WOMAN
寿里は借りを作りたくない女、相手が誰であれ同等に向き合っていられる関係を望む女。可愛げがないと言われようがそれが私なのだと強がっていた寿里。いつからだったろう。そんな尖がっていた寿里の姿はどこかに消え失せていたのは。
そんな寿里とは真逆なもう一人のうら若き女性、凜子が顔を見せたのは寿里が訪れた数日後だった。どこかミステリアスで年齢に似合わぬ色気を醸す寿里とは異質ともいえる凜子は無邪気で幼子のような黒々とした大きな瞳が愛くるしくその印象にそぐわない豊満な胸元にはだれもが驚いた。無邪気な子供のまま大きくなったような凛子は守ってやりたいと男なら誰もが思うようなタイプだった。家族、友人に凛ちゃんと呼ばれていたと言って凜子はこの店で自分を凛と呼んだ。
「ママ、さっきバーゲンで素敵な服を見つけたの。お給料日まで我慢しようと思っていたらバーゲンは今日が最終日だったのよ」
「それは残念だったわね」
「でもね、一緒にいた先輩がそんなに欲しいのなら買えばいいじゃないかって・・でもやっぱり諦めようと洋服を戻したら僕が買ってあげるってその服を持って会計に行ってしまったの」
「まぁ彼が買ってくれたの 手にしている袋がそうなのね」
「うんそうなの。そういえば朝テレビの占いで今日はラッキーな一日って言ってたわね」
凜子のそのハスキーな甘い声でおねだりされたら男たちはなんでも聞き入れてしまうだろうなと志桜里は思った。
「立て替えてもらったお金はいつだってちゃんと返すつもりでいるのよ。だけどみんな受け取ってくれないから嬉しいわありがとうって貰ってしまう どういう訳か凜が欲しいと思う洋服は誰かが必ず買ってくれる・・ ママ、凛は間違っているのかしら」