クラウスからの知らせ
「やはり噂は本当だったか」
クラウスからの手紙を読んだオルデンベルク侯爵は、妻のソフィアと長男のコンラートにそれを知らせた。
クラウスの解呪の噂は既にオルデンベルク侯爵家にも伝わっていた。だから侯爵はクラウスを呼び出そうかと考えていたところであった。
ソフィアとコンラートはクラウスからの解呪の知らせを聞いて喜んだ。
「3日後の朝にこちらに来るそうだから、詳しい話はその時に聞けるだろう」
侯爵がそう告げると、コンラートは嬉しそうに「ではクリスタにも会わせてやろう」と言った。
「クラウスは鱗を怖がらせると言って、クリスタにずっと会おうとしなかったからね」
「クリスタは庭でトカゲを追いかけ回すような子なのに」
喜び合う妻と息子に侯爵は目を細めた。
鱗があろうとも息子は変わらなかった。
研究者の話では呪いが身体に負担を掛けることはないということであったし、今日までのクラウスの様子からもそれは間違いない。
しかし身体に負担が掛からないとしても、人にはないはずの鱗を身に持ったのだ。鱗への忌避の目はあった。しかしクラウスはそれを受け止めた。だから家族もそれを受け止めようと努めた。
それでもやり切れなさを感じることがないわけではなかったのだ。
鱗を持つことになってからもクラウスは真っ直ぐで、やるべきことをやる男だった。ドラゴンスレイヤーとしてよりも、そのことを家族は誇りに思っていた。
呪いが解けるという期待はずっと前に捨てていた。しかし幸運は期待を捨てていても訪れたのだ。
「きっとアメリア嬢も喜んでいるだろうね」
侯爵が心から安堵してそう言った。
それを聞いたソフィアが息を止めたことに、侯爵もコンラートも気付かない。
「結婚前に呪いを解いてくださった神に感謝をしなければ」
夫と息子の会話を聞きながらソフィアは、鱗のないクラウスのことをアメリアはどう思うだろうかと少しだけ心配に思った。
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アメリアは深刻な顔をしてる両親に呼び出されていた。
「アメリア、落ち着いて聞きなさい」
何やら言いづらい話のようだ。アメリアは居住まいを正した。
マイツェン子爵が咳払いをした。アメリアの顔を見て、しかし開きかけた口を閉じると俯く。
そしてもう一度アメリアの顔を見て告げた。
「クラウス様の呪いが解けたそうだ」
「まあ!」
アメリアはそれを聞いて嬉しそうな声を上げた。しかし喜ばしい話であろうに両親の顔色の悪さを不思議に思う。
そして告げられたことを反芻する。
クラウス様の呪いが解けた。呪いが解ける…?
アメリアの顔が徐々に驚きへと変わった。
「呪いが解けた…ということは…まさか…」
アメリアは恐る恐る父親の顔を見た。
子爵は頷いた。
「クラウス様の鱗がなくなった…ということだ」
「…!」
アメリアは目を見開いた。
「クラウス様は3日後の午後にご説明にいらっしゃるそうだから、アメリアはそれまでに気持ちを落ち着けなさい」
部屋に戻ったアメリアは衝撃を受け止められず、ぼんやりとしていた。
クラウス様の呪いが解けた…
アメリアは虚ろな気持ちで窓の外に広がる空を見上げた。




