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第2話

 俺の婚約者、ソフィアの実家であるランベルト伯爵家で、愛称で呼ばれ、緊張と恥ずかしさから気を失ってしまった。


 家に帰って怒られると思ったら大爆笑された。主に母に。くそ。

 とにかく、ソフィアの事は「ソフィー」俺の事は「ルー」と呼び合う事になった。

 その後、何度かソフィアと会って、何とか愛称の呼び合いに慣れた。フフッ、やっぱり俺は完璧だ!







 あの恥ずかし過ぎる(俺が気を失った)件からしばらくして、俺達は王立高等学院に入学した。


 入学式。

 長過ぎる学院長の話。生徒会長の話などを聞いた。


 今年入学したのは60名。

 定員は100名だが、学力が学院の規定に達していない者は当然だが不合格である。

 約300人受験したらしい。分かってはいたが、難関な学院だ。


 クラス分けは入学試験の成績で決まる。

 1クラス20名で成績の良い順にA〜Cクラス。

 俺はもちろんAクラス。俺は完璧だからな。


 ちなみにソフィアもAクラス。

 つまり2人共20位以内ということだ。


「ソフィー、同じクラスだ」

「…ルー…ん」


 おお、この言い方は機嫌が良い。

 俺と一緒が嬉しいのか?


 いやいやいやいや。俺達はあくまで政略結婚。

 自意識過剰になどなってしまえば俺は完璧な婚約者としては失格だ。気をつけなければ。




 授業が始まった。

 やはり、というか、少し驚いたというか、授業内容は王立貴族学園で受けるものとはわけが違った。

 非常に難しい。


 他の生徒は涼しい顔をして授業を受けているように見える。

 俺はクラスでも下の方かもしれない。俺は完璧といつも言うが、うぬぼれてはいない。俺より賢い人はいくらでもいるだろう。


 ソフィアは…

 まあいつもと同じだ。でも涼しい顔をしている。

 別に競っているわけではないが、完璧な婚約者としては、ソフィアよりは上位になりたいものだ。


「この問題分かる人」


 教師の問に誰も挙手しない。当たり前だ。難し過ぎる。


「では…ランベルト君」


 あのクソ教師!よりにもよってソフィアを名指しするとは。

 あの教師、絶対ソフィアを馬鹿にしてるな!眼鏡だからか?


「…間違ってる」

「は?」


 ソフィアの返答に教師も含めクラス全員がキョトンとなった。


「どういう事かね?」

「…問題、間違ってる」

「えっ?」

「…だから問題が間違っている」

「あっ!これは失礼」


 なんだ問題が間違っていたのか。というか気づいていたのかソフィアは。…凄い。

 クラス全員から呆れられた教師は、そそくさと問題を消して何事もなかったかのように授業を再開した。卑怯者め。


 この件でソフィアはクラスでの評判は良くなった。

 そう。始めは皆地味で、変な眼鏡のソフィアを少し敬遠していた。本人は全く気にしないようだが。


 この学院は超難関の名門校である。

 なので、社交界で行われているような貴族間の醜い足の引っ張り合いなどはないし、露骨な陰口なども言わない。

 あくまで実力主義なのだ。


 ソフィアにとっては、この学院で良かったのかもしれない。

 もし、王立貴族学園なら露骨な嫌がらせをされていたかもしれないからだ。


 この学院でそんな事をしてバレたら一発で退学だし、そんなくだらないことに時間をかけている余裕はない。


 それに意外であったが、高位貴族はとても少ない。

 侯爵家は俺含めて2人しかいないし、伯爵家もソフィアを含めても5人だ。


 つまりその他の人は下位貴族ということだ。

 それはこの学院が、研究所のような感じだからだと思う。


 高位貴族でこの学院に入る人は少ないという事なのだろう。

 他の研究所などに行っているのかもしれない。


 今更だが婚約者どうし2人共入学しているのは俺達しかいない。

 ここで、婚活するような人もいない。

 まあ、婚約者が居る人もそれなりに居るし、ここでそんな事をする暇もない。



 しかしウザい奴はどこにでも居る。


「なあ、ルーカス。お前何であんな地味な女と婚約してるんだ?」


 フィリックス・ケプラー侯爵令息。

 もう1人の侯爵家の令息である。


「政略的な事だ。そんな事も分からないのか?」

「はあ?そういう意味じゃねぇ」

「ならどういう意味だ?」

「いや、いくら政略結婚とはいえあの地味女はない、と思っただけだ。だからやめておけ、と」


 カッチーン!

 キレた。マジギレだ!


「…取り消せ」

「は?」

「だから今言った事を取り消せ」

「おいおい、マジになるなよ」

「マジ?お前は冗談で人の婚姻に口を出すのか?」

「えっ、いや、そういうわけでは…」

「貴様は我がシュタイン家の婚姻を否定し、婚約者であるランベルト伯爵令嬢を侮辱した。貴族ならこの意味わかるな」

「ちょっ、だからマジになるなって!」


 そう言って誤りもせずフィリックスは慌てて逃げて行った。

 政略結婚だとか、侯爵家がどうとか言ったが、本当はソフィアが侮辱されたのが許せなかったのだ。


 もちろんこのまま放置するつもりはない。

 ケプラー侯爵家にはシュタイン侯爵家とランベルト伯爵家からの抗議文が届く事となる。


 シュタイン侯爵家もランベルト伯爵家も王家と繋がりがある。血縁という意味ではないが。

 王家の紋章付きの抗議文がどれだけ恐ろしいか、このあと思い知る事になるだろう。馬鹿な奴だ。




 もうすぐ学期末試験が行われる。

 入学して初めての関門だ。もちろん順位も張り出される。


 順位によってクラスが変わる事もある。

 そう。20位以下になればBクラスやCクラスとなるし、最悪退学もありうる。


「ソフィー試験頑張ろう」

「…ルー…ん」


 余裕ですか。そうですか。あはは…

 全く気にしていないソフィアだった。


 そして試験が行われた。

 さすがの俺も頑張った。俺は完璧だからな。頑張るのは当然だ。



 貼り出された試験結果の表の前に恐る恐る歩いて行った。


「8位!」


 よし!10位以内だ!

 この学院は10位以内は特別だ。

 ソフィアは?

 いかん、自分の事ばかりだった。これでは完璧な婚約者とは言えない。


「えっ!」


 1位だった。


 凄い!凄いぞソフィア!


「ソフィー、凄いな。1位なんて!」

「…ルー…ん」


 え?そんな当たり前のように…

 眼鏡クイッはなかった。

 余裕ですか。そうですか。


 いや、確かにソフィアは賢いとは思っていた。

 でも1位になるとは思ってもいなかった。


 実はソフィアは入学試験でも1位で、入学式で新入生代表挨拶を依頼されたのだが「...無理」と断ったとの事だ。まあそうなるよな。


 全く悔しくはなかった。

 むしろ俺は何故かとても誇らしかった。




 そんな事を思っていた頃、あのフィリックスの事を聞いた。

 フィリックスはいつの間にか退学していた。

 フィリックスはBクラスだったから元々接点はなかった。ただ、同じ侯爵家という事だけで近づいてきたのだろう。

 ケプラー侯爵家は降格処分となったのだろう、子爵家となっていた。

 おそらくケプラー侯爵は何らかの抵抗をしたのだろう。さすがあの馬鹿息子の親だ。この親にしてこの子あり、といったところだろう。


 貴族の婚姻というのは、誰がどこでどう繋がっているか分からないものだ。

 なので貴族の婚姻に口を出すのはご法度。こんなのは貴族なら初歩の初歩。子供でも知っている。


 もし、あの時俺がフィリックスの言った事を肯定すれば、父親であり、侯爵家の当主に逆らう事になる。

 そして、俺は婚約者を侮辱されても平気な愚か者だ。

 つまり自分を否定する事になり、当然そんな選択は出来ない。もちろんする気もない。


 また、否定するなら、今回のように対処する事になる。

 結局、なるようになっただけの事だ。


 それに、こういう事を放置すると、むしろ問題は大きくなる。

 他の人まで巻き込む事態に発展する案件だ。

 フィリックスは侯爵家だ。同調する輩がきっと出てくる。

 さっさと対処して正解だった。


 今回の件、退学と降格だけで済んで良かったと言うべきかもしれない。

 フィリックスは廃嫡か勘当されたかもしれないが俺にはどうでもいい事だ。


 俺達の婚姻も王家が絡んでると思う。

 なので、フィリックスの件も厳しい処分となったのだろう。

 それに俺の婚約時に格下の伯爵家でも断われないようなことを父が言っていた。

 もちろん俺は現状に満足している。だから何も問題はない。


 それにこれは婚約してかなり後から知った事だが、ソフィアのランベルト伯爵家は侯爵家に匹敵するほどの力があるらしい。

 それもフィリックスのケプラー侯爵家など、どうとでも出来るらしい。

 更に俺の実家、シュタイン侯爵家は3大侯爵家の中の1家だ。もちろんケプラー侯爵家など格下扱いだ。

 ケプラー家は侯爵家の中でもでもかなり弱い方だ。


 つまりフィリックスは王家と2つの強力な侯爵家に喧嘩を吹っかけたようなものだ。あくまで結果論だが。

 あの時、きっちりと謝罪してくれていたら結果は違ったのかもしれない。まあ、それでも俺は許す気はないけどな。




 それからはあまり変わったこともなく時間は過ぎて、俺達は2年生に進級した。

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