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騎士団長への報告

朝食を終えるとクラウスは騎士棟へ向かった。

日番の交代にはまだ早い。けれど鍛錬を始めるには遅い時間だ。

やってきたクラウスを見た夜番の騎士が時間を確認するように時計塔を見上げる姿が目の端に映る。

しかしクラウスはそのまま騎士棟に入ると階段を上がり、廊下を奥へと進む。そして目的の部屋の前へ辿り着くと深呼吸した。部屋をノックする。

「クラウス=オルデンベルクです。騎士団長にご報告があります」

扉を開けたクラウスは、騎士団長への取次を求めた。


 **



鱗が落ちただけ、金の目が赤に戻っただけ。

現象としてはそれだけのことではあるが、しかしどう考えてもこれは報告が必要な事態である。


騎士としての仕事面だけを考えても、鱗がなければその見目の気味悪さから外されたであろう城外の巡回任務に入ることが出来るし、金の目が無くなればそれは瞳が夜闇に浮かび上がることから外された夜番の任務に入ることが出来る。だから現象そのものが報告が必要なものであることは間違いない。

だが実務的なものよりも重要なことは、鱗と金目はドラゴンスレイヤーの証でもあったということだ。それがなくなったのであれば、それは明らかにしておくべきことであろう。


騎士であるクラウスが真っ先に報告すべきは騎士団長である。だからクラウスは日番が始まる時間よりも早くに騎士団長室までやって来て、取次を求めた。

しかし取次を頼んだとて、騎士団長にすぐに面会出来るわけではない。

緊急性があるわけでもなく、約束があるわけでもない。またそもそも騎士団長がまだ部屋に来ていなかったからだ。

だからクラウスは対応してくれている団長の補佐役に言伝を頼む。呪いが解けたことを伝えて、数枚の鱗を預ける。

団長補佐は預けられた鱗を手に取り愕然としたようにクラウスを見た。

「呪いが解けた…と?」

クラウスは頷くと手袋を外して右手の甲を見せる。そして髪を掻き上げると赤に戻った右目を見せた。

「…!」

団長補佐は驚いてそれを見た。

クラウスは髪から手を離すと手袋をはめ直す。

呆気に取られたような顔をして団長補佐は「呪われたのも不思議だったが、解けるとは思わなかった…」と言葉を漏らし、「…分かった。団長に伝える。ひとまず通常通りの勤務に入るように」と続けた。

「了解しました」

クラウスは礼をすると部屋から出た。


手袋をして右目を髪で隠しているクラウスは、昨日までのクラウスと変わらないように見える。


廊下を歩きながらクラウスは、日番にはまだ早いため軽く鍛錬をしようかと考えた。しかし鍛錬をするほどの時間は残っているだろうか。

持て余した時間をどうするか。クラウスは階段を降りながら目先のことに思いを巡らせた。

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