

「そうだね。おめでとう」


 『賢者』は極大呪文こそ使えませんが、各系統の上級呪文まで習得することができ、魔法力に最高の補正が付く加護です。


「ようやくユウキさんが決定力を持てたわ!」

「うーん、『賢者』かあ。攻撃魔法使ってダメージ与えるよりも、ヒーラーとしての立ち回りを求められるんじゃないの?」

「でも今までよりはずっと戦闘貢献度は高いと思うの」

「まあイリアの言う通りだね。経験値は得やすくなるか。油断はできないけどね」


 そう、油断はできない。

 レベルも身体能力も上がったわけじゃないから。

 戦闘で活躍できる、ユウキさんの生き残れる可能性が少し増えただけ。


「今後どうする?」

「今後ってどういうこと?」


 ネオンの目が怪しく光ってるんですけど?


「あの子『賢者』の加護を得たことで、並み居る冒険者の中でもチート気味の後衛職になったよ。レベルさえ上がればだけどね。何たって『ステータス可視化』『探知』『ストレージ』『隠形』『薬草の知識』の加護を持ってるんだから」

「そうね。だから?」

「うまく育てれば英雄になれる可能性だってあるということだよ」


 英雄? ユウキさんには似つかわしくない気もしますが。

 さらにネオンが主張します。


「イリアだってこれから来る転生候補者に対して、あの子みたいに贔屓することはないんだろう?」

「ないわね」

「じゃああの子にもう少し肩入れしてやる手はあるよねってこと。もし大きな業績を上げて『エコラント』の発展に貢献したら、イリアの昇給や昇格だってあるかもしれない」

「……ユウキさんが今のままでは危ないのも事実ですしね」

「そうだよ。これだけガチャ突っ込んだんだもん。もう少し突っ込んで夢見ようよ」


 ネオンがギャンブラーだとは知りませんでした。

 ガチャでいくら加護を付けたって、転生者が偉人になることはないって言われてるんですけどねえ。

 結局その人の性格ややる気、状況、持ってる運に左右されちゃいますから。


 でも『賢者』を引けたとはいえ、ユウキさんの身体能力が強化されたわけではないのです。

 推しのユウキさんのために、ガチャを引くことはやぶさかではないです。


「今までほどの頻度じゃなくても、年に一度くらいガチャ引きましょうか」

「賛成」


 ユウキさんがケガなんかしませんように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもよろしくお願いします。
―◇―◇―◇―◇―◇―
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
―◇―◇―◇―◇―◇―
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ