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夜明け

朝日が部屋に入り込み、クラウスの輪郭をなぞる。


寝台に掛けて自分の両腕をぼんやりと眺めていたクラウスは、窓からの日差しと密やかながら聞こえてくる物音や声に、朝の訪れとこれが夢ではないということに気付かざるを得なかった。


いつもであれば鍛錬を始める頃合いだ。

しかしこれだけの身の変化が起こっている中で鍛錬など出来ようはずもない。


クラウスはひとまず着替えることにした。

夜明け前から裸身を晒していた為、身体が冷えている。騎士服に着替えて、茶を入れる。

自分で入れた茶はそれほど美味いものでもないが、温かさに気持ちが緩んだ気がした。


「はぁ…」


身体が温まるといつもの自分の日常であるように思った。騎士服を着た姿はいつも通りのクラウスだ。

ただ、手袋をしていない両の手はどちらも白く、赤い鱗はどこにも見えない。

クラウスは自分の白い手の甲を見詰めた。

右手を見て、左手を見る。そしてまた右手に目を遣るが、何度見てもそこには白い肌が見えるだけだ。

左手で右手を撫でる。見たままの肌の感触がする。

昨日まで鱗があったことなど痕跡もない肌は、まるで昨日までが長い夢であったかのようにも錯覚させる。しかし寝台の上には赤い鱗が散らばっていて、それが夢であったはずがないことを語っていた。

そしてそれはまた同様に、今の鱗がない肌も夢ではないことをクラウスに教えた。


クラウスは茶を飲み干すと立ち上がった。

寝台まで歩むと鱗を摘み上げる。それは昨日まで自分の肌に付いていた鱗である。

自分の鱗ではあるが、同時にそれはドラゴンの鱗だ。

散らばった鱗を拾い集める。布団をめくり、寝衣の中を確認し、床にこぼれた物を拾う。

集めたそれらを机に乗せると、クラウスは朝食のために食堂に向かうことにした。


夜明けよりも前に始まった混乱からようやく抜け出し、鱗のない自分であることを理解した。

それを喜ぶかどうかは後回しだ。

鱗がなくともクラウスの日常がなくなるわけではない。だからまずは食事をしよう。

クラウスは手袋をして廊下に出た。

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