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やはりお断りを

騎士寮に住まうドラゴンの呪いを受けて鱗もちとなった侯爵家三男クラウス=オルデンベルク男爵は、父親であるオルデンベルク侯爵の呼び出しにより侯爵家のタウンハウスを訪れていた。


「見合いですか?」

「ああ、マイツェン子爵のご息女なのだが、是非に。と言われてな」

父親から話を聞いてクラウスは眉を寄せた。

鱗のある男に近寄りたい女などいないということは、鱗もちとなって以降、身に染みている。


侯爵家と縁を繋ぎたい一心で娘を人身御供とするつもりか?


ご令嬢を怯えさせるのは忍びないし、怯えるご令嬢を眺める趣味もない。

「怖い思いをさせるのは可哀想でしょう。見合いはお断りください」

クラウスは溜息とともに父親にそう告げ、こっそりと怖がらせないように物陰から姪の姿を愛でてから騎士寮へと戻った。

兄には今のうちから鱗を見せておけば怖がらずに育つのではないかと言われているのだが、泣かせるのが怖くて未だ姪のことはこっそりと見るに留めている。




それから数日

クラウスは再び父親に呼び出されタウンハウスへと向かうこととなった。


「見合いはお断りしたではないですか」

「どうしても一度会うだけでも。と懇願されてな」

再び見合いを勧められたクラウスは眉を顰めた。


「マイツェン子爵はそれほどオルデンベルクと縁を結びたいのですか?」

不快そうに言うクラウスにオルデンベルク侯爵は

「そうではない。政略的な見合いではなく、ご息女のアメリア嬢たっての希望だそうだ」

「そんなわけないでしょう!」

クラウスは思わず声を荒げた。


どこの令嬢が鱗もちの男と見合いなどしたがると言うのだ。

それとも俺が鱗もちだと知らないで見合いを申し込んでいるのか?

いや万一アメリア嬢が知らなかったとしても、マイツェン子爵が見合いを申し込む際に調べればすぐに分かることだ。知らないわけがあるまい。

だが政略ではないと言うのが本当ならば子爵はなぜこのようにしつこく見合いを願う?

もしもアメリア嬢が相手に困っていたとしても鱗もちよりはマシな男がいくらでもいるだろう。


なぜ娘にこんな仕打ちを…


マイツェン子爵の意図が分からず考え込んだクラウスは、まさか、と父親の顔を伺った。


俺が独り身でいることを心配した父上が子爵に無理を言ったのではあるまいな。

もしかしたら父上は今までこっそりと俺の結婚相手を探していて、ようやく見合いをしても良いと言う家を見つけたということか?


それほど父親に心配をかけていたとしたら…


せめて一度会うべきか?一瞬クラウスそのように考えた。


しかし


いや駄目だ。会ってからでは子爵も断りづらいだろうし、怖がらせてからこちらから断るのも申し訳ない。


「父上ありがたいお話ですが、やはりお断りを」

そう言い置いて俺はタウンハウスを後にした。


昼寝中の姪の様子を見ていくかと聞かれたが、もしも起こしてしまって金目で驚かせてはいけない。姪を愛でるのは次回にするのが良いだろう。

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