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予想外の出来事

第2部スタートします。全25話の予定です。

クラウスは右腕に当たるザラザラとした感触で目を覚ました。

しかし夜の静けさを湛えた空気は、夜明けがまだ先であることをクラウスに教えた。

クラウスはそのまま眠りに戻ろうと心地よい体勢を求めて身動いだ。

身体の右脇に何かが当たって気に障る。

何か小さな物が皮膚を鈍く圧迫する感触から逃れるように姿勢を変えると、擦れ合うような音がした。

まるで石をばら撒かれたような安定の悪さと寝苦しさを感じて、クラウスは布団の上を左手で探った。


何だ…?


布団を探るクラウスの左手には何も触れなかったが、寝衣の中で何かが擦れて右腕に当たる。


寝衣に何か入り込んでいる…


軽く右腕を持ち上げるとザラッと音がして寝衣に重さを感じる。


…?


クラウスは覚醒し切っていない頭のままで身体を起こした。

クラウスの右袖からザラザラと何かが滑り落ちる。

右脇からも何かが身体を滑る感触があった。


クラウスは布団に落ちたそれを手で掴むと顔を近付ける。

薄暗い中ではあったがクラウスにはそれが何かすぐに分かった。

それは見慣れたものだったから。


…鱗?


見慣れてはいても手で持ったことなどないそれを手にしている事実に、クラウスの頭は急速に眠りから覚めた。


これは…!

…まさか脱皮か!?


クラウスはドラゴンに呪われてから鱗持ちにはなったが、脱皮をしたことはなかった。

鱗があるからといって脱皮するとは限らない。だからドラゴンが脱皮しない生き物なのかもしれないし、ドラゴンではなく呪われただけの身であるために脱皮をしないのかもしれない。


理由はともかくとして、呪われてから今まで脱皮をすることがなかったクラウスは、自分は脱皮しないものと思い込んでいた。しかしやはり鱗がある身。脱皮があるということかもしれない。

呪いを受けてからこれまで、鱗が落ちたことなどなかったクラウスは、脱皮の可能性に思い当たってたじろいだ。


クラウスは寝衣を脱いだ。残っていた鱗が溢れ落ちる。

薄闇の中でクラウスは右腕に触れる。

するりとした感触を左の手の平に感じて、クラウスは動きを止めた。


…ん?


その慣れない感触に慌てたように右腕を隅々まで撫でる。二の腕に硬い感触があった。

それに手を這わせる。しかしそれはそのまま簡単に剥がれ落ちた。


…!


クラウスは右脇を触り、右肩を撫で、そして右頬、右こめかみに触れた。

しかし手の平にはするりとした肌の感触しか感じられない。

クラウスは寝台から降りて灯りを灯した。


クラウスの目に自身の白い右腕が見えた。


え…?


クラウスは白い腕に触れた。


鱗が…ない?


クラウスは走るようにチェストに近付くと鏡を取り出した。髪を掻き上げて鏡を覗き込む。

鏡の中のクラウスの顔には鱗が見当たらなかった。



鏡に映ったクラウスは、白い肌で黒い髪で、そして両目の色は共に赤かった。

そこには随分前に見たきり、しばらく見ていなかった昔のクラウスが、少しだけ成長した青年の姿で映っていた。


…呪いが…解けたのか…?


クラウスは呆然として鏡の中を見詰めた。

クラウスは自分が今起きているのか夢を見ているのか分からなかった。


ドラゴンを倒してから突然に呪われて鱗持ちになってしまった自身の身体。

呪われてはいても生活に支障はない。

呪いを力の証と思う者もいるし、それを羨む者もいる。呪いを気に掛けない者もいないわけでないが、しかし呪いのことを気味悪く思っている者が大半のはずだ。

呪われた直後には解呪を試みたし、いかに生命を脅かすものではないとはいっても、呪いが解けるのであれば解くに越したことはない。


だが呪いとはこんなに前触れもなく解けるものなのであろうか。


本当に呪いが解けたと喜んでいいのか?

呪いが解けたことを本当に…喜んで…


クラウスは鏡に映る見慣れない自分の顔を見詰めた。

まもなく朝がやってくる。


クラウスが夢から覚めていることから目を逸らしていられるのもあと僅か。

寝ぼけていることに加えて鱗がなくなるとは想像もしていなかったクラウスは混乱していますが、脱皮は外皮がまとまって剥がれます。

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