オルヒとクラウス
ツノイグアナがライの葉を食べているところをアメリアとクラウスが見ていると、ハナトカゲがアメリアに近付いて頭を擦り付けてきた。
「オルヒもお腹が減ったの?」
アメリアがそう言いながらオルヒの頭を撫でてやる。
クラウスはリーリエが顔を突っ込んで食べている皿からライの葉を一束取り上げるとオルヒに差し出す。しかしオルヒは差し出されたライの葉をちらりと見るなり、ぷいっと顔を逸せてしまった。
「まあ…」アメリアがくすくす笑う。
「オルヒは甘いものが食べたいのね」
そう言ってオルヒに笑いかけると、アメリアはテーブルから新しい皿を持って来た。
「はいオルヒ」
アメリアは皿に盛られた果実を一つ摘むとオルヒに差し出した。オルヒはアメリアの指から舌でその果実を絡め取り、素早く口の中に入れた。
「それはリプトの実か?」
クラウスが皿に盛られた果実を見ながら聞いた。
「はい。オルヒは花の蜜が好きなのですが、果物も大好きなのです」
アメリアはハンカチで指を軽く拭うとリプトの実をもう一つ摘み上げる。そして摘み上げたリプトの実を今度は自分の口に放り込む。
「美味しい!」
リプトの実を口に入れて微笑む様子がオルヒとそっくりで、クラウスは目を細めた。
アメリアは再びリプトの実を摘んでオルヒに食べさせる。アメリアは指を拭うと、もう一つリプトの実を摘み上げる。そして今度はそれをクラウスに差し出した。
「はいクラウス様も」
にこにこと微笑みながらリプトの実を差し出すアメリアに、クラウスは目を瞬かせた。アメリアの指先を見詰めて、そして複雑そうに眉を寄せた。ちらっと目線がオルヒに向く。
クラウスは目を眇めると、差し出されたアメリアの手を左手で掴んで口を開けた。
クラウスの口の中にリプトの実を持つアメリアの指先が入った。クラウスはそのまま口を閉じると、アメリアの指からリプトの実を舌で絡めとる。そしてそれを舌で潰す。
クラウスの口の中にリプトの果汁が広がった。口の中で潰れた実を弄ぶと、軽く噛む。そしてゆっくりとそれを飲み込んだ。
アメリアは自身の指先が口に入れられた瞬間こそオルヒに向けるのと同じく微笑ましい眼差しを向けていたが、クラウスがアメリアの指を口に入れたまま実を食べ始めると、唖然としたようにクラウスの口を見詰め、そして指を舐められる感触に驚いて手を引こうとした。
しかしアメリアの手はクラウスに掴まれているので動かすことが出来ない。
「え?え?え?」
オルヒに食べさせる時にもアメリアの指にオルヒの舌が当たることはある。しかしオルヒは器用に指を避けて果実を絡めとるので舌が触れたとしても一瞬だ。
だからこのように指を咥えられることなど想定しようもなく、アメリアは狼狽えた。
クラウスは慌てるアメリアを見ながら口の中でアメリアの指の先に舌を這わせる。
そして指先に付いた果汁を吸い取るように唇で扱くとアメリアの指を口から解放した。
アメリアはほっとして自分の指を見詰めたが、クラウスはアメリアの手を掴んだまま再び指に唇を寄せた。
「…!」
アメリアが息を呑んでクラウスを見るとクラウスがふと右下を見た。つられてアメリアもそちらを見る。
クラウスの右手に握られているライの葉に、リーリエが齧り付いていた。
「…」
クラウスはリーリエを見詰めて息を吐いた。
右手のライの葉はそのままリーリエに与えてやり、そしてハンカチを取り上げる。それから左手の中のあるアメリアの手を引き寄せて、指を拭い始める。
「クラウス様…」
アメリアは何か言おうと口を開くが言葉を見付けることが出来ない。
そんな言葉が続けられないアメリアの開いた口に、クラウスはリプトの実を摘んで差し出した。
サルモネラ菌感染防止のため現実世界の爬虫類に触った後は必ず手洗いを!




