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リーリエとクラウス

「見てくださいクラウス様、リーリエの愛らしさを」

飼育部屋の隅に作られた岩場に寝そべるツノイグアナを見ながら、アメリアはクラウスに話しかけた。

クラウスはツノイグアナ(リーリエ)とどのように接したらよいか戸惑っている様子だ。

しかしリーリエの方はくつろいでいて、クラウスを嫌がるそぶりはない。


アメリアはリーリエに手を伸ばす。背を撫でてやるとリーリエが目を細めた。

リーリエの背中はゴツゴツとしているが身体には弾力がある。

アメリアはにこにこしながら背を撫で、そしてクラウスに顔を向けた。

「クラウス様も撫でてやってください」

アメリアに促され、クラウスは恐る恐るリーリエに手を伸ばした。リーリエの頭をそぉっと撫でる。

リーリエの様子を伺いながら頭の上部で手を何度か往復させるクラウスを、アメリアは微笑ましく見守った。

そうして自分が触ってもリーリエが嫌がらないことを確認したクラウスは、安心したようにリーリエの頭を大きく撫でた。

そして「えっ…!」と驚いたように一瞬手を引くと、リーリエのツノを握って指を滑らせた。

「リーリエのツノはつるつるしているでしょう?良かったら手袋を取って触ってみてください」

そう促されたクラウスは少し躊躇したようにも見えたが、手袋を取った。

「あまりに感触が違うので思わず触ってしまったが…ツノに触られても嫌がったりはしないんだな」

「ええ、ツノイグアナはツノのようなものがあるのでツノイグアナと呼ばれてはいますが、厳密にはツノではないらしいです。ですからリーリエには鱗を触られているのと同じ気持ちなのだと思います」

「なるほど…」

クラウスは素手でリーリエのツノを撫で、そのつるつるした感触を楽しむと、頭全体を撫で回した。

アメリアはその様子を嬉しく眺め、そしてクラウスに場所を譲る。

「よろしければ背中も撫でてみてください」

そう言われたクラウスは促されるままに背を撫でる。

「ほぉっ…背中はゴツゴツしているが、身体が柔らかいので指が沈む…何とも不思議な感触だ」

「そうなのです。お腹側はぷにぷにとしているのですよ」

そう言われたクラウスが今度はリーリエの腹側に手を伸ばす。

「…!」

腹側の感触に驚いたように目を見張ると、右手で背を撫でながら左手で腹を撫で始める。

面白そうにリーリエを両手で撫で回すクラウスを、アメリアは幸せな気持ちで見詰めた。

「尻尾が一番硬いのだな…」

そう言いながら尻尾を優しく撫でるクラウスの右手を見て、アメリアは思わず手を伸ばしかけた。

しかし手を動かす寸前で母ディアナの言葉を思い出す。

『結婚するまでクラウス様の鱗を撫でようとしてはいけません』


いけない!うっかりはしたないことをするところだったわ!

アメリアは伸ばしかけた手を後ろに回し、しかし目はクラウスの右手の甲にある鱗を見詰めたままだ。


クラウス様の鱗はどんな感触なのかしら…。

アメリアは焦がれるようにクラウスを見詰めた。リーリエの身体の上を動くクラウスの手を、視線で味わうように見る。その感触を想像して心の中で溜息を吐いた。


触ってみたい…。

アメリアはその思いを深めながらも振り落とすように背を向けた。テーブルに向かうと、置かれたライの葉が盛られた皿を取り上げる。

リーリエはそれに気付くと、クラウスから逃れてアメリアに近寄って来た。クラウスが少しだけ寂しそうに見える。

それを可愛らしく思いながらアメリアはリーリエにライの葉を差し出す。リーリエはライの葉を舌で絡め取るように口に入れるとむしゃむしゃと口を動かす。

しばらくそのまま口を動かしていたが、差し出した葉を食べ終えたリーリエは、そばに置かれた皿の葉の中に頭を突っ込んだ。

クラウスはそんなリーリエを興味深そうに見ている。


「リーリエはライの葉が大好きなのです」

アメリアはそう言いながら、クラウスと一緒にリーリエがライの葉を食べるのを見守る。

いつもなら一人で楽しむその光景をクラウスと一緒に見ていることを、アメリアはとても幸せに感じた。

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