お見合いして頂けるのですよ
「お父様!私オルデンベルク男爵にお見合いのお願いをして参りました!」
マイツェン子爵家に帰ったアメリアは父親の執務室に入ると、今日の成果を笑顔で報告した。
「お見合いして頂けるのですよ」と微笑むアメリアにマイツェン子爵は「おめでとうアメリア!」と破顔した。
「アメリアを貰ってくれるとしたらオルデンベルク男爵以外考えられないからな」
「はい。私も嫁ぐとしたらオルデンベルク男爵しか考えられません!」
興奮して笑い合う父娘のもとに母親であるディアナがやってきた。
ディアナは二人を座るように促してから自分も夫の隣に腰掛けると
「それでアメリア、オルデンベルク男爵には婚約の了承を頂けそうなの?」
と問いかけた。
「それは…」アメリアは少し視線を逸せて
「お好みの女性について伺ったのですが教えてもらってはいないのです。ですがお見合いはして頂けます!」
「うんうん。見合いすらしてもらえなかったことからは前進したな」
マイツェン子爵がしみじみと頷く。
「それにお母様!私オルデンベルク男爵に本日お会いして、間近でお顔を拝見することが出来たのです。風で髪が靡いた隙間から見えた艶やかな鱗…」
ほぉ。うっとりとした表情でその様を思い浮かべる娘に
「気持ちは少しも分からないけれど良かったわ」
ディアナは暖かな眼差しを向ける。
アメリアは可愛らしい容姿から婚約の申し入れも少なくはなかった。
けれど彼女の婚姻の条件を呑んでくれる男性が一人もいなかった。
「私、出来ればオルヒもリーリエも連れて嫁ぎたいと思っておりますが、オルデンベルク男爵に嫁げるのであれば、オルヒとリーリエは置いて行っても構いません!絶対連れて行きたいですが週7で会いに帰って来ればなんとか我慢します!」
それは我慢出来ているのかしら?とディアナは思いながら
「家に置いていくのは困るから出来る限り必ず連れて嫁いでね」と声をかけ
アメリアは「ええ、きっとお許し頂けると思います」と笑んだ。
「それではお父様、お母様、オルヒとリーリエにも報告してきます!」
アメリアはにこやかに執務室から退室していった。