WOMAN
「後日談はまた今度ね。きっと志桜里ママ驚くだろうな、続き楽しみにしていてね」
いたずらっ子のような笑顔を見せた寿里は背筋を伸ばし颯爽と帰って行った。昨日とは別人のようなその後ろ姿に志桜里はそっと呟いていた。
寿里ちゃんに起きた出来事はすべてこれから生きるための教訓 若かった私も傷つき泣いたり笑ったりそうして大人の階段を駆け上ってきた・・
しばらくして聞かされた後日談はまさか寿里が・・と疑うような内容だった。敵にまわすと女はがらりと豹変する生き物なのだとつくづく思い知らされた。寿里のもとに小包が届いたのは彼と最後に会って一週間ほど経った頃だった。詫び状ともいえる書面とともに封に入っていたのは現金だった。厚さからして50万はあると思われた。50万と言ったら寿里にとって大金。ひと月必死に働いて手にする給料の何倍にも値するその札束を寿里は箱に戻した。彼にとってこのお金が寿里の怒りを買うとは思いもしなかっただろう
「私をいいお友達と言った彼がどうして今更お金なんて。彼の心にやましさがあったから?」
「本人に聞かないとわからないけど、やましい気持ちなんて彼にはなかったと思いたいわ 寿里ちゃんに許さないって言われた彼は自分が思っていた想像以上に寿里ちゃんが傷ついていた事を知ったから償いの気持ちだったんじゃないのかしら」
「私もそう思いたいけど・・でもやっぱり彼はわたしに恐れをなしていたんだわ 奥さんに危害が及ぶとか・・わたしそんな風に彼に見られたと思うとまた許せなくなってきたわ」
翌日仕事が終わった寿里はきれいな包装紙で包み直した箱を持って彼のマンションに向かった。管理室の窓を叩くと胸元に吊るした眼鏡をかけながら初老の男性が窓を開けた。彼の奥さんの友人と名乗り奥さんが上京すると管理室に必ず顔を出すことを聞き出した寿里は箱を差し出して奥さまに渡してくれるように頼んだ。箱の中にメッセージを入れていた。
これはご主人から送られてきたものですがお返し致します。勿論ご主人様も。
自宅に帰った寿里は二人が修羅場になることは想像できたが間違ったことをしたとか後悔などは微塵もなかった。
今わたしは醜い最低な女・・
寿里は深いため息を吐きながら呟いていた