WOMAN
「女性が?」
「そうなのよ志桜里ママ、ファッション誌から抜け出したような服を着たきれいな人」
「寿里ちゃんもそうでしょうけどその人は寿里ちゃん以上に驚いたはずよ」
「だと思うわ 怖いものを見るように私を見なから恐る恐るあなたは誰、鍵かけてあるこの家にどうやって中に入ってきたのって・・」
「それで寿里ちゃんは彼女のその問いにどう答えたの」
「明日会社でどうしても必要な書類を佐久間さんが、あっ佐久間って彼の苗字なの その彼が書類を家に置いたまま出張にでてしまったので部長に鍵を渡されて伺いましたって」
「寿里ちゃんとっさによくぞそこまで機転を利かせられたわね」
「そこまでは良かったんだけど、その人がね、主人の会社関係のものでしたら机にあると思いますからどうぞ入って下さいって 主人ってつまり目の前にいる人は彼の奥さんなんだってわかって・・ 私それからどんな会話してどうやって帰ってきたのか記憶がまったくないの 胸のドクドクが止まらなくて息が出来ないくらい苦しくなって何も覚えてないの」
「傷心の休日だったわけね」
「いま思えば一人暮らしにしては完璧なまでに床は磨かれ部屋は塵ひとつなくきれいだった 外食の多い彼が冷蔵庫にあんなに食材を買い込むのも不自然だった 今更だけど奥さんがいる彼がどうして私に合鍵なんかくれたのか志桜里ママどうしてだと思う」
「寿里ちゃんには悪いけど聖人君子に見えた彼も所詮は世の男性と一緒、単身赴任の彼にスケベ心のひとつあっても不思議はないと思うわ」
「彼はそんな男じゃないわ 私に指一本触れようとしなかったのよ」