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見たいし、触りたい

「オルヒ!リーリエ!私、オルデンベルク男爵とお会いしたのよ!」


アメリアは飼育部屋に入ると、ハナトカゲのオルヒとツノイグアナのリーリエに話しかけた。


オルヒとリーリエは飼育部屋に設られた茂みで横たわっていた。もう日も沈んで冷えてきたので寝ているかもしれない。


そんな二匹をアメリアは長椅子に掛けて眺めた。


オルヒもリーリエも今日も艶やかで可愛らしいわ。


大好きな二匹を見詰めながらも、アメリアは今日間近で見る幸運に恵まれたクラウス=オルデンベルクの顔を思い浮かべた。



ドラゴンの呪いで右上半身に鱗があるというクラウス=オルデンベルク男爵。


アメリアがクラウスに出会ったのは、先日王都で起こった火災の時であった。


出会ったと言うよりも見掛けたと言うのが正しい。


友人とのお茶会の帰り、火災により馬車が足止めされてしまった。

火災現場からは離れていたので巻き込まれる恐れはなかったものの、騎士の誘導に従い混み合った道を順にゆっくりと進むしかなかった。

馬車から外を不安な気持ちで眺めていたアメリアは、道を駆ける騎士の右手に目を奪われた。

まるで炎が結晶になったような美しい煌めきが目に飛び込んできたのだ。

慌てて視線で追いかけるように見遣ったが騎士はすぐに見えなくなってしまった。


まるで光り輝く鱗のようだったと、両親に語ったアメリアに、その騎士に心当たりがあると父親が答え、親子で盛り上がった結果、見合いの申し入れをするに至ったのだ。

申し入れは二連敗で断られはしたが。


しかしようやく見合いをしてもらうところまで漕ぎ着け、そして更には顔まで見ることが出来た!


本当に美しかったわ。

夕暮れ時だったことも美しさに拍車をかけたかもしれないけれど、あんなに艶やかな鱗。

もっとお近くで心ゆくまで眺めたかった…。


あの瞬間を心に深く焼き付けたけれど、出来れば触れてもみたかった。


いえ殿方に触れるのははしたないから駄目ね。


だけど…

とアメリアは心に焼き付けたクラウスを思い出す。


髪の毛を上げてもっとしっかりと見せて頂きたいわ。

右手もしっかりと見てみたいし、出来れば腕も見せては頂けないかしら。

右上半身に鱗があるということだけれど、見える範囲にある鱗はそれほど多くはなかったわ。

見えないところはどのようなのかしら。


見たいし、触りたい。出来れば撫でさせてもらいたい。


アメリアはクラウスの鱗を眺めながらそれを撫でることを夢想して、うっとりと胸を高鳴らせた。

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