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第3話:転生少年の不安な旅立ち

 ユウキさんの姿が薄れていきました。

 転生自体に事故はないですから問題はないでしょう。

 バックヤードから声が聞こえます。


「行った?」

「あらネオン。帰ってたの?」

「うん。転生候補者が来てたんでしょ? 邪魔かと思って」


 ネオンは黒い猫型精霊で私の相棒です。

 出不精な私に代わって各種のお使いをしてくれる、とってもできる子です。


「買い物してきたよ。それから例の議案が通った」

「例の議案? 何だっけ?」


 目を丸くするネオン。

 呆れてるみたい。


「ほら、転生者に対して、選択加護を得る前にガチャを引かせるのは可能かってやつ」

「あっ、あれ通ったの?」


 二種の加護を得てからおまけでガチャの加護を身につけさせるのが伝統でしたが、先にガチャを引かせてその結果を踏まえて二種の加護を選ばせることはできないか、というものです。

 その方が当然うまくいきやすいですものね。


「随分昔に出した議案じゃない。今頃通ったのね」

「決定が遅れたってのも問題なんだけど、ボクちょっと道草しちゃったんだ。早く帰っていれば、今の転生者に間に合ったかもしれない」

「そうね……今の子まずかったかも」

「何が? 加護が?」


 不安げに尻尾を揺らすネオン。


「どうまずいの?」

「二種の加護に『自動翻訳』と『Gアクセス』を選んだのよ」

「『Gアクセス』? あれ? それ面倒だからガチャでも引けないようにしてる加護じゃなかったっけ?」

「ええ。だけど転生先の世界で生きていく指針が必要だから、私の言葉が欲しいって直接言われたんだもの」


 可愛い子のお願いだったからつい。


「転生者の希望なら仕方ないか。転生先は?」

「『エコラント』よ」

「ええ? 魔物の多い世界じゃないか。身を守るための加護が必要だったんじゃないの?」

「そ、そうかも」

「ガチャで引いたのは?」

「……『潤い肌』」


 あかーんという具合に天を仰ぐネオン。


「イリアが付いていながら、随分ひどいんじゃないの?」

「先にガチャで『潤い肌』を引くことがわかっていたなら、『Gアクセス』なんて勧めなかったわよ。半分はネオンのせいよ」

「……責任の押し付け合いはやめよう。重要なのはこれからだ。『Gアクセス』の優秀さをイリアが証明すればいいのだ」

「そうね……でもガチャ引いちゃおうかしら?」


 転生の女神たる私には、転生者に対して加護ガチャを追加で引く権利を与えられているのです。

 ただし私にとって結構な出費になります。


「これは反対できないな。しばらくねこまんまで我慢するよ」

「ごめんね。削り節たくさんかけてあげるから」

「うん」


 尻尾がひょこひょこ動いています。

 ネオンは削り節大好きですから。


『フィーフィーフィー』

「何の音?」

「『Gアクセス』ね。ユウキさんから連絡ですわ」


 無事に転生完了、周りの安全も確認できたようです。

 まずは一安心ですね。


『女神様、聞こえますか?』

「はい、聞こえます。感度良好です」


 モニターでユウキさんの様子を確認します。

 よかった、道に近い。


「時間制限があるので手早くまいります。ユウキさんの目の前にある膝丈の草がありますね? そう、それです。薬草ですので、同じものを根の上で切断して集めると集落で換金できます」

『集落はどこにありますか?』

「森の反対方向に歩くとすぐ道が見えてきます。その道を太陽の方向に三十分ほど歩くと到着します」

『ありがとうございます!』


 よかった、私役に立った!


「最後に私からのサービスでガチャ加護を一つプレゼントしますね。何を得ましたか?」


 音がしなかったからレアではないけど、使える加護だといいな。


『えっと、『肌ケア』です』

「「えっ」」


 肌を綺麗にする加護です。

 『潤い肌』とまさかの肌被り!

 ネオンが頭を抱えています。


「時間切れです。ユウキさんの前途に幸運がありますよう!」


 通信が切れた……。

 おもむろにネオンが言います。


「イリア好みの可愛い子ちゃんだということはわかった」

「どうしましょう? 可愛いお顔に磨きがかかってしまいます!」

「いや、肌加護ダブルってどうなってるの? 美の女神に愛されてるの?」

「私って美の女神だったのかしら?」


 混乱しつつも、会話してる内に落ち着いてきました。


「問題は金になる加護が一つもないところだよ」

「……うん」


 ユウキさんの持ち加護は『自動翻訳』『Gアクセス』『潤い肌』『肌ケア』の四つ。

 『エコラント』では先礼式の時に神から一つ加護を受けるのが通例です。

 四つの加護持ちは規格外ではあるのですが。


「持っているのは無敵のお肌だけですものね。私からすると、とても羨ましいですけれども」

「とりあえず見守るだけしかできないな」

「そうね。愛想を尽かさず、また連絡してきてくれればいいのだけれど」

「時間をムダにせずアドバイスできるようにしておくだけだな」


 うんうん、精一杯サポートしないと。

 ああ、ユウキさんに幸せがありますように!

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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