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ヘルミーナの事情

ーー時は遡る


隣国の医療研究所インシュクーパーで欠員が出たという知らせを聞いたヘルミーナは、すぐに論文を送った。

欠員による新規研究員募集期間はわずか1ヶ月。その間に有益と思われる論文が提出されなければ、そこから更に1ヶ月募集期間が延びるけれど、それに期待するわけにはいかない。大勢の入所希望者が常に欠員を待っている。間に合わなければ次がいつとも知れないのだ。


興味のない研究をするつもりはない。けれど興味だけでは有益と判断されることは難しい。常に情勢にアンテナを張り、興味と有用性から最適な研究テーマを選んで研究を続けていた。自信はある。

あとは待つだけだ。

気が早いかもしれないけれど、入所準備を始めようか。ヘルミーナがそう考えていたところに父親のクラインベック公爵がやって来た。

そして唐突に告げた。


「クラウス=オルデンベルクの呪いが解けた。これでお前と結婚することが出来るな」

「お父様?」

ヘルミーナは父親の言葉の意味がすぐには理解出来なかった。


クラウス=オルデンベルクはドラゴンを討伐したことで、その呪いを身に受けた騎士だ。

その呪いが解けたということは、呪いにより身体に現れた鱗と変容した目が戻ったということであろう。生涯呪われたままなのだろうと考えていたので予想外ではある。しかし、彼の呪いが解けることと結婚に何の関係がある?これでお前と結婚することが出来るな?因果関係がまるで分からない。それに彼には…


「オルデンベルク男爵は婚約者がいらっしゃいます」

ヘルミーナは至極当たり前のことを父親に述べた。

言いながら、彼が前の婚約者との婚約を破棄した時に、彼との縁談を進めようとした父親に、鱗があることを理由に断ったことを思い出した。

「ああヘルミーナと想い合っているのに無理やり婚約を結んだ子爵令嬢のことならば気にせずともよい。そんな身の丈に合わない婚約はすぐ壊れるものだ」

「え?何を言っているのです?想い合うも何もオルデンベルク男爵とは会ったことがありません」

「お前は安心して待っていなさい」

困惑するヘルミーナを置き去りに、クラインベック公爵は終始にこやかで、そして娘の言うことに耳を貸すことなく言いたいことを言うと立ち去ってしまった。

ヘルミーナは呆気に取られながらも父との会話を反芻し、そして考えた。

まさか父親も本気でクラウスとヘルミーナが想い合っているなどとは思ってはいないだろう。

つまりあれは、その体で結婚させると言う宣言だ。

クラインベック公爵は無理を押してでもヘルミーナを結婚させようとしている。


「冗談じゃない…」

医療研究所インシュクーパーへの入所を前に結婚など絶対にするわけにはいかない。

入所を認めてくれるような結婚相手などいないだろう。

仮にいたとして、公爵家の婚約ともなれば婚約披露をしないわけにはいかないし、婚約期間を経て結婚披露もしなくてはならない。そんなことに費やす時間が惜しい。

加えて婚約者がいるオルデンベルク男爵が自分と結婚したいと思っているとも思えない。

彼は誠実な人物だ。だから彼が以前の婚約を破棄した時に父親から持ちかけられた縁談を断る理由として、ヘルミーナは鱗を持ち出すしかなかったのだ。おそらくこれは父の独断であろう。しかし念の為確認は必要か…


クラウスはーーそしてオルデンベルク侯爵家はーー婚約者がいるにもかかわらず公爵家との縁を繋ぎたいと思うのだろうか。そしてその婚約者は望んでクラウスとの結婚を決めたのか。

ヘルミーナは、クラウスとその婚約者についての状況を調べ始めた。

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