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川田家

 川田家にて。


 早速、伊武夫妻は川田家へと案内されると、仏間へと案内された。

 大きな仏壇で2人がおまいりをしたあと、桜は静かに語りはじめた。

「半年前に主人を亡くしまして、ずっと呆けておりました。すると、先日、お姉ちゃんが枕元に現れて主人の代わりにてっきり迎えに来たのかと」

「はは、その節は祖母がすいません」

 受雷は苦笑いをしつつ詫びた。

「いえいえ、突然の再会でしたが、嬉しかったですよ」

 桜はにっこり微笑む。

「なんか、いいですね」

 真美は思わず呟いた。


「ふん」

 突如、背後から声がした。

 少女であった。

「茜」

 桜は咎めるように言った。

「ばあちゃん、変な人に騙されとるんよ」

「なんば言いよる。あっち、いきんしゃい」

 桜は強い剣幕で女の子を追っ払った。

「ばあちゃん」

「はよ、いけ」

 茜はしかめ面で仏間を出ていく。

「ふう」

 桜は溜息をつくと、

「孫娘です。失礼をしましたね」

「いえ」

 受雷は首を振り、

「お孫さんは当然の反応をしたと思います」

 真美は率直に言った。

「そうですね」

 桜は少し憂いのある表情を浮かべた。


 それから3人は仏間に飾ってある在りし日の一郎の肖像を見つめる。

「イケメンですね」

 真美はちらりと受雷を一瞥して言った。

「なにか」

 と、受雷。

 二人のいちゃつきぶりに、一瞥をおくる桜。

「・・・初音姉ちゃんは、主人が生きていると言っていました。本当なんでしょうか?」

 彼女は本題へと入った。

「それは・・・私も・・・・詳しいことは祖母はまだ言っていませんでしたので」

 彼は言った。

「そうですか・・・」

「奥様」

「はい」

「よろしければ、ご主人の遺品を見せてもらえないでしょうか」

「わかりました」

 

 桜は仏間を離れて、しばらくすると両手に眼鏡を大事そうに抱え持ってきた。


「主人のです」

「よろしければ、触ってもいいですか」

「どうぞ」

 受雷は眼鏡を受け取る。


「あなた」

 真美が小声で話しかける。

「ん?」

「ダイブは亡くなられた方でないとできないんじゃ・・・」

「まあな。だけど、ばっちゃんが言ってきたんだ。この方は・・・残留思念があれば何か分かるかもしれない」

「そう」

「ああ」

 2人のやりとりに桜は、

「?」

 と訝しがる。


「失礼しました」

 受雷はひとつ咳払いをして言った。

「ダイブ」

 眼鏡に残る一郎の残留思念を探す。

「・・・・・・?」

 何も感じることが出来なかったが、受雷は不思議な違和感を覚えた。

「これは?」


 川田家を出て、2人はおススメのうなぎ屋へと足を運んだ。

 茅葺屋根のいかにも老舗的感をだすお店。

 そこで柳川名物「せいろ蒸し」を堪能する。

「美味しいね」

「ああ」

 ばしばし写メを撮って旅行気分の真美とは裏腹に、受雷は箸を止め、テーブルに頬杖をつき思いを巡らす。

「えい」

「?」

 真美は人差し指で、彼の頬をさす。

「もう、ずっと考え込んでもしょうかがないじゃない。せっかくのご馳走よ。おいしくいただきましょう」

「・・・う、うん」

 彼女に促され、彼は一口ぱくり。

「うまい」

「でしょ」 

 

 駅前のビジネスホテルに宿をとった夫妻は、旅の疲れを癒すべく早目に就寝をとった。

 受雷がウトウトしだすと目の前に初音が現れた。

「ばっちゃん」

(受雷、どうじゃった)

「・・・生きている感じがした。死のニオイが無い」

(そうじゃろ)

「だけど、一郎さん亡くなっているんだよな」

(そう・・・これが・・・な)

「ばっちゃんも分からんのか?じゃ、お手上げじゃないか」

(待て待て、仮説はあるんじゃが突飛も無い話じゃし・・・かといってそれしか思いつかんという)

「煮え切らんな」

(明日、川下りに乗ってみい)

「なんで?」

(桜のじいさんは、船頭で舟から落ちて死んだらしい)

「・・・現場」

(ああ、なにかある。きっと)

「わかった」

(ところで)

「ん」

(今日は、嫁さんとチョメチョメしないかの)

「するか、酒をえーか食らって気持ちよさそうに寝とるわ」

 受雷はベッドで気持ちよさそうに寝ている妻を見て、苦笑いをした。

 


 一日目。

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