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アメリアの理想

アメリアが恋しい眼差しを向けてくれるのは、俺ではなく俺の右側の鱗であり、俺の金の右目だ。

それに気が付いた時、俺はそれをすぐには認めることが出来なかった。

しかしそれでも俺は認めるしかなく、そして絶望した。


けれど絶望していてもアメリアは手には入らない。

アメリアの心が俺自身に向いていないとしても、俺の一部うろこにしか想いを向けてくれていなかったとしても、黙って誰かにアメリアを奪われるわけにはいかない。


アメリアとの婚約は結んだのだ。

だからこれから、アメリアにクラウス自身を愛してもらえるよう努めよう。



そう決意したクラウスは、まずアメリアに好みのタイプを聞いてみることにした。

「好みの殿方ですか…?」

「心惹かれる服装とか、好ましい容姿とか、目が行く仕草とか…何か理想のようなものはあるかい?」

アメリアは瞬きをすると少し考えてこう言った。

「私の理想はクラウス様です」

「あー…」それは俺に鱗があるからだろうか…。いや、だとしても

顔を赤らめクラウスは礼を言う。

「ありがとう…」

だとしても嬉しく思ってしまう自分に呆れてしまう。

「他には…あー、そうだな、俺と会う前の理想などはなかったのか?」

「クラウス様とお会いする前…」

アメリアはまた少し考える。

「それでしたら、オルヒとリーリエを私と一緒に可愛がってくれる人ですね」

「…なるほど」

アメリアのペットのハナトカゲ(オルヒ)ツノイグアナ(リーリエ)

果たしてアメリアの中で俺は、一緒に可愛がる側なのか、それとも可愛がられる側なのか…。

クラウスはそれ以上は考えないことにした。



アメリアに聞いても有益な情報は得られなかった。

そこでクラウスはアメリアの母のディアナに聞くことにした。


とはいえ、婚約者の自分がアメリアの好みのタイプを、わざわざディアナを訪ねて聞くのは決まりが悪い。ディアナにそれを聞くには、アメリアのいない場でディアナと話をする機会を待つしかなかった。


しかしながらその機会は案外早く訪れる。

アメリアを子爵邸に迎えに行った際に、アメリアの支度が手間取っており待たされることになったのだ。

恐縮しながら相手をしてくれるディアナにクラウスがさりげなく尋ねる。


「アメリアの好みの殿方ですか?」

ディアナは考え込むように沈黙した。そして眉を寄せる。

「…特に思いつきませんが…あえて言うのであれば…」そこで少しディアナは躊躇した。しかしそのまま言葉を続ける。「オルヒとリーリエを可愛がる人ではないかと…」

「やはりか…」

クラウスはディアナに礼を言って、やってきたアメリアと一緒に出掛けて行った。


それを見送ったディアナは心の中で、アメリアに殿方を好むことなどがあるのだろうかと考え込んでいた。

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