第1話 日常
はじまります!!
4月が過ぎ、5月。
GWを過ぎたあたりから、化ケ物の気配が強くなる。五月病とはよく言ったものだと思う。
様々な期待を含めて始まった4月が過ぎ、いろいろ落ち着くこのころ、失望を覚えたり、落ち込んだり、いろいろなことに疲れた人間たちが現実逃避しやすくなるこの頃。
影の濃い場所に迷い込んだ人間を化ケ物が捕食することが多い。たとえ、日中だろうと、太陽の光が注ぎ込まない場所なら、迷い込んだ人間は格好の餌食だ。
つまりは、日中関係なく任務が舞い込む。そうこの俺も例外ではない。もうじきお昼を迎える最後の授業、組織用のスマホが震えた気がしたので確認する。
ーーー黄色通知
黄色は中級を指す。
『新宿4丁目5番地21にて化ケ物出現 討伐級:中級 隊員は今すぐこれに当たれ』
「…俺授業中なんだけど…」
知っての通り、組織は万年人手不足である。学業中だろうが、仕事中だろうが、就寝中だろうが関係なく通知が来たらすぐに行かなければならない。
通知が来てる時点で拒否権は俺らにあるはずもない。ため息をつきながら手を上げる。
「先生」
「なんだ。紫之宮。」
「忘れ物をしました」
「そういうのは授業前にきちんと揃えなさい。ほら行きなさい」
「すみません」
“忘れ物”が合図である。この学園に通う生徒は皆隊員。訓練生もいれば正式な隊員として働く者もいる。
そのため、敷地の一部に学校で取り扱う教材全てを保管できる個人用のロッカーが一人一つ支給されている。
すなわち、忘れ物するなんてことはあり得ない。それを学校は理解しているため、特段怒るわけでもなく淡々と返事をするのがいつものことになっている。
教室を出た後、屋上に向かう。
屋上の給水塔があるところに上り、新宿方面を見る。
2,3回深く呼吸し、目に霊力を流し込む。霊力が流れ込むことで、化ケ物の所在地をより正確に把握することができる。
人は人型の中心から体の外側に向けて白い光が放射線状に広がっている。化ケ物は禍々しい黒の中心に核というものがあり、そこに各々の強さの色を纏っている。中級になるとより核の色が鮮明になるので、見つけるのはたやすい。
「新宿4丁目…5番地…、これじゃない。これでもない」
5番地のあたりはオーラのでかい化ケ物ばかりだが所詮低級。
「起きろ、緋煉龍…」
刀を突く構えをし、力を顕現させる。
「どこだ…、21、ちがう…23…。これだ。」
指定された場所より二つ先に中級の化ケ物がいた。みつけたと同時に刀を突いた。
(飛龍衝!)
衝かれた刀は龍の形になり、目標に一直線に飛ぶ。龍が化ケ物を噛み殺し、燃やし尽くしたのを確認したあと、まだ修復しきれてない両手で、たどたどしく文章を打ち、任務完了の旨を送る。
これでひと段落ついた…と寝ころんだ矢先、お昼を告げるチャイムが鳴った。
「4時間目が終わったのか…。午後はゆっくり寝よ…。」